東京南エリアの交通結節点・大井町駅周辺地区まちづくり構想

大井町駅(おおいまちえき)は東京都品川区にある駅である。JR東日本 京浜東北線・東急電鉄 大井町線・東京臨海高速鉄道 りんかい線の3路線が乗り入れるターミナル駅だ。さらにバスロータリーが設置されており、複数の路線バスが発着する。大井町駅は、東京南部エリアにおける重要な交通結節点のひとつである。また、大井町駅の中央口の駅ビルには商業施設「atré(アトレ)」があるほか、駅周辺には大小さまざまな商業施設が立ち並び、交通利便性の高さと住みやすさが共存する街として知られている。

品川区では大井町駅周辺地区を、品川区における行政・文化・商業・業務・交通の中枢エリアとして捉えている。そしてさらなる発展のために「大井町駅周辺地区まちづくり構想」を策定した。これは、もともと2001年に「品川区市街地整備基本方針」として策定されたものをもとにしたものだ。

大井町駅周辺の様子。Aエリアに1989年に建てられた「品川区立総合区民会館 きゅりあん」。現在は大型家電量販チェーン店も入る大井町駅周辺の様子。Aエリアに1989年に建てられた「品川区立総合区民会館 きゅりあん」。現在は大型家電量販チェーン店も入る
大井町駅周辺の様子。Aエリアに1989年に建てられた「品川区立総合区民会館 きゅりあん」。現在は大型家電量販チェーン店も入る「阪急大井町ガーデン」は2011年に第1期、2014年に第2期が竣工した

品川区は大井町駅周辺地区まちづくり構想における、基本方針を以下のようにまとめている。

● 商業・業務・文化・居住などの機能強化による「人が集まる」街づくり
● 駅と街を繋ぎ、便利で安全な「歩きたくなる」街づくり
● 環境に配慮し、魅力的で快適な街づくり
● 街の更新に合わせて、段階的に進める街づくり

上記の方針に基づき、品川区は大井町駅周辺を「拠点商業地区」「商業業務地区」「業務複合地区」に区分けした。拠点商業地区は商業系の用途に特化する場所。商業業務地区は商業系の用途を中心にしながら、業務系の機能も誘導する。業務複合地区は業務系と住宅の複合エリアで、主要道路沿いの低層部には賑わい創出機能を誘導するものだ。

駅舎や駅前広場を中心に放射状に拠点商業地区が設定され、その周囲に商業業務地区、さらにその周囲に業務複合地区が配置されている。このうち拠点商業地区はA・B・C・D-1・D-2・E・F・G・阪急大井町ガーデン・広町の各エリアに分かれる。広町エリアは面積が広いため、エリア内に拠点商業地区だけでなく、商業業務地区や区役所などの文化行政地区も含まれている。

拠点商業地区のうち、Aエリアにはすでに1989年に「品川区立総合区民会館 きゅりあん」や家電量販チェーン店が入る大型複合ビルが建設されている。同様にD-1エリアには1997年に大型商業施設がオープン。また阪急大井町ガーデンは2011年に第1期、2014年に第2期が竣工した。

大井町駅周辺の様子。Aエリアに1989年に建てられた「品川区立総合区民会館 きゅりあん」。現在は大型家電量販チェーン店も入るD-1エリアには1997年に大型商業施設が開業した
大井町駅周辺の様子。Aエリアに1989年に建てられた「品川区立総合区民会館 きゅりあん」。現在は大型家電量販チェーン店も入る大井町駅周辺地域まちづくり方針図

JR東日本が主体となって開発を進める「広町エリア」

2024年現在、大井町駅周辺地区まちづくり構想で再開発が大々的に進行しているのが広町エリアである。広町エリアは同構想において区分けされたエリアでもっとも広大な面積をもち、大井町駅の北西一帯に広がる。広町エリアの大部分は2013年まで利用されていたJR東日本の広町社宅の跡地である。都市部の駅前にある、貴重な大規模空間だ。またエリアの西端には、品川区庁舎がある。広町エリアは、大井町駅周辺地区の再開発における「核」といえるだろう。

広町エリアの一部はJR東日本が事業主体となって再開発工事が進められている。2023年より開発に着手しており、同社の開発部分(JR東日本開発街区)は2025年度末の完成を予定している。2024年現在、工事が進行中だ。

広町エリアのJR東日本開発街区では賑わいと回遊性、防災や環境性能の向上を目的としており、開発のポイントを以下のとおり挙げている。

● 歩行者ネットワークと広場の整備
● 大井町駅改良と交通広場整備
● 地域の防災力の強化
● 環境配慮のまちづくり

広町エリア JR東日本開発街区の開発予定図広町エリア JR東日本開発街区の開発予定図
広町エリア JR東日本開発街区の開発予定図広町エリア JR東日本開発街区の断面イメージ

JR東日本開発街区はA-1地区とA-2地区の2つに区画され、それぞれに複合ビルが建設される。A-1には地上26階・地下3階で、高さ約115mのビルが建つ予定。延べ床面積は約250,000m2となり、事務所・店舗・宿泊施設・住居・駐車場などの施設が入る。一方、A-2は地上2階・地下2階の高さ約16mのビルとなる。延べ床面積は約9,100m2で、用途は店舗と駐車場だ。

ビルは駅直結となり、デッキなどでつながる利便性の高い施設となる。A-2地区には面積が約4,600m2の広場が設置され、賑わいと憩いの場として地域と連携したイベントの開催なども目指す。

また大井町駅と、駅北西部にある「しながわ中央公園方面」エリアを結ぶ歩行者ネットワークを形成する予定だ。大井町駅周辺は高低差のある地形であるが、それに対応した重層的な歩行者デッキを整備。さらに開発街区と大井町駅南側のエリアをつなぐ、東急大井町線高架下に新設される通路とも接続する。エリア間のアクセス性を高め、街の回遊性を高めるのが狙いである。

そして歩行者ネットワークに面する形で、開放的なアウトモール型の商業施設を展開。シネマコンプレックスをはじめ、多彩で個性的なテナントの入居を目指している。

広町エリア JR東日本開発街区の開発予定図広町エリア JR東日本開発街区の配置図
広町エリア JR東日本開発街区の開発予定図大井町駅周辺再開発:建設工事中の広町エリア JR東日本開発街区

大井町駅東口の駅舎の改良も実施予定

JR東日本が広町エリアの再開発とともに進めるのが、JR大井町駅東口の駅舎の改良工事だ。東口駅舎に人工地盤を増設することで、コンコースを拡張。さらに既存施設を改良し、広町エリアの開発街区に直結する「広町改札(仮称)」「北口(仮称)」を新設する。

現在の大井町駅東口駅舎現在の大井町駅東口駅舎
現在の大井町駅東口駅舎大井町駅東口駅舎の改良の計画図

広町改札(仮称)の前には広場が整備され、利便性を高める。またりんかい線からのアクセス通路やJR線のホームも改良し、利便性の向上と混雑の緩和を目指す。

現在の大井町駅東口駅舎大井町駅 西口の様子

ほかのエリアでも街づくりにかかわる動きが始まる

過去に再開発が行われたAエリアやD-1エリア、現在再開発工事が進行中の広町エリア以外にも、大井町駅周辺では街づくりにかかわる動きが見られるという。

大井町駅西口前にあたるEエリアでは、2023年9月に「大井町駅西口E地区 市街地再開発準備組合」が設立された。市街地再開発事業の実施に向けた地元の活動が行われている。また大井町駅東口の北東にあたるCエリアでも、街づくりにかかわる地元の活動が見られるという。

品川区の中心的なエリアで、交通結節点として利便性も高い大井町。住みやすい街として人気だが、再開発によってより便利で住みやすい街へと変わっていくだろう。今後の大井町の再開発に注目だ。

2023年に市街地再開発準備組合が設立されたEエリアの様子2023年に市街地再開発準備組合が設立されたEエリアの様子
2023年に市街地再開発準備組合が設立されたEエリアの様子街づくりにかかわる地元の活動があるCエリアの様子

※参考
大井町駅周辺地区のまちづくり|品川区
https://www.city.shinagawa.tokyo.jp/PC/kankyo/kankyo-toshiseibi/kankyo-toshiseibi-project/hpg000015074.html

大井町駅周辺地区まちづくり構想|品川区
https://www.city.shinagawa.tokyo.jp/ct/other000028200/ooimachi-kousou-hp.pdf

大井町駅周辺地域まちづくり方針|品川区
https://www.city.shinagawa.tokyo.jp/contentshozon2020/oi_machihoushin.pdf

JR東日本ニュース 2023年7月23日
https://www.jreast.co.jp/press/2022/20230307_ho03.pdf

2023年に市街地再開発準備組合が設立されたEエリアの様子大井町駅 中央口の駅舎西側と商業施設「atré(アトレ)」の様子
2023年に市街地再開発準備組合が設立されたEエリアの様子大井町駅 中央口の駅舎東側と商業施設「atré」

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