コロナで始まり、コロナの影響を受け続けた2021年の住宅・不動産市場

コロナ禍に席巻された2021年も間もなく終わり、10月以降は新規感染者も激減して社会は落ち着きを取り戻したように感じられることが増えた。

しかし、人心は依然としてコロナの渦中にあり、少しずつ上向いてきたといわれるものの、消費の力強い回復はまだみられない。都心オフィスの空室率も拡大がようやく頭打ちになった程度でいまだ本格回復の途上にあるし、賃貸市場も交通利便性が高く相場賃料が高いエリアでも、空室が発生すると次が決まるまでに相応の時間を要する状況が続いている。
また、筆者も含めて結果的に1年の大半を自宅で過ごしたという読者も決して少なくないことだろう。家でのオンとオフの切り替えに苦慮するケースもたくさんあったに違いないし、家の居住性や快適で安全な空間を維持することにさまざま工夫したことと思われる。住まいに対する見方や考え方が変わったという話も数多く聞いた。

年明けの感染爆発で始まり、オミクロン株の感染がじわじわと拡がるなかで終わることになる2021年は、住宅・不動産市場もコロナの影響から逃れることはできなかった。ただし、感染爆発で緊急事態宣言が発出・延長されたり蔓延防止等重点措置に移行したりしても、重要な景気指標である日経平均は安定的に3万円前後で推移した。
この間、株式投資によって利益を上げた投資家も多いことから、特に2021年に入って以降は、その利益を確定させて資産を付け替える動きが活発化。中でも現物資産である中古マンションにこれら投資家の注目が集まり、流通市場での需給バランスが非常にタイトになったことは記憶に新しい。投資家は基本的に自分で確認することができて取引も可能な現物の不動産に投資する傾向が強く、竣工・引き渡しまで時間のかかる新築物件にはほぼ目を向けない。

そのため、中古住宅の流通市場においては自家用という意味での実需に加えて投資需要も発生し、分厚いニーズに支えられることとなって中古住宅の売れ行きが加速した1年となった。三大都市圏ではそれぞれ中古住宅の価格自体の違いはあっても、いずれも昨年同期比で10~15%程度の価格上昇を記録している。

一方の新築住宅も、1年遅れで開催された東京オリパラの終了後にその選手村跡地の物件の販売が再開され、2021年11月に販売された631戸は、平均8.7倍、最高倍率111倍という極めて高い人気となって完売した。コロナ禍であっても特徴的で話題性の高い新築物件には需要が集中するという現象は、まさにコロナ禍の影響で新築住宅の発売件数が伸び悩むなかでは、今後も続く可能性が高い。また、今年は富裕層向けの特別な物件として原宿近くの神宮前に1戸あたり67億6,000万円(専有面積約627m2/坪単価3,564万円)の物件が分譲・竣工し、世界的な不動産価格の高騰の余波が日本にも及んできた感がある。

サプライチェーンの脆弱性や半導体不足などの影響も含め、新規の供給戸数が安定的に増加していない新築市場では、特にマンション価格が上昇しており、今や坪単価が600万円を超える物件も珍しくなくなっている。コロナ禍とは別に、購入資金に比較的余裕のある富裕層が住宅購入に前向きになっている状況がうかがえる。

高い競争率となった、選手村跡地の物件高い競争率となった、選手村跡地の物件

コロナ禍では首都圏に限って賃貸居住ニーズが明確に郊外化傾向示す

借りて住みたい街ランキングで1位となった「本厚木」駅は、新宿までロマンスカーで45分。市内には七沢温泉郷などもあり、自然も豊か借りて住みたい街ランキングで1位となった「本厚木」駅は、新宿までロマンスカーで45分。市内には七沢温泉郷などもあり、自然も豊か

また、テレワークの進捗・定着率が全国平均よりも大幅に高く維持されている首都圏では、住宅ニーズの一部郊外化の意向が明らかとなり、筆者が所属するLIFULL HOME’Sの「首都圏借りて住みたい街」ランキング1位が神奈川県の県央エリアに位置する「本厚木」となったこともビッグサプライズであった。これまで賃貸ユーザーは、交通と生活の利便性が共に高く、住んでいることが自慢になるようなお洒落な街を支持する傾向が強かったが、首都圏郊外の街(駅)が初めてトップに立ったことは、それだけコロナの影響が強かったことがわかる。

なお、2020年まで4年連続トップだった「池袋」は5位に下がっており、賃貸ユーザーの意向が、何かと便利な都心・近郊から、より安全で生活コストも相応に安価な郊外に向いたということだけでもコロナ禍での特に大きな変化といえる。テレワークやオンライン授業が定着し、毎日通勤・通学する必要がなくなった賃貸ユーザーにとっては、交通・生活利便性とトレードオフである賃料の高い都心周辺に居住する必要性が薄らいだこと、特に首都圏では都心と郊外の賃料格差が2倍超と他の圏域に比べて大きいこと、首都圏は圏域が広く郊外方面に転居しても生活圏としての利便性が(通勤・通学の所要時間を除いて)大きく変わらないこと、などを主な要因として、意向が郊外に向かったものと考えられる。

郊外化したのは居住意向だけで、実際に転居した例は限られているものの、コロナの影響を避けて落ち着いた生活を取り戻したいという潜在的な需要が浮き彫りになる結果となった。コロナ禍が長期化し、またワクチン接種が徐々に進む中にあってはその意向もさらに変化する可能性はあるが、東京都および都心に新たに流入してくる“移動人口”もコロナの感染拡大が始まった2020年以降大きく減少しており、毎月の移動人口は転出超過(入ってくる人よりも出ていく人の数が上回る状況)となっている。この移動人口の推移も、今後の賃貸ニーズ、購入ニーズを探るうえで確認する必要がある指標と捉えるべきだろう。

ちなみに、この“意向の郊外化”は近畿圏、中部圏、福岡県など他の都市圏では全く発生しておらず、各圏域の中心部に一極集中するという状況が続いている。首都圏で意向が郊外化したとされる上記の要因が他の圏域にはほぼ認められず、テレワークの定着率も首都圏と比較すると低位に留まっていることから、コロナ前と変わらずほぼ毎日通勤・通学するのであれば、転居する必要はないということだろう。

なぜ、コロナ禍でも住宅需要は落ち込まなかったのか?

住宅購入需要を後押しした制度的支援とは住宅購入需要を後押しした制度的支援とは

前述の通り、コロナ禍であっても住宅の購入・賃貸に特段の需要の落ち込みはない。コロナによって需要に変化は見られるが、売れなくて価格が大きく下がったとか、借り手が減って賃料相場が下落したなどという事例はほぼ皆無と言ってよい。ただし、2020年4月に発出された1回目の緊急事態宣言時はコロナ対策に我が国全体が不慣れなこともあって、住宅市場から新規の供給および中古流通が一時的にほぼなくなったことで需要も見えなくなったことはある。

ではなぜ、住宅需要は落ち込むことなく維持されたのか。その要因は大きく分けて2つ。

①制度的支援の存在

1つは、歴史的な住宅ローン低金利が挙げられる。この原稿を執筆している2021年12月現在では変動型の最低金利で0.310%というローン商品(消費税10%の実に1/30以下の税率だ)があるし、重大疾病を発症しローン返済が困難になった際は元本が半減もしくはゼロになるローン商品まであるから、生命保険に加入しなくてもその代わりとなるような“住宅ローン競争”が展開されている。
この歴史的低金利が住宅購入に向けてのモチベーションを維持し続けているものと考えられる。また、これに加えて2021年度からは住宅ローン減税の対象面積が従来の「50m2以上」から「40m2以上」に緩和されたこと(内法面積・新築のみ)、控除期間が13年に延長された特例が維持されたこと、住宅購入目的の贈与税非課税枠が1,500万円に縮小されたが維持はされたこと、など主に住宅購入に関する制度的な後押しが拡充されたことが挙げられる。もちろん、コロナ禍によってテレワークが定着し、オンもオフも過ごすことになった住まいのあり方を改めて見つめる機会が増えたことも、住宅需要の拡大に間接的な影響を及ぼしているといえる。

住宅購入需要を後押しした、販売手法の変化とは住宅購入需要を後押しした、販売手法の変化とは

②販売手法の変化

2つめは、これらの制度的な支援とは別に、ハウスメーカーやマンション・デベロッパーの販売手法が大きく変わったことが挙げられる。コロナ禍で非接触&三密を避ける販売手法に変わった結果、プッシュ型の営業スタイルではなく、VRなどを導入してオンラインでの説明会などを実施し、品質の良さや居住快適性、安全性などを丁寧に説明する手法が導入され、いわゆる不動産業界におけるニュー・ノーマルな販売スタイルに変化した。

新築も中古も住宅はとにかく来た客を離さず積極的に売り込むものだ、という旧来の考え方ではなく品質重視(当然ながら価格も相応に高額であることが多い)であることを受け入れた顧客に売れればよいという“数を追わない販売スタイル”となったことで、売り出し情報がウェブサイトなどにほぼ限定され、購入希望者が積極的に情報を取りに動き、物件を探さないとすぐに売れてしまう状況が創出されている(生産数が少ない高級品や限定品の販売手法に類似するところがある)。
実際に、首都圏では新築マンションの新規供給および在庫が減少する一方、契約率がアップするという現象が起きているから、希望通りの物件が買えない、買いにくい状況に購入希望者を置くことによって意欲を喚起させる販売手法が奏功しているように感じる。

2022年は、住宅ローン減税に大きな変化。年初~期末には駆け込み需要も

では、来たるべき2022年の住宅市場・住宅需要はどうなる可能性があるのか。

まさに上述した通り、住宅ローン減税が制度変更されることの影響が表れることは確実だろう。2022年度の税制改正大綱では、前年度に会計検査院の指摘を受けたことに対応して、住宅ローン減税の控除率を1%から0.7%に引き下げることが決定している。併せて世帯年収要件も3,000万円から2,000万円に引き下げられたため、富裕層が住宅ローンを組んでも控除を受けることがやや困難になったと言えるだろう。

また、新築住宅には特例を恒常化して13年の減税期間が適用されるが、中古住宅は10年になるため、損得だけで考えれば中古住宅に対するニーズが若干薄らぐ可能性があるし、2022年3月までは現行制度下での1%控除が適用されるので、それを目的とした駆け込み需要が発生する可能性もある。

また、住宅ローン減税対象物件の面積要件も前年度に引き続いて40m2以上(新築住宅のみ/世帯年収1,000万円以下が控除対象)に維持された。これによって専有面積が狭めのコンパクトマンション(40m2超の新築一戸建てはほぼ想定できないため)の売れ行きも好調を維持する可能性が高まった。併せて、住宅購入目的の資金贈与非課税枠1,500万円も2年間の延長が決定している。

住宅政策は、基本的に国や地方自治体の税収を安定的に確保するという側面があり、その意味で必要欠くべからざる重要政策であり続けている。また国民の住宅購入意欲を維持・喚起することは、景気浮揚策にも欠かせない。したがって、コロナ禍においても“国の経済を回す”ことを考慮したとき、常に住宅購入支援策は経済政策の中心に据えられるべきものだ。歴史的低金利に加え、住宅ローン減税や贈与税の非課税枠設定など、海外から見ると信じられないくらいの規模で国による住宅購入支援という“サービス”が実施されているのだから、2022年の住宅市場は、コロナの影響をいち早く脱して成長軌道に戻すことが期待されているのだと解釈することができる。

とても地味だが、「こどもみらい住宅支援事業」という制度も開始されることになっている。これは子育て世帯や若者夫婦世帯が、高い省エネ性能を持つ新築住宅を購入したり、既存住宅の改修で省エネ性能を高めたりした場合に補助金を支給する制度である。カーボンニュートラルと子育て支援を組み合わせたものとされるが、ここまでして住宅を購入させたいのは、国や地方自治体の税収を将来にわたって安定的に確保するためだ。

2022年は住宅購入を長期的な視野で捉えて、損得だけでは検討しないというユーザーが一人でも多く増えることを望みたい。

常に経済政策の中心に据えられる住宅購入支援策。国による“サービス”は2022年も引き続き行われる常に経済政策の中心に据えられる住宅購入支援策。国による“サービス”は2022年も引き続き行われる

公開日: