不動産の市況を見る際の3つの視点

政府は2021年2月2日、10の都府県で3月7日まで延長する方針を決定した政府は2021年2月2日、10の都府県で3月7日まで延長する方針を決定した

日本における新型コロナウイルス感染者数は徐々に減少傾向になっているようである。
しかし、執筆時(1月末)では11都道府県において、いまだ緊急事態宣言が発令されており、東京においても18時を過ぎると人の往来は少なくなってきている。ワクチンの接種が欧米や中東諸国で進んでいるようだが、報道によると我が国においては4月から接種が始まるとのこと。ワクチンがコロナショックからの救世主となり、東京五輪が予定通り開催されることを期待したいと思う。

さて、前回では、不動産の市況を見る際の3つの視点、
1)短期的な視点では「日々の変化」
2)中期的な視点では「不動産の構造変化」
3)長期的な視点では、「不動産市場のマクロ変化」

について解説した上で、近年における、世界の不動産市場の中での東京不動産マーケットはどういう位置づけにあるのか、についてデータを基に伝えた。

今回は、「ポストコロナの不動産市場の未来」を、「日次不動産価格指数でみる新型コロナウイルスの影響」についてお伝えしようと思う。

日々の変化がみえる日次不動産価格指数

毎秒毎秒価格の変わる株式市場とは異なり、不動産取引において「短期的な視点」では、最も短くても「日」の単位でみることが現実的である。これまでの各種不動産における指数的なものは、短いものでも「月」の単位だった。

我々が監修として携わった「日次不動産価格指数」は、「日」の単位で分析、つまり「毎日毎日の変化」を捕捉できる画期的な指数と考えている。

詳しくは、日次不動産指数(Daily Property Price Index)のサイト(https://daily-ppi.japan-reit.com/)をご覧いただきたいと思うが、サイトTOPページには、以下のような説明文がある。

================
Daily Property Price Indexは、東京大学 空間情報科学研究センター 不動産情報科学研究部門(清水千弘)の監修のもと、
株式会社 三井住友トラスト基礎研究所、東京海上アセットマネジメント 株式会社、Prop Tech plus 株式会社が開発した、新しい日次の不動産価格指数です。
鑑定評価ベースではなく、金融市場の評価を加味した不動産価値をトレースします。
==============※サイト(https://daily-ppi.japan-reit.com/)より引用。

ここからは、この日次不動産価格指数(Daily Property Price Index)データを見ながら解説する。

日次不動産価格指数(主要系列) ※2005年12月30日から2020年10月30日まで日次不動産価格指数(主要系列) ※2005年12月30日から2020年10月30日まで

図1は、2005年12月30日から2020年10月30日までの日次不動産価格指数(主要系列)のグラフである。

ミニバブル期の上昇局面(2005~6年ごろ)からリーマンショックでの落ち込み(2008年半ばから後半)、そして金融緩和政策による上昇局面(2013年半ばごろ)の状況がわかる。
これを見ると、上昇局面にあった2020年3月、突如大きく落ち込んでいる。いうまでもなく新型コロナウイルスの影響である。一時的な落ち込みから回復基調にあるが、各グラフを見ればわかるように、その回復状況は、エリア・物件種別により大きく差が出ている。

日次不動産指数でみる新型コロナウイルスの影響はどれくらいあったのか?

次に2020年に入ってからをフォーカスしたグラフを見てみよう。

都心5区・地方のオフィスと住宅に分けた4つの指数の対前年同日比 ※2020年1月~10月都心5区・地方のオフィスと住宅に分けた4つの指数の対前年同日比 ※2020年1月~10月

図2は、2020年に入ってから10月末までの、エリアは都心5区・地方、物件はオフィスと住宅に分けた4つの指数を対前年同日比で示しているグラフだ。

2020年2月半ばごろまでは、どの指数も好調をキープしていた。
指数を見る限り、「ダイヤモンド・プリンセス号で感染者が出た」と連日メディアが報道していた頃は、まだ「対岸の火事」のような状況で大きな落ち込みは見られなかった。
しかし、新型コロナウイルス感染者が少しづつ国内に出始めた2月下旬からじりじりと下落基調になっている。そして、3月の中頃には大きな下げが続き、3月19日には最低値を付ける。いったん大きく下げたが、その後は同月内にいくぶん戻している。

苦戦が続くオフィス市況

グラフをみれば分かると思うが、戻りの速さは、住宅がオフィスよりも早くなっている。
オフィスの指数もいったんは戻り基調だった。しかし、1回目の緊急事態宣言が、まず東京都を含む7都府県で出され、この時点で都心のオフィス指数の回復が止まる。また、その後全国的に出されたことで、地方オフィスの指数も同様に軟調に推移している。

5月14日に1道1都2府4県以外の39県の緊急事態宣言が解除、同25日には首都圏を含め全国的に約1カ月半ぶりに解除された。このあたりからオフィスの指数が再び回復している。

丸の内のオフィスビル丸の内のオフィスビル

秋以降は、住宅の指数も軟調に

次に、新型コロナウイルスの影響が比較的少ないといわれている住宅分野である。

ここまでの流れを見ると、不動産市況全体に引きずられる形で3月半ばに大きく落としたが、すぐにある程度は戻した。しかし、1回目の緊急事態宣言が解除されても新型コロナウイルスの影響が出る前ほどには、戻っていない。その後、夏の頃は横ばいが続いていたが、9月に入ると下落に転じていることがグラフから読み取れる。

こうした状況が、新型コロナウイルスの影響が出始めからの不動産市場の状況といえる。

住宅分野は、新型コロナウイルスの影響が比較的少ないといわれているが…住宅分野は、新型コロナウイルスの影響が比較的少ないといわれているが…

このように、不動産価格の変化が毎日毎日の変化としてみることができるようになってきたわけだが、不動産は今日買って、明日に売るというようなことはできない。また、そのような投資対象として不動産を見ている方は少ないと思われる。

とりわけ住宅を購入される方は、5年、10年または生涯の住処として購入されるはずである。毎日の変化に一喜一憂することなく、長期的な視野で市場を見ていくことが必要となる。

しかし、日々の変化が見ることができるようになることで、投資として市場に参入することができるお金も出てきたことは確かである。私たちには、市場を正しく見る目が求められているといえる。

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