景気回復が失敗できない政治課題になった

何が争われたのかよく分からないまま、年末の衆院選は自民党の圧勝に終わった。しかし、投票率は戦後最低の52.66%にとどまり、有権者全体に占める自民党の得票割合は小選挙区で25%、比例代表で17%に過ぎない。これでアベノミクスが信任されたと見なしてよいのかどうかという疑問も残るが、いずれにせよ2017年4月1日まで1年半先送りされた消費税率の再引き上げに向けて、国内の景気回復が安倍内閣の至上命題となったことは間違いないだろう。

日経平均株価は3年連続で上昇し、2014年12月30日の大納会は1万7,450円で取引を終えた。急激な円安も進み、株価、円安とも7年ぶりの水準となっている。さらに2014年後半からは原油価格も下がり続けている。一部の業種には強い副作用となる面もあるだろうが、全体的には好材料が増え始めているようだ。

2015年がスタートしたが、不動産市場にとってこれからどんな1年になるだろうか。主に住宅の面から考えてみたい。ちなみに12年前の未(ひつじ)年はイラク戦争、24年前の未年は湾岸戦争が起きている。突発的な軍事衝突、国際的な金融不安などで市場が大きく落ち込む可能性も、頭の片隅に置いておきたい。

住宅エコポイントが2年半ぶりに復活へ

2014年12月27日に総額3兆5千億円規模の「地方への好循環拡大に向けた緊急経済対策」が閣議決定された。多方面にわたりさまざまな経済対策が盛り込まれた中で、住宅市場活性化策としては「住宅金融支援機構によるフラット35Sの金利引き下げ幅の拡大」「省エネ住宅に関するポイント制度の実施」「地域における良質な木造建築物の整備の推進」などが挙げられている。

前回は利用が多く前倒しして申請が締め切られた「住宅エコポイント」が再び実施されることになるが、今回はどうだろうか。閣議決定前の予測報道では「2015年3月31日までの契約を対象とした3ケ月間の措置」「最大45万円分のポイント」などとも報じられていたが、実施詳細はまだ明らかになっていない。

これまでの運用ノウハウもあるため「すぐにできるものを経済対策に盛り込んでみた」といった印象も強いが、住宅は「ポイントが付くから」といって急いで買うようなものではない。3ケ月間では住宅市場を活性化する効果もほとんど期待できないため、4月以降分が改めて来年度予算に盛り込まれることも考えられるだろう。

贈与税非課税枠は頻繁な変更を伴う内容になる

消費税率再引き上げ時期の先送りに合わせ、住宅ローン控除制度およびすまい給付金制度が2019年6月30日まで1年半延長されることも決まった。しかし、それよりも住宅市場にとって影響が大きいのは、2014年12月30日に決定した「与党税制改正大綱」に盛り込まれた贈与税非課税枠の延長・拡充だ。2014年末が期限となっていた「直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税措置」を2019年6月30日まで延長するとともに、その非課税枠が大幅に引き上げられる。

ただし、再増税時の駆け込み需要とその反動減を抑えることが目的に加えられているため、消費税率10%への引き上げ時を挟んで、いったん縮小した後に(課税物件を取得する場合は)再び拡大されるなど、住宅取得の契約時期によって非課税枠が大きく変動することに注意しなければならない。さらに、「10%の消費税がかかるかどうか」で非課税枠に最大1,800万円の差が付けられることにも留意が必要だ。実質的には、消費税が課税される新築住宅、新築マンションの取得を優遇する内容だといえるだろう。2014年4月の消費税率引き上げ後に落ち込みを見せた中古住宅市場だが、次の増税時も中古住宅に対して十分な配慮がされているとは言い難い。

住宅取得資金の非課税枠は段階的に変更される住宅取得資金の非課税枠は段階的に変更される

2015年は住宅価格の上昇が本格化する?

すでに2014年のうちから都心部を中心に住宅平均価格の上昇傾向が強まっているが、郊外物件の供給が抑制され、都心立地の割合が増えたことが平均価格を押し上げていた側面もあるだろう。しかし、2015年は住宅相場そのものの上昇が顕著になっていくと考えられる。新築マンションでいえば、都心の地価が上昇へ転じた2012年、2013年あたりに仕入れた土地での供給が次第に増えるのだ。さらに建設資材や人件費の高騰による販売価格への影響もこれから本格化する。

東京都区部では大型の再開発物件なども予定されているため、2014年比では増加に転じることが見込まれるものの、全体的に新築マンションの供給量はあまり増えないだろう。投資需要や相続税対策需要のある都心部では、価格上昇を伴いながら活発な供給も見込まれるが、郊外部ではまだしばらく様子見の状態が続くだろう。

消費税率の再引き上げが当初の予定どおりに実施されれば、その特例期限となる2015年3月末に向けて再び駆け込み需要が起きることも考えられたため、それを見込んで供給時期を調整していた不動産会社もあっただろう。しかし、それがいったん遠のいたことで住宅市場は不透明感を増している。住宅に対して軽減税率が導入されるかどうか、今後の議論の行方も住宅市場を左右することになる。

景気回復の進行具合にもよるが、一戸建て住宅市場は意外と早く活況となるかもしれない。しかし、その中心となるのは利便性の高い準郊外駅から近い徒歩圏内で、「街づくり」のコンセプトがはっきりとしたものになるだろう。郊外、あるいは都心寄りでも駅から遠い建売住宅などは厳しい状況が続くものと考えられる。

住宅ローンの超低金利状態はまだしばらく続く?

2015年1月の住宅ローン金利は、大手銀行を中心に相次いで過去最低の水準に引き下げられた。たとえば10年固定型の最優遇金利は東京三菱UFJ銀行、三井住友銀行、みずほ銀行が年1.15%、三井住友信託銀行が0.9%、りそな銀行が1.2%という歴史的な低水準だ。日銀の大規模な金融緩和を背景に、長期金利が一段と低下していることがその要因となっている。

アベノミクスが奏功しデフレ脱却の道筋が見えるまでは金融緩和が続けられる見込みであり、多少の上下は伴いながらも、まだ当分は住宅ローンの超低金利状態が続く可能性は高いだろう。しかし、かなり微妙なバランスのもとで現在の金利が形成されていることも確かだ。ちょっとした外的要因の変化で金利上昇に転じる可能性も高いため、さまざまなニュースにも十分に気を配っておきたいものである。

住宅ローンの低金利状態に支えられている住宅市場であるが、景気回復が進みインフレが定着すれば金利は上がる。逆に景気対策が失敗し経済が混乱すれば、やはり金利は上がることになる。金利が上昇し始めた局面では住宅市場が過熱することも考えられるが、やがては一気に落ち込むことになるだろう。その変動期がいつになるか分からないが、2015年は最後の平穏期となるのかもしれない。

2015年 01月01日 10時37分