“令和の総量規制”の契機となるか 融資限度額を設定していない地銀に改善要求の警告

“令和の総量規制”の契機となるか 融資限度額を設定していない地銀に改善要求の警告

2026年2月、金融庁が全国の地方銀行に対して、不動産業への融資増加を懸念し警告を発出したことが明らかになった。

金融庁の主幹業務の1つは金融機関の監督・検査であり(ほかには金融制度の策定と証券市場の監視などがある)、各金融機関の業務を適宜監視し、必要に応じてヒアリングや立ち入り検査などをすることは通常業務である。

金融庁の業務においては2021年のみずほ銀行に対する頻発するシステム障害と不十分なシステム管理態勢を問題視した業務改善命令の(複数回の)発出や、2024年の三菱UFJ銀行と傘下の三菱UFJモルガン・スタンレー証券およびモルガン・スタンレーMUFG証券に対する顧客の同意を得ないまま非公開情報を共有したことに関する業務改善命令の発出など、まさに“事件一歩手前”の行為に対する措置・行政処分という色合いが強かった。そのため、金融機関が融資を増やしたことに対して警告するのは異例とも言える。過去にも、無登録で日本居住者向けに暗号資産交換業を行っていた海外事業者に警告したことはあったため、警告は予防的措置という見方もできるが、特に不動産業についての融資金額の増加に関して地銀が指摘を受けたことの影響は、決して小さくないと考えられる。

地方圏では優良貸出先が少なく融資が限られるのが実情

都市圏と比較すれば当然のことだが、地方圏では優良顧客となる資金の借入先(金融機関から見ると貸出先)が少ない。地域金融機関である地銀が、地元での資金需要があり返済も計画通りに対応してくれる優良顧客を多数抱えることは簡単ではない。融資案件についても要望が来るのを待つのではなく、資金需要を喚起するような新たな事業提案や事業拡大提案に合わせ、中長期的な事業の継続性・発展性についても的確に判断し都度サポートする必要がある。金融機関は資金を融資し、金利と共に返済して受けることで成立するビジネスである。貸出先を確保し維持するハードルがそもそも高い地方圏の事情を考慮すれば、資金需要の旺盛な都市圏にも貸出先を開拓していきたいと考えるのはごく自然な流れだろう。

地銀による越境融資(本店所在地以外の地域での融資)は可能だが、2002年の銀行法改正によって店舗立地規制が緩和されて以降、地銀は都市圏を中心とした越境融資を積極的に拡大し始めた。金融庁の調査によれば、第一地方銀行の企業向け貸出の約6割、第二地方銀行でも約4割が越境融資であることが示されている(2023年9月末時点)。つまり、地銀の貸出先の概ね半分は“地元”ではなく“地元以外”の資金需要に依存しているという構図であり、人ではなく資金が“出稼ぎ”に行き、金利という土産を持って帰省するイメージだ。

こういった地元での資金需要の減少、加えて少子化・高齢化の進捗による預金(調達資金)減少リスクを背景に、地銀が有望な貸出先として注力するのが都市圏の不動産関連融資だ。用地買収や建設資金、再開発のための移転資金など不動産に関連した資金需要は一案件の規模が極めて大きいから、貸出先としてとても魅力的であることは疑いの余地がないが、一方で金利や返済期間、融資上限などの融資条件が緩和的に設定されやすく、また担保となる不動産の保全率が低位である点が懸念材料とされている。

金融庁は、2025年度において不動産融資の監視を強めていた事実があり、特に越境融資の割合が高い地銀に対してヒアリングを実施し実態把握に努めた結果、今回の警告発出となったものと考えられる。実際には貸出管理について本来必要な融資の限度額を設定していない地銀もあったとされており、改善を要求するのは監督官庁として当然のことと言える。
こうなると、資金の借入先としての不動産・住宅開発サイドは、用地買収や建設資金を手当てしてくれる金融機関からの融資を、従前の条件では借り入れし難くなることが想定される。用地価格や建設資材価格・人件費など開発コスト全般が高騰するなかでは、開発案件の先送りや事業計画中止に追い込まれる可能性も考えておく必要が出てくる。

今から約35年前に発生した“90年バブル”は、当時の大蔵省によるいわゆる総量規制(金融機関の不動産業向け貸出の増額分について、公的な宅地開発機関に対する貸出を除き、総貸出の増額割合以上にしてはならないという行政指導)によって資金融資が事実上断たれ、崩壊したという経緯がある。つまり、不動産・住宅の開発資金の流れを遮断すれば、直ちに開発案件も中断を余儀なくされ、仕掛案件の価格下落が始まる可能性がある。今回の金融庁の警告が果たして“令和版・総量規制”の契機となるものなのか、それとも資金量の流入減によって緩やかに価格下落が始まるというソフトランディングのシナリオが描けるのか、さらには今回の警告程度では不動産関連融資に影響はないのかも含めて、特に不動産・住宅業界関係者は注目しておく必要があるだろう。

ホームズ君

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