三河島駅前北地区において市街地リニューアル計画が進行中
日暮里駅や西日暮里駅、南千住駅の隣に位置し、“地味な駅”と思われがちなJR三河島駅(みかわしまえき)。しかし今、その駅前が大きく生まれ変わろうとしている。
三河島駅は荒川区のほぼ中央に位置し、一日平均約1万2,000人(2023年度、降車客含まず)が利用するJR常磐線快速線の主要駅の一つである。路線は常磐線快速線のみであるが、2015年の上野東京ラインの開通により、東京駅や品川駅へも乗り換えなしでアクセス可能となっている。
その一方、「三河島」という地名は、1960年代に荒川・日暮里などに編入・合併された際に行政地名としては消滅した経緯がある。このため、「三河島」があまり知られていない理由の一因と考えられる。しかしながら、知名度とは異なり、区のほぼ中央に位置するなど歴史的背景から区役所に最も近いJR駅が三河島駅となっており、行政計画上では重要な拠点として位置づけられている。
駅周辺での過去の大型開発としては、2011年に事業が完了した日暮里駅前の市街地再開発事業が挙げられる。続いて、2015年には三河島駅前南地区において「三河島駅前南地区第一種市街地再開発事業」が完了している。
南地区での開発では、住戸数327戸、地上34階、高さ120メートルの住商複合型超高層建築物「アトラスブランズタワー三河島」が建設された。低層住宅地が広がる三河島駅周辺において、ひときわ目を引く存在となっている。
また、近接する西日暮里駅(荒川区西日暮里地域)でも市街地再開発が進行しており、三河島駅北口周辺を含めた西日暮里地域全体で、市街地の再編が急速に進められている状況である。
下図は、都市再開発法に基づき東京都が公表している資料をもとに、荒川区内における市街地再開発事業の完了区域(赤)および実施中の区域(青)を示したものである。
本稿では、三河島駅前北地区で進行中の市街地再開発について、その背景や計画の概要、そして街にどのような変化をもたらすのかを探っていく。
市街地再開発事業導入の背景等
三河島駅前北地区において市街地再開発事業が行われるに至った背景について、荒川区が2017年に策定した「西日暮里一丁目まちづくり構想」や「荒川区都市計画マスタープラン」などから解説していく。はじめに、まちづくり構想の名称に「西日暮里一丁目」とあるように、三河島駅北側は西日暮里地域に該当しており、三河島という駅名でありながら、西日暮里駅前の再開発と同一地域として扱われている。
区の土地利用に関する最上位の計画である「荒川区都市計画マスタープラン」では、三河島・西日暮里・日暮里のエリアを重要な拠点として位置づけており、三河島駅の交通利便性のポテンシャルをより強化するため、商業・業務機能をはじめとする多様な都市機能の集積を図る拠点形成を目指すとしている。
また、土地利用のあり方として、木造密集市街地における防災性・耐震性の向上、低層市街地の良好な住環境の保全、商業機能の誘導を掲げている。
特に荒川区内には、老朽化した木造建築物が密集する地域が広く点在しており、防災面における課題が顕在化している。こうした状況に対応するため、今回の再開発では、駅北側エリアに防災拠点となるオープンスペースの確保、帰宅困難者の一時受け入れ施設の整備、狭い道路による緊急車両の通行支障の解消など、複数の対策が計画されている。
再開発は単なる建て替えではなく、地域の安全性を底上げする大きな転機となる。
加えて、駅北側には1989年に統廃合により閉校となった「旧真土小学校」(区所有地)の跡地が存在しており、現在は暫定広場として活用されている。このような“まちづくりの種地”を有効に活用し、区が抱える課題の解決とともに駅前の魅力向上を図ることが背景にある。
これらに関連して、2016年には「荒川区スポーツ推進プログラム」が策定され、当該跡地を活用して体育館を整備する方向性が示された。今回の市街地再開発事業においては、この方針に基づき公共施設(アリーナ)の整備が予定されている。
こうした背景などから、再開発組合の前身となる「三河島駅周辺地区再開発推進協議会」が1999年に設立、その後、2004年には再開発準備組合が設立、続いて、2017年には荒川区により「西日暮里一丁目まちづくり構想策定」が策定され、2021年6月には、市街地再開発の実施に必要な都市計画が決定した。
これを受け、2023年2月には再開発組合が設立され、現在、市街地再開発に向けた取り組みが本格的にはじまっている。今後、工事の施工などを担う特定業務代行者の募集や、権利変換計画の策定・認可、その後の工事着手に向けて着実に進んでいく。
駅北側の市街地再開発事業の概要
駅北側の旧真土小学校跡地を含む約1.5haの区域において「三河島駅前北地区第一種市街地再開発事業」が実施される。整備予定の施設としては、低層部への商業・業務施設、多目的アリーナ(防災関連施設を兼ねる)、高層部への住戸(4〜11階部分はシニア向け)となっている。
組合が公表している事業計画書(最終閲覧:2025年3月25日)によると、市街地再開発事業では建築物の壁面線の後退により幅員4mの空地が整備されるほか、オープンスペースの設置(合計;1,000m2)、新たな道路が整備される。住宅部分では、分譲住宅として約760戸、このうちシニア向け住宅として約160戸が設けられる予定だ。
また、総事業費については、約457億円、このうち補助金は約146億円を見込んでいる。なお、荒川区2024年11月定例会建設環境委員会の質疑において、事業計画の変更案における総事業費に関して答弁が行われ、工事費や人件費の高騰を受けて約640億円となることが示されている。今後、都から事業計画の変更認可を受けた段階で変更後の正式な計画が公表されると考えられる。
駅前北地区の市街地再開発事業で整備される施設
市街地再開発事業のうち、建築物の整備についての計画は次のとおり。
・建築敷地面積:約9,880m2
・建築面積:約6,670m2
・延べ面積:約91,297m2(容積率対象延べ面積:約61,292m2)
・階数:地下1階、地上43階
・建蔽率:約 68%
・容積率:約620%
・用 途:住宅、事務所、店舗、体育館等
・構 造:鉄筋コンクリート造、一部鉄骨造
・高 さ:約160m
・付帯施設:駐車場303台、駐輪場1,739台、自動二輪駐車場32台
再開発が行われる地区は、都市計画上「商業地域」および「準工業地域」に指定されており、市街地再開発事業に伴う高度利用地区の指定により上限値が800%(沿道側)と550%に引き上げられている。計画建物の容積率については約620%が予定されている。
また、事業計画によると、住宅部分は、地上1階から地上43階で構成されており、高さ約160mの超高層タワーマンションが整備される。このほか、店舗等の部分は、地下1階から地上3階まで、その他用途として、駐車場等が整備されることに加えて、本再開発では荒川区の公共施設として多目的アリーナが整備される予定となっている。
分譲住宅の戸数は合計で約760戸と大規模となる予定。予定される内訳としては次のとおり。
【一般住宅:合計約600戸】
・ 1K・1LDK:全戸数の17%程度(参考戸数:102戸)
・ 2LDK:全戸数の39%程度(参考戸数:234戸)
・ 3LDK・4LDK:全戸数の44%程度(参考戸数:264戸)
共用部分を除く住宅部分の床面積は約50,207m2とされるため、一戸あたりの床面積に換算すると84m2程度となる。
【シニア向け:合計約160戸】
・ 1K・1LDK:全戸数の30%程度(参考戸数:48戸)
・ 2LDK:全戸数の70%程度(参考戸数:112戸)
共用部分を除くシニア住宅部分の床面積は約13,493m2とされるため、一戸あたりの床面積に換算すると84m2程度となる。
分譲住宅部分に関する補足情報として、2021年6月時点において、市街地再開発組合の事業協力者として三菱不動産レジデンシャル株式会社、野村不動産株式会社、三菱地所レジデンス株式会社が連名で報道発表を行っている。このため、今後、当該事業者によって分譲マンションの情報が公表されると考えられる。
スケジュール
事業計画書(2025年3月24日最終閲覧)によれば、建築工事は2024年12月に着手し、2028年3月の完了が予定されていた。しかし、2025年3月時点では工事に着手しておらず、計画上のスケジュールとは乖離が生じている。
これに関しては、荒川区の公式ホームページ(同日最終閲覧)では、工事の着手時期を2025年度、竣工時期を2029年度と記載している。
また、2024年11月の荒川区定例会(建設環境委員会)では、工事期間を2026年4月から2029年12月とする変更案が示されており、今後、東京都からの事業計画変更認可を経て、正式なスケジュールが公表される見込みである。
今後、どのような街の変化があるか
三河島駅や西日暮里駅、日暮里駅を含む西日暮里地域では、積極的に市街地再開発事業が進められており、これにより荒川区が抱える防災上の課題の解決が期待されている。
特に、防災拠点や広場の整備に加え、駅前にふさわしい商業空間の形成が進むことで、住民の安全性と利便性は大きく向上することが予想される。
地理的な優位性も高い。三河島駅は都内の主要駅である上野駅に近接し、観光地である浅草や谷根千エリアへのアクセスにも恵まれている。加えて、近接する西日暮里駅でも市街地のリニューアルが進んでいる。こうした立地特性から、今後は街の魅力が再評価・再発見される可能性がある。
再開発によって、これまでは現代の社会課題に対応した駅前とはいえなかった状況が改善され、安全で安心なまち、そして商業のまちとしての認知度が高まることが予想される。都心への交通利便性とあわせて、居住・商業の両面でさらなる魅力の向上が期待される。
一方で、再開発が完了しても、周辺には木造密集市街地が依然として残る。今後は、再開発エリアと低層住宅地とのバランスや共存を図りつつ、良好な住環境の維持が求められる。また、急激な地価上昇によって、従来の住民が地域を離れざるを得なくなるような事態を防ぐための配慮も必要である。
三河島駅周辺には、古くから在日外国人によるコミュニティが存在し、現在も韓国の家庭料理や焼肉など、本格的な韓国料理を提供する飲食店が多く営業している。下町らしい温かさと異文化の風景が交差するこの地域においては、地域文化の継承にも目を向ける必要がある。
継続的なモニタリングを通じて、三河島らしさを残しながら、新たな街並みを形成していくことが今後の鍵となるだろう。
おわりに
JR三河島駅は、上野駅や東京駅に近く、都心へのアクセス性に優れている。利用可能な路線はJR常磐線快速線のみであるが、2015年の上野東京ライン開業により品川駅までの直通運転が実現し、利便性は飛躍的に向上した。
また、都内では利用者数が比較的少ないにもかかわらず、特別快速を除くすべての列車が停車する駅でもあり、都心へのアクセスに加え、落ち着いた住環境を求める層にとって魅力的な選択肢となりうる。加えて、今回の市街地再開発によって、木造密集市街地の改善、防災広場の確保、アリーナの整備、そして駅前の商業地としての賑わい創出が進むこととなる。こうした取り組みは、地域が抱える課題の解決に大きく寄与するものであり、大地震による延焼火災などへの備えとしても、早期の完成が望まれる。
さらに、荒川区では西日暮里駅周辺でも市街地再開発が進行しており、三河島駅北口を含む西日暮里地域全体で再編の動きが広がっている。
4〜5年後、三河島は新たな街並みとともに、さらなる魅力を備えた都市へと生まれ変わっているだろう。もしかすると、あなた自身がこの“新しい三河島”に暮らしているかもしれない。
荒川区公式サイト 三河島駅前北地区の再開発
















