地震への「強さ」を知る方法とは?

だいち防災研究所 所長 横山芳春 博士(理学)だいち防災研究所 所長 横山芳春 博士(理学)

昨今、各地で地震に見舞われ、建物の損壊や倒壊による人的な被害も発生している。そうした被害を最小限に抑えるためにも、地盤の「強さ」への関心も高まっているのではないだろうか。特に、住宅を建てようと土地の購入を計画している人にとっては、どのような土地が地震の振動が伝わりやすいのか、あるいは液状化しやすいのかということなどは気になる点であろう。しかし専門家ではない私たちは、それらをどうやって知ることができるのだろうか。

今年(2024年)の元日に発生した能登半島地震の後、現地で調査を実施したという、だいち災害リスク研究所 所長の横山芳春さんに話を聞いた。

最も一般的な「スクリューウエイト貫入試験」でわかること

スクリューウエイト貫入試験による地盤調査スクリューウエイト貫入試験による地盤調査

2000年の建築基準法施行令により、建物を建築する際の地盤調査が義務化された。一戸建て住宅を建築する場合には、かつてスウェーデン式サウンディング試験と呼ばれた地盤調査の手法が一般的になっている。2020年からはスクリューウエイト貫入試験(SWS試験)と呼ばれている調査方式だ。これはどういった試験なのだろうか。

「約100kgまで段階的に重しを載せ、沈んだ場合はどの重さで沈んだか、沈まなかった場合は重しを載せたロッドを地中に回転させながら貫入させ、その抵抗値によって土壌の硬軟や締まり具合、土層の構成を判定する試験です。これによって、建物の重さや土の圧縮で建物が沈下して傾くことがないかどうかがわかります」(横山さん)

建物の重さに対して地耐力があるか、地盤改良が必要かどうかを調べる検査というわけだ。この試験はJIS規格でその質が保証されており、費用は一般的な宅地の面積では4万~8万円程度とされている。

ただし「スクリューウエイト貫入試験はあくまで推測。砂か粘土か砂利かなどといった、より詳しい地下の土の種類を知るためには、土を採取するアタッチメントを付けるか、ボーリング試験が必要な場合もあります。また、一般的なスクリューウエイト貫入試験だけでは、地震に対する地盤の揺れやすさや、液状化しやすさの判定はできません」と横山さんは言う。

スクリューウエイト貫入試験による地盤調査スクリューウエイト貫入試験で、わかることとわからないこと(資料提供:だいち災害リスク研究所)

地震動に対する地盤の揺れやすさがわかる「微動探査」

それでは、地震動に対する地盤の揺れやすさはどのように調べればいいのだろうか。

「常時微動探査という方法があります。食パン1斤くらいの大きさの高性能の地震計を複数使用し、自然に起こる地盤の揺れを計測。地震があったときの波の伝わり方や、地盤が固いかやわらかいかなどを調べます」(横山さん)

一般的に、地盤がやわらかいと地震波が増幅されて伝わるとされる。微動探査では、人が感じないくらいの自然にある振動を基に、これらを調査するのだ。そこで使われるのが、表層地盤増幅率という指標。この指標はおおよそ1.4~1.6が標準値で、これより数字が高いと地震の際の揺れが大きくなりやすく、地震による建物の損壊リスクが高くなるという。

なお、地盤の探査は国際規格(ISO24057)で標準化された技術で、おおよそ地下30mくらいまでの表層地盤増幅率を調べることができる。費用は8万~10万円程度。微動探査を実施したい場合には、地盤調査を行っている民間会社に相談してみるとよい。

微動探査に使用される高性能地震計微動探査に使用される高性能地震計

液状化リスクのある地盤とは?

元日の能登半島地震では、深刻な液状化被害が発生した。現地に赴き、被害を受けた家屋や地盤の調査を行った横山さんに、調査の結果とそこからわかる液状化現象と地盤の関係について聞いた。

横山さんは「地盤の液状化は、どのような場所でも同じように起こるわけではありません」と言う。横山さんが液状化を起こしやすい条件として挙げるのは、次の3つのポイントだ。

1. ゆるい砂でできた地盤
2. 地下水の水位が高い(浅い)場所
3. 大きな地震(おおむね震度5弱以上)

横山さんは「地下にゆるい砂の地盤がなく地下水の水位が低い(深い)場所では、基本的に地盤の液状化は起こりません」と語る。(ぎゅっと固まっている地盤ではなく)ゆるい砂の地盤の中に地下水が存在する状態で、地震の揺れにより地下の水位が上がることで砂が浮き、水と砂が混ざった液体が地表に吹き出す。これが液状化現象のメカニズムだという。特に杭のない木造住宅では、液状化によって建物の不同沈下が起き、建物に大きなダメージを与える。このため横山さんは、住宅を建てる際には「ゆるい砂の層」の存在や「地下の水位」を調べることが重要だと指摘する。

実際、横山さんが能登半島地震の液状化被害を調査したところ、新潟県西区での液状化被害はかつて川が流れていた地下水位の高い「旧河道」で発生、石川県内灘町と新潟市西区では、いずれもゆるい砂でできた砂丘のすそ(専門用語では砂丘末端緩斜面)で発生していたという。

「今回の地震で顕著だったのが、地下の層が液状化することで地表面付近の地盤が横方向に動いてしまうこと。このような現象を側方流動といい、地盤そのものがズレて動いてしまいます。特に斜面で発生した場合は、斜面の下側にズレて、建物に傾きが生じる場合があります」

液状化現象のメカニズム(資料提供:だいち災害リスク研究所)液状化現象のメカニズム(資料提供:だいち災害リスク研究所)
液状化現象のメカニズム(資料提供:だいち災害リスク研究所)内灘町で見られた側方流動とは(資料提供:だいち災害リスク研究所)

公開データでも災害リスクは調べられる

では、液状化のリスクなどにつながる地下の地盤構造を知るにはどうすればいいのか。
国土交通省、国土地理院、自治体などがさまざまな情報をネット上で公開しているが、横山さんがすすめするのは「J-SHIS Map(ジェイシスマップ)」「地理院地図」「ハザードマップポータル」の3つだ。

それぞれ何がわかるのか説明しよう。

■J-SHIS Map

国立研究開発法人 防災科学技術研究所が制作・公開するWebサイト「J-SHIS 地震ハザードステーション」内で閲覧できる。活断層や地盤の情報を基に、将来日本で発生するおそれのある地震の確率などの予測結果を地図に表した「地震動予測地図」を表示することができる。微動探査や地形区分による地盤増幅率の数値の目安も、地図上で250mメッシュの単位で見ることができる。

関連リンク:防災科学技術研究所「J-SHIS Map」

■地理院地図

国土地理院が公開する全国地図。ここでは、標高や起伏の情報に加えて、砂丘や旧河道などその場所の地形を示す、「地形区分(自然地形)」により、洪水や浸水、先述の液状化などの、地形による災害リスクの目安を地図上で表示することができる。

関連リンク:国土地理院「地理院地図」

■ハザードマップポータルサイト

国土交通省と国土地理院が公開する全国版ハザードマップ。洪水・土砂災害・高潮・津波といったリスクを地図に重ねて表示できる

関連リンク:国土交通省・国土地理院「ハザードマップポータルサイト」


以上はいずれも私たちが地盤や土地にリスクを知るうえで参考になる情報源だ。これらのサイトは日々更新され、精度や利便性も向上してきているが、より詳細かつ正確にリスクを知るには、専門家による調査が必要になる。

前回記事に続き、土地に潜むリスクの調べ方を紹介してきた。災害が頻発する昨今、暮らしを守る家づくりの第一歩として、地面の下の構造や性質にも目を向けることが重要になってくるのではないだろうか。

建てる前にリスクを知っておくことで、できる対策もある建てる前にリスクを知っておくことで、できる対策もある

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