全国の地価公示の動向
2024年1月1日時点の地価公示は、全国平均で全用途および住宅地、商業地のいずれも3年連続で上昇し、上昇率も拡大している。景気は緩やかに回復しており、三大都市圏では上昇率が拡大し、地方圏でも上昇率は拡大傾向となっており、地価の上昇基調は昨年よりも強まっている状況だ。
都市圏別に見ると、東京圏と名古屋圏では全用途および住宅地、商業地のいずれも3年連続で上昇し、大阪圏は全用途と住宅地が3年連続、商業地は2年連続で上昇している。三大都市圏ではいずれの用途でも上昇率が拡大しており、地価上昇は鮮明になっている。
一方で、福岡市を含む地方四市(ほか、札幌市・仙台市・広島市)は、さらに力強い地価上昇が生じている。地方四市は全用途と住宅地、商業地、工業地で11年連続の地価上昇が生じており、10年超の期間にわたって地価が上がり続けている。
全国的に見られた現象としては、住宅地では中心部における地価上昇に伴い、周辺部でも上昇の範囲が拡大した点が挙げられる。中心部へのアクセスが良く、割安感のある地域において高い上昇率が生じている。
商業地においては、マンション需要と競合する地域では高い上昇率が発生している。マンション人気に伴い、都市中心部の交通利便性等に優れた商業地は純然たるオフィス需要ではなくマンション需要が商業地の地価を押し上げている。
九州地方の地価公示の特徴的な動き
2024年の地価公示で大きな話題となっているのは、大手半導体メーカー進出地における高い地価上昇率だ。
大手半導体メーカーは、北海道千歳市にラピダス、熊本県菊陽町にJASM(TSMC 子会社)が進出している。いずれの地域も、工業地のみならず周辺の住宅地や商業地も含めて地価が大きく上昇していることが特徴だ。
熊本県では、JASMによる半導体の生産開始を見据えて多くの関連企業等が進出しており、幹線道路沿線を中心に事業所や共同住宅、ホテルなどの多岐にわたる旺盛な需要が続いている。
その結果、商業地の標準地である「熊本大津5-1」(熊本県大津町)の上昇率は+33.2%となっており、全国の全用途のなかで最も高い上昇率を示した地点となっている。同じく商業地の標準地である「菊陽5-1」(熊本県菊陽町)も上昇率は+30.8%であり、全国の全用途のなかで2位の上昇率である。
2024年に最も地価が上昇した地点の1位と2位はJASMが進出した周辺地域となっており、JASMの進出効果がいかに大きいかがよくわかる。ちなみに上昇率が全国3位の地点は「千歳5-4」(北海道千歳市)の30.3%であり、やはり大手半導体メーカーが進出した周辺地域だ。
近年の国内の工業地の地価上昇は、旺盛なインターネット通販需要に起因した物流適地の上昇が主だったものとなっている。純然たる工場用地としての需要はむしろまれであり、倉庫用地としての需要が工場地の地価をけん引している。
都市部近郊では、今でも倉庫用地の需要が工業地の地価を押し上げているが、熊本県菊陽町では純然たる工場用地の需要が地価を押し上げた点が特徴といえる。純然たる工場用地の需要は、単なる倉庫用地としての需要とは異なり、周辺に事業所や共同住宅、ホテルなどの需要も生み出すため、影響力が極めて大きい。
熊本県菊陽町や北海道千歳市では、工業地に加え周辺の住宅地や商業地の地価も上昇するといった同様の現象が生じている。
住宅地の状況と値動きの背景
住宅地については、中心部の希少性が高い高級住宅地や中心部と比較して割安感を残す地域を中心に地価の高い上昇が生じている。
また、市内のマンションの販売は引き続き好調であり、マンション用地の供給が少ないことから、開発業者による需要の競合が続いており、地価の高い上昇が続いている。 2024年における福岡市内の住宅地の上昇率は平均で+9.6%という比較的高い水準であり、昨年の+8.0%と比べても上昇率が拡大している状況だ。
特に「福岡早良-19」(福岡県福岡市早良区)では、地下鉄七隈線沿線の堅調な住宅需要に加え、2023年3月の博多駅への延伸に伴う利便性の向上から上昇率が+12.8%にもなっている。また、福岡県内では、福岡市周辺の自治体でも住宅需要が波及しており、JR鹿児島本線や西鉄天神大牟田線沿線の利便性が良好な地域を中心に需要は堅調で、住宅地の地価上昇が続いている。
特に古賀市の住宅地は、JR 鹿児島本線の駅が市内に3駅あり、福岡市中心部へのアクセスが良好であることから、福岡市のベッドタウンとして住宅需要が強い。福岡市周辺の自治体のおける住宅地の平均上昇率は、古賀市が+14.2%(昨年は+9.2%)、筑紫野市が+8.6%(昨年は+8.1%)、大野城市が+8.7%(昨年は+8.6%)、粕屋町が+7.3%(昨年は+6.8%)となっており、比較的高い上昇率が継続している。
商業地の状況と値動きの背景
福岡市の商業地は、天神ビッグバンや博多コネクティッドの再開発によってオフィス需要は堅調であり、観光客を含めた人流回復に伴いホテルや飲食店舗の取引も活発化している。
再開発の周辺地域では、旺盛なマンション用地の需要も見られることから、地価の高い上昇が継続している。 天神ビッグバンと博多コネクティッドは、いずれも「期間限定」かつ「エリア限定」で行われている再開発であるが、長期間にわたり地価を押し上げ続け、かつ、波及エリアも広範囲に及んでいる再開発だ。
ここで言う期間限定とは、期間内に建て替えを行えば割増容積率をもらえるという制度のことを指している。容積率とは、敷地面積に対する建物の延床面積の割合のことである。エリア限定というのは、割増容積率をもらえるエリアが、両地域の中心部から半径500mという狭い範囲としている点だ。天神ビッグバンと博多コネクティッドは、近年の福岡市の商業地の地価を押し上げる起爆剤となっており、福岡市の商業地は毎年のように高い上昇率を継続している。
2024年における福岡市の商業地の上昇率は平均で+12.6%となっており、昨年の+10.6%よりも上昇率が拡大している状況だ。特に「福岡中央5-7」(福岡県福岡市中央区)では、天神地区や博多駅まで2km圏内と中心部への接近性に優れることから、マンション開発が多く見られる地域であり、周辺と比較した割安感もあることから、上昇率が19.3%となっている。
また、「福岡博多5-9」(福岡県福岡市博多区)では、人流回復を受け、飲食店舗等の旺盛な出店需要に加え、ホテルやマンションとの需要の競合も見られることから上昇率が18.9%にもなっている
一方で、福岡市周辺の自治体における商業地でも、幹線道路沿いを中心に店舗や事業所等の需要が堅調で鉄道駅周辺ではマンション用地需要が旺盛なことから、地価の上昇が継続している。商業地のなかでもマンション需要と競合するエリアにおいては、全国的に地価が高く上昇しており、福岡市でも同様の現象が生じている。
工業地の状況と値動きの背景
工業地に関しては、倉庫建設に適した物流適地が高い上昇率を示している。「志免9-1」(福岡県志免町)では、福岡市中心部や福岡空港へのアクセスが非常に優れ、中小規模であっても倉庫や事業所等の需要が旺盛であり、さらに福岡市内の工業地と比較した割安感もあることから、20.2%も上昇している。「志免9-1」の上昇率は、全国の工業地のなかでも9位となる高い数値となっている。
今後の動向
再開発で成功している福岡市は、今後も相応に高い上昇率が継続していくものと見込まれる。商業地の上昇率は地方四市のなかでも高くなっており、2024年は福岡市が+12.6%(昨年は+10.6%)であったのに対し、札幌市は+10.3%(昨年は+9.7%)、仙台市は+7.8%(昨年は+6.1%)、広島市は+4.2%(昨年は+3.7%)となっている。
福岡市だけ10%以上の上昇率が継続しており、期間限定の再開発が長期間にわたり地価を押し上げていることがわかる。また、福岡市内はマンションとホテルの用地が競合する商業地が多く、マンション需要やインバウンド需要の強さも地価を上昇させる要因となっている。
マンションとインバウンドの強い需要はしばらく続くも見込まれることから、福岡市の地価は引き続き上昇していくものと予想される。
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