財政力指数とは
「財政力指数(ざいせいりょくしすう)」は、地方自治体の財政力を示す指数である。「地方財政状況調査」の指標のひとつで、総務省により毎年度発表されている。財政力指数は「基準財政収入額」を「基準財政需要額」で除して得た数値の、過去3年間の平均値を計算することで求められる(参考:総務省 公式サイト)。
基準財政収入額とは、地方自治体の標準的な地方税収額のこと。自治体が徴収できると想定される「税収」である。また基準財政需要額は、地方自治体が行政サービスを合理的に行った場合に必要と想定される「経費」だ。
財政力指数は、自治体の「想定税収 ÷ 想定経費」の過去3年間の平均値とも表せる。
※関連記事:【数字で見る、自治体の力】財政力指数・経常収支比率など、長く住む街選びでチェックしたいポイントとは
財政力指数の数値が高いほど、自治体の自主財源の割合が高いと判断され、財政状況に余裕があると推測できる。そのため、政府が自治体へ交付する地方交付税を決めるときの判断材料となっている。財政力指数の数値が1を下回れば、地方交付税の普通交付金が交付される。しかし1を超えた場合は、普通交付金が交付されない。
普通交付金が交付されない自治体は「不交付団体」と呼ばれる。不交付団体は、財政の豊かな自治体である「富裕団体」とされることも多い。普通交付金を交付しなくとも、自治体の自主財政のみで行政サービスが運営可能と想定できるためだ。
「財政力指数」が高い自治体ランキング(近畿編)
近畿地方では、どこの自治体(市町村)の財政力指数が高いのだろうか。なお近畿地方の範囲について、場合により広狭があるが、当記事では次の府県を近畿地方とする。
≪近畿地方≫
三重県/滋賀県/京都府/大阪府/兵庫県/奈良県/和歌山県
総務省が発表した2022年度(令和4年度)の財政力指数では、近畿地方の自治体の上位20は次のとおりだ。
※全国市町村の財政力指数平均値は0.49
参考:総務省|地方財政状況調査関係資料|地方公共団体の主要財政指標一覧
上位の5位にランクインした自治体は、近畿でも人口の多い大阪府や京都府から2自治体が入っている。しかし大阪市や京都市などといった人口の多い自治体ではなく、「町」である田尻町(1位:1.24)や久御山町(4位:1.11)だ。とくに田尻町は人口1万人に満たない小さな町である。同じく滋賀県から5位内にランクインしたのも、市ではなく町である竜王町(5位:1.05)だ。
一方、三重県からは、2自治体が5位内にランクイン。ひとつは県内屈指の人口を誇る都市・四日市市(3位:1.13)だが、もうひとつは人口約1万5千人の川越町(2位:1.24)。なお両市町は隣接している。
近畿地方の府県の傾向を見てみると、人口の多い大阪府や京都府・兵庫県・滋賀県の自治体は、比較的上位にランクインしているところが多い。一方で奈良県や和歌山県の自治体は、下位にランクインしているところが多い傾向だ。三重県の自治体は、上位から下位まで分散してランクインしている。
なお兵庫県の最上位は6位の芦屋市(1.04)、奈良県の最上位は42位の生駒市(0.77)で、和歌山県の最上位は30位の和歌山市(0.80)である。
近畿地方の上位6自治体はいずれも財政力指数が1.0を上回っており、普通交付税の不交付団体だ。6位の芦屋市までは不交付団体であるが、それ以降の自治体はすべて1.0を下回り、普通交付税が交付されている自治体となっている。不交付団体が32自治体だった関東地方とは、状況が大きく異なる。
次の章からは、上位5自治体の特徴をそれぞれ見ていきたい。
1位:田尻町(大阪府)
近畿地方でもっとも財政力指数が高かった自治体は大阪府泉南郡の田尻町(たじりちょう)で、財政力指数:1.30だ。田尻町は大阪府南部に位置し、大阪湾に面している。人口が約8千人、面積は約5.62km2の小さな自治体である。
田尻町の沖合約5kmの地点にある人口島には、関西国際空港が立地する。なお関西国際空港の敷地は、田尻町と隣接する泉佐野市・阪南市の3自治体にまたがっている。田尻町は水はけのよい良質な土壌であることから、古くから農業が盛ん。なかでも「水ナス」や「泉州タマネギ」が名産として知られている。また大阪湾岸には田尻漁港があり、水産業も盛んである。
田尻町が財政力指数で1位になった最大の理由は、町内に関西国際空港があることだろう。関西国際空港は町の面積の約3分の2を占めるほどである。そのため関西国際空港からの法人町民税や固定資産税が、田尻町の大きな財源となっている。
田尻町と同じく関西国際空港を有する泉佐野市は14位(0.90)、阪南市は120位(0.52)。これは両市に比べて田尻町の人口や面積は小さいため、歳出が少なくなっていることが理由だと考えられる。なお2022年度の田尻町の歳入は約61.8億円、一方、歳出は55.7億円だった(参照:田尻町の財政状況の見える化|田尻町ホームページ)。
田尻町の課題として、歳入が関西国際空港に強く依存している点が挙げられる。そのため町の財政は、関西国際空港の営業状態に左右されるといえる。実際に新型コロナウィルス感染症の流行により旅行などの需要が減少した際に、田尻町の法人税は減少し、財政力指数も減少した。
ちなみに余裕資金を見る指標である経常収支比率は、田尻町は1.30となっており、近畿地方4番目の低さ。田尻町の財政に余裕があるといえる。また実質公債費比率は3.8で、近畿地方で46位である。
※ 田尻町 公式サイト
https://www.town.tajiri.osaka.jp/index.html
2位:川越町(三重県)
近畿地方で財政力指数が2番目に高い自治体は、三重県三重郡にある川越町(かわごえちょう)だ(財政力指数:1.24)。川越町は三重県北部に位置し、桑名市・四日市市・朝日町に接する。伊勢湾に面しており、町域の多くが平地である。人口は約1万5千人を有し、面積は約8.72km2で県内で2番目に小さい。名産品としてちくわ・かまぼこなどの練り物製品や水飴、あられなどがある。
川越町の伊勢湾岸エリアには、中京工業地帯の一角である四日市工業地域がある。同工業地域は四日市市から川越町にまたがっている。なお四日市市も財政力指数の第3位にランクインしている。
川越町の財政力指数が高い理由は、同町が四日市工業地帯の一部となっていることだろう。工業地帯には多数の企業が立地しており、法人町民税・固定資産税による税収がある。また工業地帯には中部電力の大規模発電所である川越発電所が立地。発電所からの税収も大きい。
また川越町は人口が増加している点も、財政力指数が高くなっている理由と考えられる。川越町の人口密度は16.9人/km2で、県内2位の高さ。川越町はもっとも近い都市である四日市市街地までは約8km、大都市である名古屋市まで約30kmで、立地が良い。
近鉄名古屋線の駅や伊勢湾岸自動車道のインターチェンジを有するなど、交通の利便性も良好だ。さらに町が子育て支援に力を入れており、子育て世帯を中心とした人口流入がある。都市が近くて交通利便性が良く、子育てしやすさや住みやすさなどによりベッドタウンとしての魅力があることが、川越町の人口増加の理由と考えられる。なお経常収支比率は、川越町は74.4で、近畿地方5番目の低さである。また実質公債費比率は2.4で、近畿地方で27位。川越町は財政に余裕があることがわかる。
※ 川越町 公式サイト
https://www.town.kawagoe.mie.jp/
3位:四日市市(三重県)
近畿地方で財政力指数が高い自治体の第3位は、三重県の四日市市。近畿地方の「市」の中ではもっとも財政力指数が高い。
四日市市は三重県北部に位置し、伊勢湾に面している。面積は約206km2、人口は約30万6千人で三重県最大の人口を有する。名産として冷麦やハマグリが古くから知られており、ご当地グルメの「とんてき」も人気である。
四日市市の湾岸部には中京工業地帯の一部を占める、四日市工業地域がある。四日市工業地域を共有する、隣接の川越町も財政力指数ランキングの近畿地方2位にランクインしている。
なお三重県はもともと「安濃津県(あのつけん)」という名前だったが、明治5年に三重郡四日市町(現 四日市市)に県庁が移転し、郡名を取って「三重県」と改称した。しかし翌明治6年に津へ県庁を再移転したが、県名は改称されずに現在に至っている。そのため四日市市は、三重県の名前の由来の地といえる。
四日市市の財政力指数が高い最大の理由は、四日市工業地域があることだろう。同工業地域には大規模な石油化学コンビナートが形成されており、その規模は日本屈指。さらに世界最先端かつ世界最大級の半導体工場もある。ほかにも自動車・機械・電機・食品などの多数の業種の企業が集積している。
四日市工業地域における製造品出荷額等は、国内の市区町村で11番目(2012年 経済産業省 工業統計調査より)。そのため四日市市では、企業からの法人市民税が大きな税収となっている。
また企業が多く、大規模な企業もあるため、雇用にも大きな影響がある。企業で働く従業員が四日市市に多く居住することで人口が増加し、安定した市民税も得られると考えられる。LIFULL HOME'Sの住まいインデックスで人口増減に着目すると、人口増加率は三重県内で3番目に高い。平均年齢は45.1歳で、15歳〜64歳が61.9%を占める。働き盛りの現役世代の比率が高くなっている。
四日市市の経常収支比率に目を移してみると、80.8で近畿地方13位。また実質公債費率は2.8で、近畿地方で33位となっている。財政力指数・経常収支比率・実質公債費率のいずれも基準値をクリアしており、財政は健全といえるだろう。なお四日市市の2022年度の歳入は約1461億円で、対する歳出は約1387億円だった。
※ 四日市市 公式サイト
https://www.city.yokkaichi.lg.jp/www/index.html
※ 四日市市の住まいと暮らしやすさ|LIFULL HOME'S 住まいインデックス
https://lifullhomes-index.jp/info/areas/mie-pref/yokkaichi-city/
4位:久御山町(京都府)
近畿の財政力指数ランキング第4位の自治体は、京都府久世郡の久御山町(くみやまちょう)だ。なんと同町は50年以上にわたり、普通交付税の不交付団体となっている。そんな久御山町は京都府南部に位置し、面積は約13.86km2、人口が約1万5千人の町である。北側に京都市(伏見区)、東側が宇治市、南側が城陽市、西側は八幡市と隣接している。
町域は宇治川(淀川)とその支流・木津川に挟まれており、比較的平坦な土地が広がる。もともと久御山町の平地には「巨椋池(おぐらいけ)」という巨大な湖があった。昭和時代前期に巨椋池の干拓工事が行われ、広大な平地に変わったのである。干拓により生まれた農地で栽培される「淀ダイコン」や「軟弱野菜」は、久御山町の特産品となっている。
久御山町が財政力指数第4位で、長年にわたり不交付団体となっている理由は、交通利便性がよい地理的特徴が大きい。久御山町は大都市である京都市に隣接。さらに町内を国道1号や国道24号、京滋バイパスといった幹線道路が通過しており、ジャンクションも設置されている。京都市だけでなく大阪・滋賀・奈良といった各方面へのアクセスが良好であり、久御山町は道路交通の要衝といえる。
交通利便性の良さと、干拓によって生まれた平地が多いことから製造業を中心に企業が多く立地。事業所数は約1600にのぼり、久御山町は「ものづくり」の町として発展した。企業からの法人町民税や固定資産税が、大きな収入源となっている。加えて町内に立地する企業は業種が多様であり、規模も大企業から中小企業までそろう。そのため特定の業種・企業の業績が落ち込んでも、影響を受けにくいと考えられる。
さらに久御山町では市街化区域が工業地と住宅地に区分されていることで、公共事業等が抑えられているという。また人口が1万5千人という適度な規模であることもあり、歳出が大きくなりにくい点も特徴だ。なお2022年度の久御山町の一般会計の歳入は約86.8億円、一方、歳出は約82.6億円で、差引額は約4.1億円だった(参照:久御山町 公式サイト)。
50年以上連続で不交付団体となっているのは、久御山町が「交通の要衝」「干拓で生まれた土地」といった地の利を生かしているからといえよう。ちなみに2022年度の久御山町の経常収支比率は81.3で、近畿地方で第15位。実質公債費率は0.3で第10位と、いずれも良好である。
※ 久御山町 公式サイト
https://www.town.kumiyama.lg.jp/
5位:竜王町(滋賀県)
近畿地方で5番目に財政力指数が高いのが、滋賀県蒲生郡にある竜王町(りゅうおうちょう)である。滋賀県でもっとも財政力指数が高い自治体となっている。人口は約1万1千人で、面積は約44.55km2。琵琶湖の南部・近江八幡市の南側に位置しており、西は野洲市・湖南市、南が甲賀市、東は東近江市と接する。
東西南の三方は丘陵地だが、中部から北部にかけてはおおむね平坦な土地が広がっている。特産品として「近江牛」が有名で、竜王町は近江牛発祥地のひとつ。また伝統工芸品として「木製桶樽」がある。このほか「弓道発祥の地」「西川姓の発祥の地」「源義経元服の地」などとしても知られている。
また竜王町は「コンパクトシティ化構想」や「バイオマス産業都市構想」に力を入れており、暮らしやすい街づくりに取り組んでいる。
竜王町の財政力指数が高い理由は、大型工場や大型商業施設が立地していることだろう。竜王町の面積は小さいにもかかわらず、町内に大手自動車メーカー・ダイハツ工業の大規模工場が立地し、さらに大型アウトレットモールがあり、道の駅が2か所も存在する。またダイハツがあることで関連企業・取引企業も多く立地しており、企業や大型商業施設などからの法人町民税・固定資産税などの税収がある。
町内に企業や商業施設が多く立地しているのは、竜王町の立地の良さが大きい。町の南北を県道477号線が縦貫し、北部を東西に国道8号線が通過。さらに中部を東西に名神高速道路が通り、竜王インターチェンジが設置されるなど、竜王町は道路交通の要衝となっている。
一方で竜王町はダイハツおよび関連企業への依存度が高く、この点はデメリットにもなりえる。ダイハツの営業が不振となれば、町の税収に大きな影響を与えるからである。2023年にダイハツは自動車の認証試験での不正が発覚し、大きな問題となった。ダイハツの不祥事による、竜王町の財政への影響が懸念されている。
竜王町のような典型的な「企業城下町」で暮らす場合、企業の業績が自治体の財政に大きな営業を与える可能性がある点を考えておきたい。
※ 竜王町 公式サイト
https://www.town.ryuoh.shiga.jp/
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