土地・不動産情報ライブラリの構築の背景
2023(令和5)年5月9日に国土交通省は土地・不動産に関する情報を地図上に分かりやすく表示する「土地・不動産情報ライブラリ」を構築することを公表している。2024(令和6)年度の公開・運用開始に向けて、2023(令和5)年度は設計・開発等を実施している。
土地・不動産情報ライブラリとは、不動産の価格情報や防災情報、周辺施設情報等の不動産に関わる情報を地図上に分かりやすく表示するシステムのことである。現在、国土交通省では地価公示や都道府県地価調査の情報を地図上に表示する「土地総合情報システム」を運用しているが、このシステムを飛躍的に進化させたものが「土地・不動産情報ライブラリ」に相当することになる。
土地・不動産情報ライブラリが構築される背景としては、現在散逸しているデータを一本化し、国民に利便性をもたらすことが目的となっている。現在、日本では国や自治体からホームページを通じてさまざまな情報が公開されているが、これらをすべて把握していくには非常に労力を要する。
例えば、地価公示や都道府県地価調査といった土地価格の情報を調べるには国の情報システムにアクセスしなければならない。一方で、学区に関しては市町村のホームページにアクセスすることが必要だ。
しかも、学区に関しては市町村のホームページのどこに記載されているのか分からないことも多い。
さらに近年ではハザードマップを調べる人も多くなっており、ハザードマップは国や自治体がそれぞれのホームページで公開している状況にある。
このように日本ではさまざまな行政情報の情報公開は進んでいるものの、情報が散逸しているため、デジタル化されているにもかかわらず非効率な状況となっている。そこで、情報検索者の探索コストと統合コストを低減することを目的に、地図という分かりやすい形で情報を一元的に検索できるシステムを構築するに至ったということだ。
現状の住宅選びに必要な情報に対する課題
近年は、不動産会社の店頭に出向いていろいろな物件を案内してもらうというスタイルは減っており、インターネットの物件広告を通じて不動産会社と直接現地で待ち合わせて物件を案内してもらうスタイルが主流となっている。
このような取引のスタイルになると、不動産会社からいろいろな情報を得てから物件を選ぶというプロセスが減ってしまう。そのため、価格や学区、ハザードマップといった不動産に関する情報はあらかじめ買主が個人的に調査した上で物件を選ぶ必要性が出てくる。よって、近年では買主が不動産の購入前に自ら積極的に情報収集するケースがますます増えてきている状況にある。
国土交通省によると、買主が不動産取引時に参考にする価格以外の情報としては、1位が「周辺の公共施設等の立地状況・学区情報」(60.5%)、2位が「ハザードマップの災害等に関する情報」(46.6%)となっている。「周辺の公共施設等の立地状況・学区情報」や「ハザードマップの災害等に関する情報」はいずれも調べれば入手可能であるが、情報が自治体や国に散逸していて調べにくい。
特に近年は学区の情報は地元の人ですら分からない情報となっている。中心市街地にタワーマンションが建つケースでは、周辺に小学校が少ないことからマンションごとに学区が指定されている自治体もある。
地図上にある近くの小学校に子どもを通わせられるとは限らず、近年の学区は直感的に把握できない情報だ。
このように不動産取引では個人が事前に情報収集しなければならないケースが増えていることや、学区のように複雑化した情報もあることから、情報を入手しやすくする要請が高まっている。土地・不動産情報ライブラリの構築は待ち望まれているシステムであり、国民に利便性をもたらすことが期待されるのだ。
国土交通省の対策
国土交通省はかねてより不動産情報の散逸化に課題を感じており、環境の整備を整えてきた。2021年5月28日には、土地基本方針で不動産に関する情報基盤の整備・充実を図ることを閣議決定している。
2022年3月18日の地理空間情報活用推進基本計画では、土地・不動産情報ライブラリという言葉が登場し、2024年度から運用開始を目指すことが決定された。さらに2022年12月23日にはデジタル田園都市国家構想総合戦略において、土地・不動産情報ライブラリでは土地・不動産関連情報を地図上に分かりやすく表示するという表現が加わっている。
土地・不動産情報ライブラリの最大の特徴は、散逸している情報を地図上に分かりやすく重ねて表示するという点である。価格情報や防災情報、周辺情報を重ね合わせ、視覚的に情報を把握できることが特徴だ。
例えば、従来の学区の情報であれば、「A町はB小学校、C町はD小学校」というように文字情報だけが中心であった。「B小学校」という文字情報だけだと、さらに「B小学校」の場所を地図で調べなければいけない手間が発生する。最初から地図上に場所が明示されていれば、学校への通いやすさは一目瞭然にわかる情報となる。
分かりやすさや見やすさを追求しているという点において、従来の行政の情報と比較すると格段に進化した情報システムになるといえる。
土地・不動産情報ライブラリに掲載される情報
土地・不動産情報ライブラリに掲載される情報は、大きく分けて「価格情報」と「防災」、「地形」、「都市計画」、「周辺施設」、「人口」の6つのカテゴリーである。情報はさらに細かいものまで表示され、例えば価格情報であれば、地価公示や都道府県地価調査、取引価格情報、成約価格情報が掲載される予定となっている。
防災はいわゆるハザードマップの情報であり、洪水や土砂災害、津波、高潮等の想定区域の他、避難施設も把握できる。地形では、大規模盛土造成地マップと呼ばれる大規模盛土造成地の情報が公表される予定だ。
山を切り開いて造成された宅地には、盛土と切土によって形成された宅地がある。盛土と切土を比べると、土砂災害のリスクは盛土の方が高い。大規模盛土造成地マップを見ることで、土砂崩れが生じやすい場所がどこにあるのかが誰でも容易に把握できるようになる。
都市計画区域や立地適正化計画区域などの都市計画情報についても見られるようになり、今後の自治体の街づくりの観点からも不動産購入の参考になるだろう。
周辺施設に関しては、役所や図書館等の公共施設や学校、幼稚園・保育園、福祉施設、医療機関、駅が表示される。医療機関は大病院だけでなく診療所や歯科診療所まで掲載されるようだ。駅に関しては、1日あたりの乗降客数まで見られるようになっている。
人口に関しては、2050年までの将来人口の試算結果が掲載される。将来の人口予測が分かるため、今後、人口が大きく減らない地域かどうかを確認することができる。人口が大きく減らなければインフラを維持しやすいため、将来的にも暮らしやすい街であると予測ができる。
今後の活用予想
土地・不動産情報ライブラリは、不動産の買主だけでなく、売主も十分に活用できることが期待される。土地・不動産情報ライブラリでは、価格情報として取引価格情報と成約価格情報の2つが掲載されることになっている。
取引価格情報とは、国土交通省が不動産取引当事者から収集した情報であり、2023年12月時点では土地総合情報システムで見ることのできる情報となっている。成約価格情報とは、指定流通機構(レインズ)が保有している成約情報であり、2023年12月時点ではレインズ・マーケット・インフォメーションで見ることのできる情報だ。
いずれも売却前に売主が相場を把握するために利用できる情報サイトであるが、両者には情報量に偏りがあり、いずれも文字情報で表示されるだけであることから、やや使いにくいものとなっている。土地・不動産情報ライブラリでは、取引価格情報と成約価格情報が町字単位でまとめられ、地図をクリックすると一覧で表示されるようだ。
相場を知りたい場所で取引価格情報と成約価格情報の両方を見ることができるため、情報量が飛躍的にアップし、売主が売却前に相場を把握しやすくなる。土地・不動産情報ライブラリは、売主が売却前に相場を調べる手段として主流な方法となることが期待される。
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