日本初。大学図書館と市立図書館が一体化した図書館が箕面に誕生
今、大阪府箕面市が盛り上がっている。その理由は、2024年3月23日開業予定の北大阪急行電鉄の延伸事業で、新駅周辺の整備が進んでいるからだ。新駅として誕生する「箕面船場阪大前駅」は、特に開発が目覚ましい。まず2021年に大阪大学外国語学部が、新・箕面キャンパスに移転。近隣には、留学生と日本人学生が日常的に交流できる混合型学生寮も建設されている。
そして新キャンパスと同時に町にやってきたのが、大学図書館だ。キャンパスの完成と同時に建てられた複合公共施設は図書館、劇場、生涯学習センターから構成されており、駅周辺のまちづくりの拠点となっている。
注目なのは、この「箕面市立船場図書館」が、大学図書館と市立図書館が一体化する公大連携図書館だということだ。箕面市から指定を受けて図書館と生涯学習センターの管理運営を大阪大学(以降、阪大)が行っている。公共図書館を国立大学が運営するのは日本初。地域連携の取り組みが評価され、令和5年度(2023年度)の国立大学図書館協会賞を受賞した。
「入館ゲートはなく、大学蔵書フロアを含めて誰でも自由に利用できます。図書館内には、箕面市の職員はおらず、大阪大学の職員が館全体の管理運営を担当しています。市の図書館と大学の図書館が一体化することで、大学の図書館には少ない実用書が増え、学生にとっては文芸書や実用書が手軽に手に入るようになり、逆に市民の方には大学の蔵書にアクセスしやすくなっています」と大阪大学 附属図書館 箕面図書館課 外国学図書館班 市民連携主担当 日髙正太郎氏は話す。
移転した初年度の新規カード登録者数は、市内の人が3,000人、市内以外の人が3,000人。市外からの登録数がこれだけ多いのは、かなり稀なケースだそう。大学蔵書の一般市民への貸出冊数は、一体した運営を開始する以前の5.2倍。市民による大学図書館の蔵書・機能の利用もかなり増えているという。
繊維をイメージしたさまざまな「箕(み)」が組み合わさった構造の建築
建物の外観は箕面の名の由来である「箕(み)」(穀物の選別の際に殻や塵を取り除くための容器)をモチーフにした内外装が特徴だ。図書館の1階が駐輪場、2階に歩行者空間のペデストリアンデッキが接続するため 、メインの出入り口は2階となっている。建物全体は繊維をイメージしたさまざまなハコ・「箕」が組み合わさった構成とし、ハコ上部への居場所の配置や、隙間からの光の取り入れ、人の出入り、大きなハコのセットバックなど、ボリュームを分節した上で変化に富んだ施設づくりが心がけられている。
3層吹き抜け空間にダイナミックな本のガラス箱が挿入され、知の拠点が色彩豊かに表されており、吹き抜け空間には床輻射熱空調システムを採用している。
「ゾーニングとしては、上階に行けば行くほど静かになっていくイメージです。2階は子どもたちが過ごすにぎやかなエリア。4階は個室を用意したり、静かに調べ物をできるようにしたりと階を上がるごとにグラデーションがあります。一般の方と学生の区域を細かく切り分けず、自由に使える空間です。しかし大学図書館に由来するような、学生の主体的な学修を支援するラーニング・コモンズも設計に組み込まれています」と大阪大学 サステイナブルキャンパスオフィス 准教授 池内祥見氏は話す。
図書館の2階にある飲食店の誘致も阪大が行った。大手チェーン店ではなく、地元の喫茶店が店舗に選ばれたのは、地域とつながる接点となる場所になってほしいという理由からだ。
大学図書館が行う地域に向けて提供する、遊びや学び
他にはない図書館の取組みとして、箕面キャンパスにある外国語学部と連携した、子どもや大人、それぞれに向けた継続的なイベントがある。25以上の言語を扱う外国語学部との連携によって、多言語・ 多文化の色彩が加わる独自性のあるイベントが実施できている。例えば海外絵本の読み聞かせや、研究者の講義や卒業論文の発表会、海外の楽器の演奏会など幅広い内容だ。共通するのは「大学での学びを通じて地域の人に貢献したい」という教員・学生の思いだと日髙さんは話す。
「箕面市は、60〜70ヶ国の人が居住している多民族在住都市。町には国際交流の施設や海外の食事が週替わりで食べられるレストランもあり、多文化が街の中にバックボーンとしてあります。だからこそ多言語・多文化イベントへの興味関心も高く、受け入れられやすい環境だと感じます」と日髙さんは続ける。
また図書館の上階(5、6階)にある船場生涯学習センターでは、一般利用者に向けて図書館利用に関する生涯学習講座も行われている。図書館利用のノウハウや資料の探し方などの講座は、いつも人気で満員御礼なのだとか。元々は大学生向けガイダンスで実施されているもの。大学のノウハウがこんな場面でも生かされている。
図書館、地域、大学が一体となって起こす、リビングラボラトリーの場
活動は図書館の外にも広がっている。図書館と向かいにあるキャンパスの間には大きな広場がある。箕面市や大阪船場繊維卸商団地協同組合、大阪大学などに加え、地域住民が主体となった「箕面船場まちづくり協議会」も参画し、この広場を活用したイベント企画も進められている。
2022年、2023年と大阪大学夏まつりがこの場所で行われた。夏まつりに合わせて近隣の大阪船場繊維卸商団地協同組合による「歩行者天国」が実施され、関係団体の出店など地域も一体となったイベントとなった。このような機会から、近隣の学寮(320戸)に住む留学生とまちの地域住民が、日常的に関わりを持てるようになっている。広場で行われる地域のラジオ体操に留学生が参加したり、逆に留学生主催のパーティや研究会に地元住民が参加するケースもある。広場が多様な「交流」の場となり、今後留学生と地元住民がともに何かを生み出す可能性もある。
「リビングラボラトリーという考え方があります。共創による新しい価値を作っていくうえで、学生だけや特定分野の専門家だけではなく、さまざまな地域の人などを巻き込んでアイデアを出すことが大切だと考えています。イベントを機に自然と交流が進めば、新たな研究テーマが生まれて、それが町の課題解決につながるかもしれない。町の課題を個人や市民だけで考えるのではなく、さまざまな角度から見ていく必要があります。副次的な価値になりうる可能性は大いにあります」と池内氏。
新駅「箕面船場阪大前」駅前にどのようなにぎわいが生まれていくのか。図書館、文化芸能劇場、生涯学習センター、広場などこのエリア全体は、生きた実験室として活用されていきそうだ。
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