国土交通省のブロック塀等の安全対策実施の背景

ひび割れがあるブロック塀は大規模地震が発生した場合に倒壊等により人命に関わる重大事故に繋がる危険性があるひび割れがあるブロック塀は大規模地震が発生した場合に倒壊等により人命に関わる重大事故に繋がる危険性がある

2018年に生じた大阪府北部の地震で、ブロック塀が倒壊した事故を記憶している人も多いと思われる。2023年9月には、地震ではないものの福井県鯖江市で小学生がブロック塀の倒壊で怪我をする事故が発生し、改めてブロック塀の危険性を感じるところである。ブロック塀の倒壊は、大きな地震が発生するたびに生じることが多く、過去においては主に以下のような被害が生じている。

1978年(昭和53年)宮城県沖地震:ブロック塀、門柱等の倒壊によって18名の犠牲
2005年(平成17年)福岡県西方沖地震:ブロック塀の倒壊によって1名の犠牲
2016年(平成28年)熊本地震:ブロック塀の倒壊によって1名の犠牲
2018年(平成30年)大阪府北部地震:ブロック塀等の倒壊によって2名の犠牲

ブロック塀の事故が続いたことを受け、国土交通省では2018年の事故の後、すぐにブロック塀のチェックポイントをまとめ、自治体や業界関係者に対して注意喚起を促す対策を取ってきた。ブロック塀の事故が相次いでしまう遠因としては、安全性がチェックされないまま建てられてしまうブロック塀が多いことが挙げられる。ブロック塀を建てるケースとしては、主に建物の新築時に同時に建てるケースと後から単独で建てるケースの2通りがある。

ひび割れがあるブロック塀は大規模地震が発生した場合に倒壊等により人命に関わる重大事故に繋がる危険性がある所有しているブロック塀が既存不適格に該当している場合、違法ではないがほかの人に危害を及ぼした場合、損害賠償責任を負うことになる

新築時に同時に建てるケース

新築時に同時に建てるケースは、安全性が高いブロック塀が比較的多いと思われる。理由としては、新築時は確認申請という図面チェックのプロセスを経るからだ。確認申請とは、自治体または指定確認検査機関が着工前に行う図面チェックのことである。確認申請で建築予定の建物およびブロック塀が合法的なものであれば、確認済み証が下り、建築に着工することができる。建築確認を通過した建物は、竣工時に検査が行われ、確認申請の図面どおりに建っていれば検査済証を受領するという流れとなっている。
ブロック塀に関しても、建築基準法施行令(以下、施行令)で設計の基準が定められている。検査済証がある物件であれば、施行令の設計基準は満たしているということであることから、安全なブロック塀が建っていると考えられる。

後から単独で建てるケース

一方で、後から単独で建てるケースでは、建築確認のプロセスを経ずに建っているものも多い。後から単独でブロック塀を建てる場合、防火地域または準防火地域以外では、建築確認が不要となる。防火地域や準防火地域というのは、都市部の中心市街地における商業エリアに指定されることが多く、一般的な住宅地では指定されていないことが通常となっている。そのため、一般的な住宅地内で後から単独でブロック塀を建てる場合は、建築確認のプロセスを経ずに建てることができるため、安全性がチェックされないまま建てられていることになる。もちろん、自主定期に施行令の設計基準を遵守して建てた安全なブロック塀も多く存在するが、チェックのプロセスがないことから危険なブロック塀も少なからず存在するのだ。

大地震が生じたとき、建物は倒れなくてもブロック塀だけ倒れる物件が存在するのは、ブロック塀を建てるプロセスにも遠因があると考えられる。

ブロック塀等の点検のチェックポイント

ブロック塀の安全性をチェックする際は、まずブロック塀の種類を見極めることが必要となる。ブロック塀には、主に「補強コンクリートブロック造の塀」と「組積造の塀」の2種類がある。
補強コンクリートブロック造の塀とは、コンクリートブロックに鉄筋が入った塀を指す。組積造の塀は、単に石やれんが等を積み上げてつくられた塀のことである。強度の関しては、当然に補強コンクリートブロック造のほうが強い。そのため、チェック項目の基準値についても両者では異なっている。

ブロック塀には、「補強コンクリートブロック造の塀」と「組積造の塀」の2種類があるブロック塀には、「補強コンクリートブロック造の塀」と「組積造の塀」の2種類がある

ブロック塀の安全性のチェック項目は、「高さ」と「厚さ」「控え壁」「基礎」「傾き・ひび割れ」の5つである。高さの安全基準は、補強コンクリートブロック造の塀は2.2m以下、組積造の塀は1.2m以下となっている。厚さの安全基準は、補強コンクリートブロック造の塀は15cm以上(高さが2m以下なら10cm以上)、組積造の塀は塀の高さの10%以上である。

控え壁とは、ブロック塀に直交して突き出た補強のための壁のことを指す。控え壁の安全基準は、高さが1.2m超の補強コンクリートブロック造の塀では長さ3.4m以下ごとに高さの5分の以上の控え壁が必要となる。組積造の塀では、塀の長さ4m以下ごとに塀の厚さの1.5倍以上突出した控え壁が必要だ。

基礎の安全基準は、両者のブロック塀とも基礎があることが求められる。傾き・ひび割れの安全基準は、両者のブロック塀とも傾きやひび割れがないことがチェックポイントだ。なお、ブロック塀は、鉄筋が入っているかどうかは外部からはわ からない。つまり、そもそも補強コンクリートブロック造の塀なのか組積造の塀なのかということ自体がわからないということも多い。また、基礎に関しても有無を外部からは判別できないチェック項目だ。そのため、ブロック塀の安全性をチェックするには専門家に相談し、専門家に確認してもらうことが望ましいといえる。

ブロック塀には、「補強コンクリートブロック造の塀」と「組積造の塀」の2種類があるブロック塀等の点検のチェックポイント

国土交通省のこれまでの取り組み

国土交通省では、2018年6月に発生した大阪府北部地震の被害を踏まえ、以下の4つの取り組みを行ってきた。

・安全性のチェックを促すとともに、除却・改修について徹底的な普及啓発を実施
・耐震改修促進法の枠組みを活用し、建物本体と同様に耐震診断・改修を促進
・現行基準に適合しない塀の除却・改修について、防災・安全交付金等の基幹事業として支援
・パトロールや報告徴収等により違反を発見した場合には、地方公共団体において厳正に対処

国土交通省が率先して対策を取ってきたことで、今では全国の各自治体でブロック塀等の安全対策に対する補助制度の整備が進んできている。2022年4月1日時点では、全国の市区町村のうち、約50%の自治体が補助金制度を設置。特に宮城県や福井県、静岡県、愛媛県、福岡県では県内の100%の自治体が補助制度を整備しており、安全対策を行いやすくなっている。また、ブロック塀の施工者や製造者、販売者、設計者に対してもブロック塀等の安全性確保に向けた行動指針を通知し、安全確保に取り組むことを周知徹底している。さらに、施工業者向けのブロック塀のパンフレットも制作するなど、安全なブロック塀を建てる意識の醸成と施工方法の普及の啓蒙活動も行っている。

所有者向けチラシ(既存ブロック塀等のチェックポイント等)所有者向けチラシ(既存ブロック塀等のチェックポイント等)

東京都内の助成制度

東京都では、36の自治体でブロック塀に関する助成制度がある。ここでは、世田谷区のブロック塀等撤去工事助成事業の概要を紹介する。

【世田谷区ブロック塀等撤去工事助成金】
対象となるブロック塀
以下のすべての要件を満たす塀
・コンクリートブロック塀、鉄筋コンクリート組立塀(万年塀)、大谷石塀、その他組積造の構造の塀
・道路に面している塀
・道路面からの高さが80cmを超える塀
・安全性が確認できない塀
対象となる工事
以下の条件を満たす工事
・家屋の新築、増改築等(建築確認申請が必要なもの)および解体を伴わないもの
・地面よりも上部に存するブロック塀等の全部を取り除く工事であること
助成額
以下のいずれかのうち最も低い額
・撤去する塀の長さに5,000円(通学路沿いの場合8,000円)を掛けた額
・塀撤去に要した費用
・20万円

世田谷区のブロック塀等撤去工事助成事業の概要(出展:世田谷区ホームページ)世田谷区のブロック塀等撤去工事助成事業の概要(出展:世田谷区ホームページ)

ブロック塀に関する相談窓口

ブロック塀等の調査・点検、改修、撤去、撤去後の新設等にかかる費用について、自治体で支援制度が設けられている。

一般財団法人日本建築防災協会では、耐震支援ポータルサイトにて各自治体のブロック塀等の安全対策の連絡先を公開している。

耐震支援ポータルサイト(https://www.kenchiku-bosai.or.jp/seismic/block/)

また、ブロック塀は、そもそも外部からは鉄筋が入っているかどうかわからず、自力では適切な点検ができないことも多い。
以下のような団体がブロック塀に関する相談を受け付けているため、該当する相談内容に応じて相談することをおすすめしたい。

ブロック塀等の診断・施工に関する相談
(公社)日本エクステリア建設業協会(https://jpex.or.jp/)

ブロック塀等に使用するコンクリートブロックに関する相談
(一社)全国建築コンクリートブロック工業会(https://www.jcba-jp.com/)

ブロック塀等の診断・設計に関する相談
(公社)日本建築士会連合会(http://www.kenchikushikai.or.jp/about-our-society/sodanmadoguchi.html)

その他(住宅相談窓口/建築物耐震化関係)に関する相談
(公財)住宅リフォーム・紛争処理支援センター(http://www.chord.or.jp/index.php)

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