日常的な歩道がイベント会場に。 にぎわいを生む新しいストリートカルチャー

いつもは多くのビジネスマンが行き交う歩道。しかし、この期間ばかりは移動販売車やキッチンカーが立ち並び、カップルや家族連れがドリンクや軽食を片手に散歩を楽しむ…。2023年6月1、2、4日(開催時間11時~14時、4日のみ16時まで)に開催された「新虎ストリートマルシェ」は、新橋と虎ノ門を結ぶ新虎通り(環状2号線同区間)を会場としたイベントだ。4月27~29日に行われた第1回に続き、地域ににぎわいをもたらす契機となった。

出店は、コーヒー、オムライス、ハンバーガー、カレー、パスタ、タコライス、かき氷、クレープなど多彩な店が出店し、中には、お香の販売ワゴンや新虎通りの近くで創業した歴史を持つ永谷園のお茶漬け海苔の無料サンプル配布車なども。新橋や虎ノ門にゆかりのある老舗や新事業の店舗が軒を連ねて、来場者をもてなした。

さらに4日には親子で遊べる遊び場も設けられたほか、寄せ植えや文具のワークショップなども開催。老若男女を問わず、幅広い層に向けてバリエーションに富んだ企画が盛り込まれ、新しい形のストリートカルチャーとなる気配を感じさせた。

「新虎ストリートマルシェ」は、新橋と虎ノ門を結ぶ新虎通りを会場としたイベントだ。多彩なお店や新橋や虎ノ門にゆかりのある老舗や新事業の店舗が軒を連ねて来場者をもてなし、地域ににぎわいをもたらす契機となった。昼時の開催とあって、会場のキッチンカーには多くの来場者が立ち寄っていた

歩道をイベントの場として 柔軟に活用する「ほこみち制度」

このイベントの背景となっているのが、2020年に創設された「歩行者利便増進道路指定制度」、通称「ほこみち制度」だ。都道府県や市町村といった道路管理者が歩道に対して「歩行者利便増進道路」の指定を行うことで、歩行者空間を確保しながら、歩行者の利便増進を図る空間として「利便増進誘導区域」を定める。これにより、歩道についての既存の法的規制や規定が緩和され、歩行者が休めるようにテーブルやイスを配置したり、イベントを開催したりといった多様な道路空間の活用が可能となる、というものだ。

この動きを受けて東京都でも都道を都市の「ゆとり創出」の貴重な空間として活用するため、「ほこみち制度」を利用する取り組みに着手。その第1号として新虎通りが「ほこみち」に指定されたことを受け、「新虎ストリートマルシェ」が企画された。

主催は、港区芝地区総合支所と一般社団法人 新虎通りエリアマネジメントで組織する新虎通りエリアプラットフォーム協議会。新虎通りエリアマネジメントは、2014年3月に発足した団体で、清掃活動やオープンカフェの誘致、エリアビジョンの作成等に取り組んで、通りのにぎわいを創出することを目指してきた。

もともと新虎通り近辺は、江戸城に近く、徳川家に近い譜代大名の武家屋敷が多く集まっていた地域だ。その後、新橋駅周辺は銀座の延長として発展し、繁華街に。戦後は高度経済成長の波に乗り、ビジネス街として発展し、現在のように商業地と住宅地が同居する、複合的な機能を有するエリアとなった。

こうした背景をもとに、新虎通りエリアマネジメントは「多様な人々の交流と多彩なアクティビティがあふれる心躍るまち」を目指す。新虎通りの豊かな歩道空間や沿道空間を中心に、周辺の公園や広場空間などの公共的空間や民間施設を地域に開放し、居心地の良い居場所として展開することで、さまざまな人が立ち寄りやすく、多彩なアクティビティの受け皿として機能させるのだという。
そこで新たな交流が生まれ、地域の伝統や文化を広めたり、地域の未来につながるアイディアを育み、発信していく。そのような交流とエリアが常に生まれ続けていく地域となることをビジョンとして掲げている。

「新虎ストリートマルシェ」は、そうした取り組みのひとつの集大成でもあり、通過点でもある。「ほこみち制度」という追い風を受け、協議会では大いにモチベーションが高まっているという。

地域の内外の関係を再構成するマルシェ。 「みち」から街づくりが始まる

都市部においては、歩道と道路は、移動のためのスペースであると同時に、屋外における公共的なフリー空間でもある。誰もが立ち寄ることができ、腰を下ろせば集いの場にもなるし、地域に人を呼び込み、地域をひとつにつなぐ場にもなる。地域の内と外、両方に向けて新しい関係を築くためのキーになりうるのが「みち」だ。

古くは旧街道における街並みであったり、寺社の参道における縁日であったり、人と街は「みち」を通じて、結びつき、「場」を築いてきた。「ほこみち」制度はそれを現代的な形で新しく構築し、活気を盛り上げようという取り組みであるように感じられる。

旧来の伝統的な祭事は、地域の求心力を高めるイベントであったが、その一方、ややもすると部外者にとっては排他的に感じられる面をのぞかせることがあった。

しかし、「新虎ストリートマルシェ」では、地元の住民、企業、自治体を中心に、幅広く有志が集い、新虎通りという「場」に特別な意味と価値を根付かせていこうという姿勢が伝わってきた。そこには現代的なフラットな関係性のみがあり、多様な存在が共存する、これからの街のあり方が提示されているようにも思われた。

目まぐるしく変化を遂げていく虎ノ門・新橋エリア。しかし、そこには時代の波に適応しながら息づいている地域の文化もある。マルシェはその新旧の要素を取り持つ場のように感じられた目まぐるしく変化を遂げていく虎ノ門・新橋エリア。しかし、そこには時代の波に適応しながら息づいている地域の文化もある。マルシェはその新旧の要素を取り持つ場のように感じられた

日本の各地に広がる「ほこみち」。 地域の文化が醸成されるきっかけに

この「ほこみち制度」を活用しているのは東京都だけではない。2023年3月31日時点で、「ほこみち」を指定した道路管理者(地方公共団体、地方整備局)の数は40、指定された路線は109ヶ所にも及ぶ。

2022年11月11日には、「ほこみち」の普及や発展に携わる人たちが参加した「ほこみちインスパイアフォーラム」も大阪市で開催。全国各地における「ほこみち」活動の取り組みの発表や意見交換が行われた。全国に芽吹いた「ほこみち」を巡る各地の取り組みは日を追うごとに加速している。

4月、6月と好評を博した「新虎ストリートマルシェ」も、次回は秋ごろに3回目の開催を目指して準備中だ。筆者も4月の開催時に足を運んだが、歩道部分が広いため、一般的なお祭りの縁日のような雑踏はなく、お店の人と会話を楽しむ余裕もあった。通り過ぎるだけの道ではなく、「居場所」として定着する可能性は十分に感じられた。

新虎通りエリアマネジメント事務局の海藤早希子さんは「今後も近隣の皆様を中心に愛されるイベントにしていきたい。マルシェをきっかけに気軽に足を運んでもらえるような取り組みを企画していきます」と意気が上がる。回を重ねるごとにその経験を生かして新たなアイディアが生まれているという。新虎通りならではの盛り上がりが期待できそうだ。

会場では子どもたちが遊べるコーナーも用意された。大人も子どもも遊べるイベントとなった。写真は6月開催時の様子会場では子どもたちが遊べるコーナーも用意された。大人も子どもも遊べるイベントとなった。写真は6月開催時の様子
会場では子どもたちが遊べるコーナーも用意された。大人も子どもも遊べるイベントとなった。写真は6月開催時の様子キッチンカーのほか、花やお香の移動販売車も出店。幅広い業種の店が参加できるイベントだ

公開日:

ホームズ君

LIFULL HOME'Sで
住まいの情報を探す

賃貸物件を探す
マンションを探す
一戸建てを探す