全国の地価公示の動向
2023年の地価公示は、全国平均で、全用途および住宅地、商業地がいずれも2年連続で上昇し、工業地は7年連続で上昇している。都市部を中心に地価上昇が継続しており、上昇範囲も地方部に広がっている。上昇は平面的な範囲が広がっただけでなく、上昇率も昨年より拡大した結果となった。
全国的な視点で見ると、特に地方四市(札幌市、仙台市、広島市、福岡市)の上昇が著しい。2023年の全国の全用途平均の上昇率は+1.6%であるが、地方四市は+8.5%にもなっている。地方四市の上昇率は、住宅地が+8.6%、商業地が+8.1%、工業地が+9.6% となっており、工業地の上昇率が高い点が特徴である。地方四市の中では、特に札幌市と福岡市の躍進が目立っており、札幌市の住宅地は+15.0%、福岡市の商業地は+10.6% と1割以上の上昇率を含む都市が含まれている。
一方で、三大都市圏の動きを見ると、住宅地は東京圏が+2.1%、大阪圏が+0.7%、名古屋圏が+2.3%の上昇となっている。商業地の上昇率は、東京圏が+3.0%、大阪圏が+2.3%、名古屋圏が+3.4%である。工業地の上昇率は、東京圏が+5.0%、大阪圏が+4.0%、名古屋圏が+3.3%という結果であった。
名古屋圏は地方四市の上昇率には及ばないものの、住宅地と商業地に関しては東京圏と大阪圏を上回る結果となっている。名古屋圏はオフィス用地とマンション用地が競合しやすく、商業地の中でもマンション用地の需要が高まることで、住宅地も商業地も上昇する相乗効果が生まれている。
名古屋の地価公示の特徴的な動き
名古屋圏の地価の特徴的な動きとしては、三大都市圏の中で商業地の上昇率が最も高い点である。商業地の上昇率は三大都市圏の平均で+2.9%、東京圏は+3.0%、大阪圏は+2.3%である。名古屋圏は+3.4% となっており、名古屋圏の上昇率の高いことがわかる。
都市圏ではなく、もう少し狭い範囲で見ても同様の結果となっている。商業地の上昇率は、名古屋市は+5.0%(前年は+3.2%) 、東京都23区は+3.6%(前年は+0.7%) 、大阪市は+3.3%(前年は▲1.1%) である。名古屋市の商業地は、今年だけが特に高いわけではなく、昨年から既に東京23区や大阪市を上回っている。
名古屋の商業地の上昇率が高いのは、東京圏や大阪圏と比べると地価上昇要因が異なるためである。1つの特徴として、名古屋はもともとインバウンド需要による地価上昇があまり見られなかった点が挙げられる。
新型コロナウイルスの影響が出る直前の2020年(実質的に2019年の値動きを反映したものとなる)の地価公示を見ると、名古屋圏の商業地の上昇率は+4.1%となっている。一方で、2020年の商業地における上昇率は東京圏が+5.2%、大阪圏が+6.9% となっており、東京圏や大阪圏の方が高い状態であった。当時は東京圏や大阪圏では、インバウンド需要によりホテル用地の取得合戦が繰り広げられたことから、商業地の地価が上昇する現象が見られた。名古屋圏ではそこまでインバウンド需要が高くなかったため、当時は商業地の上昇率が東京圏や大阪圏よりも低くなっていたのである。
インバウンド需要は回復傾向にはあるものの、まだ東京圏や大阪圏の地価を力強く上昇させるほどの回復には至っていない。名古屋圏はもともとインバウンドへの依存度が低かったことが功を奏して、早々に商業地の地価が回復し始めている。
また、名古屋は商業地がマンション用地と競合しやすい点も特徴となっている。マンション用地の需要は地価が高過ぎると分譲価格が高くなって売れなくなるため、地価が極めて高い地域では需要が発生しにくいという傾向がある。例えば、東京の銀座や丸の内にマンションが乱立しないのは、地価が高過ぎることが主な原因として挙げられる。
名古屋の場合、商業地の地価がマンション用地の需要を排除するほど高くはないことから、商業地にオフィスビルとマンションの競合が発生しやすい。全国的に都市部ではマンション人気が高まっており、近年は利便性の高い立地においてマンションの底堅い需要が生まれている。
実は東京23区内においても、荒川区や北区といったマンション需要と競合する商業地においては、23区の平均上昇率よりも高い上昇率を示している。2023年の地価公示では、マンション用地と競合する商業地の上昇率が総じて高いという全国的な現象が生じており、名古屋の商業地もその一つとなっている。
名古屋の商業地はインバウンド需要の依存度が低いことと、マンション用地との競合が発生しやすいことから、東京圏や大阪圏よりも高い上昇率を示すに至っているのだ。
住宅地の状況と値動きの背景
名古屋市の住宅地の上昇率は+3.7%であり、前年の+2.2%よりも上昇率が拡大している。
上昇は全16区で生じており、上昇率が高い順から中区+11.1%、東区+6.5%、南区+5.8%、熱田区+5.7%、瑞穂区+4.0% となっている。
名古屋の住宅地では、「名古屋東-8」(名古屋市東区泉1丁目502番)の上昇率が最も高く、+18.2%(前年は15.8%)という高い上昇率を記録している。「名古屋東-8」は、名古屋市都心にありながら閑静な住環境が得られ、マンション用地としての需要の強さを理由に力強く上昇している。また、名古屋市内の住宅地は既に高くなっており、名古屋市内と比較して相対的に割安感のある周辺でも高い上昇率を示す地点が広がっている。例えば、東海市にある「東海-11」(東海市大田町後田141番3)の上昇率は+13.6%となっており、1割以上も地価が上がっている状況にある。
その他、安城市では自動車関連産業の業績が概ね順調に推移し、住宅需要も堅調となっていることから「安城-7」(安城市御幸本町503番3)のように+10.3% の上昇を示している地点も見られる。
商業地の状況と値動きの背景
名古屋市の商業地の上昇率は+5.0%であり、前年の+3.2%よりも上昇率が拡大している。全16区ですべて上昇しており、上昇率が高い順から東区+6.4%、千種区+6.2%、中区+5.8%、中村区+5.5%、熱田区+5.0% となっている。
名古屋の商業地で最も高い上昇率を示したのは「名古屋東5-1」(名古屋市東区泉1丁目1317番)であり、その上昇率は+13.8%(前年は+11.8%) となっている。「名古屋東5-1」は名古屋市都心の久屋大通に面し、店舗と事務所、マンション用地の需要が競合する地域であり、10%超の上昇率が継続している。
工業地の状況と値動きの背景
名古屋圏の工業地の上昇率は、2022年は全国平均+2.0%よりも低く+1.6%であったが、2023年は全国平均+3.1%よりも高く+3.3% となっている。
工業地に関しては、インターネット通販市場の拡大を背景に全国で物流適地の地価上昇が継続している。物流適地とは、都市部に近く、高速道路のインターチェンジや幹線道路へのアクセスが良く、大規模倉庫の建築が可能な大きな敷地が確保できる地域である。名古屋の工業地では大型倉庫が存在する「名古屋9-5」(名古屋市港区河口町205番外)の上昇率が最も高く、+16.0%も上昇している。
今後の動向
名古屋の地価上昇は、主にマンション用地需要という実需によって支えられている点が大きな特徴である。全国の上昇ポイントの中には、期待感というあいまいな要素によって地価上昇が生じている地点もあるが、名古屋の多くの地価上昇は確固たる実需によってもたらされている。マンション購入という個人の需要は、比較的景気にも左右されにくい側面がある。
近年の住宅需要は、低金利環境の継続と住宅取得支援策等による国の施策の下支えによって喚起されている部分が大きい。2023年4月には日銀の総裁が交代するが、新しい総裁も今のところ低金利政策を推し進める考えを示しており、金利が急に上昇することは考えにくい。また、一部に米欧各国の利上げ長期化による景気後退の影響を懸念する声もあるが、個人のマンション購入需要は外部的な要因の影響を受けにくい性質がある。海外投資家が引き上げることで投資物件等には影響があるかもしれないが、個人の実需に影響が及ぶには時間がかかるものと思料される。
よって、今のところ名古屋の地価上昇を阻害する要因は少なく、名古屋の地価は今年も上昇が続いていくのかもしれない。
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