エイトデザインと「BinO(ビーノ)」が手掛ける遊べる住宅展示場
住宅展示場といえば、さまざまなハウスメーカーのモデルハウスがずらりと並んでいる場所というイメージがある。2022年9月に愛知県豊田市にできた「MATSURIBA(まつりば)」は、そんな既存のイメージとはちょっと違う変わった住宅展示場だ。
場所は東名高速道路「豊田」ICより東に約10km、トヨタ自動車本社工場の東側に位置する。550坪ほどの敷地内には2棟のモデルハウスと、8台のトレーラーショップに、芝生エリアとドッグテラスが広がる。
運営するのは、名古屋を中心に建築デザイン・設計・施工を手掛けるエイトデザイン株式会社と住宅ブランド「BinO(ビーノ)」。
「『楽しむ』をデザインしよう!」というエイトデザインと「自遊に、くらす」をコンセプトに掲げる「BinO」。楽しむことをモットーとする2社の協働でスタートした「MATSURIBA」とは、どんな住宅展示場なのか―。
コンセプトは“遊べる・つながる・みんなでつくる住宅展示場”。「MATSURIBA」というネーミングの通り、地元に昔から根付いている祭りをイメージしている。
エイトデザインのチーフアドバイザー・松村亮平さんは、
「僕らがつくろうと思っているのは、住宅展示場というよりいつでも遊びに来れる場所。日常的に遊びにきて僕らのファンになってもらいたいと思っています」と話す。
さらに、昨今の住宅展示場の状況をこう話す。
「そもそも住宅展示場は、家の購入を検討している人以外は必要のない場所で、来場者が限定的。たくさんの家を一度に比較できるのがメリットですが、今はある程度インターネットで情報の絞り込みができる時代です。どのハウスメーカーも高性能をうたっていて差別化が難しく、付加価値がないと売れないというのが現状だと思います。そんな時代に僕らは何をどうやってアピールしていくのか、ということを考えました」
松村さんたちがたどり着いたのは「生活のなかでの居場所になる」という考え。誰かの生活のに溶け込んだ存在でありたいという想いが「MATSURIBA」のバックボーンとなった。
住宅に興味のない人も気軽に足を運べる「ENNICHI(縁日)」を開催
住宅展示場に用のない人にも足を運んでもらうための仕掛けとして考えられたのが「ENNICHI(縁日)」の開催だ。
バスタブに浮かんだヨーヨーを釣り上げる「バスタブヨーヨー」、的にボールを当てる「ストラック・ザ・アウト」など、お祭り感満載のゲームが用意されている。縁日の内容は、エイトデザインの20名のインターンがオンラインミーティングで提案したものを採用。ゲームの装置には廃材をリサイクルし、DIYで作られているのも特徴的だ。
現在のところ定休日の水曜以外は縁日を開催。それ以外には不定期でイベントも開催していく予定とのこと。
「僕らがイベントをやるだけじゃなくて、地域に住む人たちにも気軽に使ってもらえる場所にしたい」と松村さんは話す。遊びにくる人自身がプレイヤーとなってこの場所を動かしていくことも目的のひとつと考えている。
モデルハウスはレンタルスペースとして活用。スタートアップの支援をする場所に
敷地内に展示されているモデルハウスは「COVACO」と「ALLen」の2棟。いつでも開放されており、自由に見学することが可能だ。
また、この2棟はレンタルスペースとしても活用されている。例えば、写真家による写真の撮り方・アルバムの作り方のレッスン、バランスボールのワークショップや、ハンドメイド作家が定期的にポップアップショップを開いたり、モデルハウスをアトリエとして定期的に使う人もいるとのこと。現在のところ使用料は1日1,000円(平日)となっているが、支払いと同時に「MATSURIBA」内で使用できる金券が1,000円分もらえるため、実質費用はゼロである。
松村さんいわく「飲食関係やハンドメイド作家さんでお店をやってみたい人はたくさんいると思うのですが、いきなりお店を構えるのはハードルが高いですよね。そういう方のスタートアップを応援する場所として、『MATSURIBA』が機能していけばいいなと思います。まずはやりたいことを負担なくやれる環境を作っていきたい」とのことだ。
オリジナル家具製作の「ハチカグ」、観葉植物などのコーディネートを手掛ける「ハチグリーン」などによるライフスタイル提案から、「ハチカフェ」といった飲食店もグループにもつエイトデザイン。店舗デザインやまちづくりも得意分野だ。
「場所だけ貸すということではなく、何かを始める人たちにとってアドバイザー的な存在になれたら嬉しい」と松村さん。いずれお店を構えたいという人や、イベントを大きくしていきたいという人たちにとって、デザインから施工、まちづくりの企画までできるプロが一緒に伴走してくれるとなれば心強い存在となりそうだ。
価値観を好きになってもらうことが重要
とはいえ、住宅展示場だ。家を売るための手段は何かあるのだろうか。
「まずは、日常的に使える場所になって、この場所が好き!とファンになってくれたらいいと思っています。好きな会社やブランドがつくったものってだいたい好きですよね(笑)。だから僕らの価値観を好きになってもらうというのが一番大切なこと。『MATSURIBA』は、そういった僕らの価値観をしっかりと発信できる場所でもあるんです。そして、この場所を好きになってくれた人が家を買おうかなと考えたとき、一番に浮かぶのが僕らであったらうれしい」と微笑む。
家づくりのスタート時に気づけばポールポジションにいる、といったイメージだろうか。
受付となるセンターハウスを抜けて右手に抜けると芝生エリアに出る。冬場はこたつが用意されていて、屋外のテントの下でこたつに入って語らう、というなかなかおもしろいシチュエーションが楽しめる。芝生エリアの周囲には、8つのトレーラーショップが並んでおり、食事やスイーツ、コーヒー、雑貨などを販売。大人も子どもも好きなものを食べて好きなように遊ぶ、自由度の高い楽しみ方ができる場所となっている。
無料でレンタルできるラグやイス、クッションなどを持ち込んでピクニック気分を満喫することもできる。こんな使い方をしていると住宅展示場だということをすっかり忘れてしまいそうだ。
これが松村さんたちの狙い。冒頭で紹介した「生活のなかでの居場所になる」ということなのだろう。
アートが点在する空間、移動可能なトレーラーショップなど暮らしやまちづくりへの貢献も期待される
センターハウスのウォールアート。エイトデザイングループとして2022年11月安城市にアートギャラリー「EIGHT ART HOUSE」がオープン。同ギャラリーの関連アーティストが敷地内のアートを手掛ける
「MATSURIBA」がエイトデザインと「BinO」の価値観を示すフィールドだとすると、もう1つ特徴的なことがある。
アートだ。
センターハウスにはスペイン出身愛知県在住の画家、パブロ・メサ・ペニャルベル氏によるウォールアートが、トレーラーショップの背面には名古屋市出身のNaQstoeru.m.j.k氏のペインティングが施され、心躍る空間となっている。敷地内の至るところにアートオブジェが展示されているのもおもしろい。
「アートは暮らしやまちづくりにとって重要な要素です。ただ見るだけでなく、今後は子どもも参加できるアートとか教育のコンテンツもおもしろいと思っています。子ども連れで親と子どもがお互いに楽しめる。地元のプレイヤーさんと共同でそういった企画を展開していけたら」と、松村さんは今後の展望を語ってくれた。
ちなみに、この場所は市街化調整区域。店舗などの建物を建てるには厳しい条件があるためトレーラーショップという形をとっている。ここには2023年2月3日にローンチされた「EIGHT TRAILER」が使用されている。移動可能なトレーラーは店舗、ホテル、遊休地活用にも利用できるとあっていま注目のアイテムだ。今後「MATSURIBA」は、こうした調整区域活性化のモデルケースとしても機能させていく予定だという。
「MATSURIBA」を拠点に、どんな暮らしやまちづくりが進んでいくのだろう。遊びに来ているうちに、家づくりに興味がわいて購入を検討しだす人もいると思う。日常使いできる住宅展示場としての形が定着すれば、住宅展示場の新たな形として注目を集めそうだ。
【取材協力・画像提供】
「MATSURIBA」 https://matsuriba.jp/
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