豪邸好きな名古屋人の好みに逆行?!「小さな家」ばかりを集めた住宅展示場
名古屋市中心街から車で約30分。閑静な邸宅街として知られる名古屋市緑区徳重に、ちょっと変わった住宅展示場がある。1邸あたりの延床面積は10m2未満。畳数に換算すると約6畳にも満たない小さな家=タイニーハウスばかりを集めた『ニッカ タイニーズパーク』だ。
筆者自身も名古屋市郊外の出身のため、東海地方の住宅事情については子どもの頃から実体験してきたが、名古屋人特有の気質もあって、このエリアでは「屋根の勾配が緩いこと※屋根の勾配が緩いほど立派な家の証となる」「玄関の間口が広いこと」など、とにかく“見栄えの良い大きな家”が好まれる傾向にある。
しかし、そんな名古屋人の住まい志向の真逆を行く「小さな家の住宅展示場」がいま賑わっていると聞いて少々驚いた。一体どのような需要があるのか?『ニッカ タイニーズパーク』の運営を行うニッカ不動産 新築事業部の奥園丈博さんにお話を聞いた。
リフォーム相談を受ける中で「狭小独立スペース」の需要拡大を予感
▲外観から想像するよりもかなり広く感じるタイニーハウスの内部。要望があればトイレ・キッチンなど水まわり設備の追加も可能だ。「自宅で美容院やエステサロンを開きたいといった個人事業主の方からのお問い合わせが増えています。タイニーハウスなら自宅敷地内に職場を作りながら、家族のプライバシーと切り離すことができます」「最近は“タイニーハウス”という言葉が定着してきましたが、実は本来の定義では住宅ではなく『小屋・物置き』に分類されます。
延床面積10m2未満の建物は、用途地域の指定が無い限り基本的に建築確認申請は不要※1。土地の建ぺい率の範囲内であれば簡単に建てることができます。その小さな建物に、デザイン性や機能性をプラスしたのが当社のタイニーハウスです」(以下、「」内は奥園さん談)
『ニッカ タイニーズパーク』が誕生したのは2020年新春。当時はまだコロナ禍に突入する前だったが、「これからは働き方が多様化していく時代。今後個人事業主や在宅ワーカーが増えれば、小さな独立空間の需要が高まるはず…」と、同社代表がタイニーハウス専門の展示場を発案したことがきっかけだったという。まるでその後訪れる世界的なパンデミックを予見したかのようだ。
「これまでリフォームを専門に行ってきた当社が注文住宅の受注を始めるにあたり、“普通のモデルハウスではなく、ちょっとひねりを利かせて他社がやらないようなニッカらしい展示場を作りたい”と考えたこともタイニーハウスに特化した理由です。
狭小の独立スペースの必要性に関しては、住まいのリフォーム相談を受ける中で、これからニーズが拡大していきそうな予感はありましたが、まだテレワークという働き方が定着する前でしたから、いま考えると代表には先見の明があったと思います」
中には「屋根と外壁だけ作ってほしい」という意外なオーダーも
タイニーズパークの開業は、地元不動産業界でも注目を集めたが、オープン直後にコロナ禍へ突入。その後1年間はほとんど反響の無い状態が続いていたという。しかし、コロナ禍2年目から急激に問い合わせ件数が増え、その後累計20棟を受注したというからすごい巻き返しだ。
「お施主様の世代は幅広く、30代から60代ぐらいまで。皆さん最初はふらりと立ち寄る感じでパークを見学されますが、実際にモデルハウスの中へ入ってみると“意外と広いね”とか“こういう空間が欲しかった”と好意的な感想を述べてくださる方が多いですね。
主なニーズとしてはテレワーク用のワークスペースがメインですが、他にも、手芸や絵画などの趣味のスペースを作りたいという方や、大切な自転車を保管するためのチューンナップスペースとして使われる方、自宅でサロンを開くための店舗用建物として建てられる方、農園の片隅に事務所として設置する方など、様々な用途のご要望をいただいております。
想定外だったのは“屋根と外壁だけ作ってほしい”というご要望が意外に多かったことですね。よくよくお話を聞いてみると“内側は自分の手で仕上げたい”とのことで、DIYの趣味を兼ねて住まいづくりにチャレンジする方もいらっしゃるようです」
2畳サイズで本体価格は約120万円から、工期は最短1週間で完成
▲こちらは約2畳の最も小さなプランだが、高さ3mの天井高のおかげで空間が広く感じられる。「壁断熱は行っていませんが、お客様からご要望があれば断熱性能を高めることもできます。電気配線は母屋から引き込みます」気になるのは価格帯だが、2畳程度のいちばん小さなサイズで約120万円、6畳程度の大きなサイズで約200万円。
躯体はすべて2×4工法となっており、窓の複層ガラスサッシが標準装備されている。一般住宅とは異なり、事前の建築確認申請が不要(※1)となるため、工期は1週間~2週間程度と短期間で完成する点もタイニーハウスのメリットだ。
「外壁は基本的にサイディングとなりますが、中には“カリフォルニアスタイルの家に憧れていたから”と、木材の鎧張りで塗装仕上げを希望される方や、ログハウス風の外観を希望される方もいらっしゃいます。
一般の注文住宅で鎧張りにしようとするとかなり費用がかかってしまいますが、小さな家なら予算を抑えることができますから“本宅では叶えられなかった夢を実現したい”と、庭先や駐車場の隅にタイニーハウスを建てる方も多いですね」
設置方法や使用用途によっては、固定資産税が発生するケースも
なお、延床面積10m2未満のタイニーハウスに関しては現在のところ法令が定められておらず、断熱や耐震性能に関しても明確な基準は無い状態だが、「今後タイニーハウス需要が拡大すると、いずれ何らかの法規制が定められる可能性はある」と奥園さん。
また、「小屋」の場合は資産評価額が20万円未満とみなされれば固定資産税は発生しないが、タイニーハウスの場合、設置方法や使用用途によっては「建築物」とみなされ、固定資産税が発生するケースがあるため注意が必要だ。
「当社ではこのコロナ禍の追い風を好機と捉え、今後は中部地区に30店舗あるショールームでタイニーハウスの展示数を増やしていきたいと考えています。タイニーハウスという小さな家の存在をもっと多くの方に知ってもらい、“本宅にプラスして小さな家を持つ”という新しい暮らし方を選択する方が増えていったら嬉しいですね」
大きな可能性を秘めた約6畳未満の小さな家──近い将来、日本の住宅街ではお洒落なタイニーハウスの建物があちこちで見られるようになるかもしれない。
■取材協力/ニッカタイニーズパーク
https://nikka-tinyspark.com/
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