北総線とは

北総鉄道北総鉄道

北総線とは、松戸市や市川市、鎌ケ谷市、船橋市、印西市といった千葉県の北部を東西に走る私鉄のことである。駅名でいうと、東京都葛飾区の京成高砂駅から千葉県印西市の印旛日本医大駅までを結ぶ路線を北総線と呼ぶ。

北総線を運営している北総鉄道株式会社は、千葉県の私鉄大手である京成電鉄株式会社のグループ会社にあたる。そのため、北総線は広い意味で京成電鉄の一つの路線ということになる。北総線といってもピンと来ない人も多いかもしれないが、成田空港まで行く京成スカイライナーといえばわかる人も多いかもしれない。

スカイライナーとは、成田空港と日暮里を最速36分でつなぐ京成の急行列車のことである。
最高時速は160kmであり、新幹線以外では日本最高速の電車となっている。スカイライナーはテレビコマーシャルも行っており、成田空港から出ているため利用者も多く、知名度も高い。スカイライナーは成田空港線(成田スカイアクセス線)と呼ばれる路線であるが、そのほとんどを北総線の上を走っている。

成田空港線とは、東京都葛飾区の京成高砂駅から千葉県成田市の成田空港駅までの間の路線を指す。2010年に北総線の印旛日本医大駅から成田空港駅まで東に延伸して完成した路線が成田空港線ということになる。

印旛日本医大駅から成田空港駅までは新しい規格でできた路線であり、スカイライナーはこの間で時速160kmを出すことができる。北総線の路線を使っている印旛日本医大駅までの区間は、最高時速が130kmとなっている。

北総鉄道京成スカイライナー。新幹線を除く列車では、日本最速の時速160キロ

北総線の歴史

千葉ニュータウン中央駅千葉ニュータウン中央駅

北総線の歴史は古く、1979年に北初富駅と小室駅を結ぶ路線が開通している (現在は北総線に北初富駅はない) 。この地域に鉄道が開通されたのは、千葉ニュータウンの存在が影響している。

千葉ニュータウンとは、白井市、船橋市、印西市の3市にまたがる大規模造成団地のことであり、首都圏では多摩ニュータウンと港北ニュータウンに次ぐ広さの街だ。1966年に打ち出された当初計画では、計画人口は34万人という予定となっていた。1970年から造成工事が着手され、その後、UR都市機構(当時は住宅開発公団)も事業に参画していた時期もある。団地造成によって人口が増える見込みであったことから、1979年に北初富駅から小室駅間で北総線が開通している。1984年には小室駅から千葉ニュータウン中央駅、1991年には京成高砂駅から新鎌ヶ谷駅、1995年には千葉ニュータウン中央駅から印西牧の原駅、2000年には印西牧の原駅から印旛日本医大駅が開通して北総線の完成に至る。その後、2010年に印旛日本医大駅から成田空港駅が完成してスカイライナーが走ることになる。

千葉ニュータウン中央駅千葉ニュータウン中央駅付近

ちなみに北総線の運営会社である北総鉄道は2004年まで北総開発鉄道という社名であった。旧社名の「開発」には千葉ニュータウンの開発の意味が含まれていたとされており、千葉ニュータウンと北総線は切っても切れない関係にあるのだ。千葉ニュータウンはオイルショックやバブル経済の崩壊、少子化等の影響もあり、当初の計画人口を大幅に下方修正し、2022年10月時点での計画人口は14万3,300人となっている。千葉県によると実績は2022年10月時点で10万5,561人であり、達成率は約73.7%ということになる。

千葉ニュータウン事業
https://www.pref.chiba.lg.jp/kigyou/nt/jigyougaiyou.html#a03

また、北総線は幻の新幹線といわれる成田新幹線とも少し関係している。成田新幹線とは、東京駅と成田空港を結ぶはずの予定であった新幹線のことである。千葉県は新幹線の通っていない県であるが、もし成田新幹線が実現されていれば千葉県にも新幹線が通るはずであった。しかしながら、当時は激しい反対運動があり、用地買収が進まなかったことから計画は中断され、実現されないままの幻で終わっている。当時、成田新幹線の計画では、停車駅は東京駅と千葉ニュータウン駅(仮称)、成田空港駅(仮称)の3つが予定されていた。このうち、千葉ニュータウン駅は、現在の北総線の千葉ニュータウン中央駅とほぼ同じ位置の計画であったとされている。

新幹線は実現こそしなかったものの、その後はスカイライナーという姿に形を変え、都心と成田空港を高速でつなぐ路線としても利用されている。

運賃値下げに至った背景

北総鉄道北総線の印西牧の原駅北総鉄道北総線の印西牧の原駅

北総線は、2022年10月1日より値下げを実施している。通学定期運賃に関しては、最大▲64.7%の大幅値下げとなっている。例えば京成高砂駅から印西牧の原駅の6ヶ月定期は、従来80,950円だったものが26,950円となる。

また、初乗り運賃に関しては210円を190円に値下げしている。中間距離帯の普通運賃も最大100円(ICカードは105円)の値下げを行っている。例えば新鎌ヶ谷駅から千葉ニュータウン中央駅においては、従来580円(ICカードは580円)だったものが480円(ICカードは475円)となっている。

北総線は運賃が高額であることが広く知られており、以前より白井市や千葉県などの自治体が値下げを要望してきた経緯がある。北総鉄道としては、これまでの経営努力の結果、累積損失解消に一定に目途が立ったとし、2022年の創立50周年を機に値下げを実施する運びとなった。ポストコロナにおける輸送動向や沿線の将来展望、利用者の声や沿線自治体のまちづくり施策との整合性といったことも総合的に勘案されているようだ。北総線は今までは運賃が高過ぎるというネガティブな話題が多かったが、今回の値下げはさまざまなメディアでポジティブな話題として取り上げられた。

自治体との連携

北総線は北総線沿線地域活性化協議会という組織によって周辺自治体とも連携している。北総線沿線地域活性化協議会のメンバーは、市川市と船橋市、松戸市、鎌ケ谷市、印西市、白井市、千葉県、北総鉄道株式会社である。

北総線沿線地域活性化協議会では、2022年10月1日の値下げに合わせ、沿線地域の活性を目的として「北総線沿線活性化トレイン」の運行を実施している。7500形車両1編成を利用し、地域の魅力発信に資するオリジナル広告を行なっている。実施期間は2022年8月31日から2023年2月末日までの約半年間だ。広告は、車体外板へのラッピングや車内広告スペースに掲出される。

北総線は京成線や都営地下鉄浅草線、京浜急行線に相互乗り入れしているため、広告の影響は広範囲に及ぶ。北総線沿線地域活性化協議会としては、これらの活動を通じて沿線地域の知名度向上や若い世代の北総線沿線への居住促進につなげることを期待している。

街への影響

北総線の値下げの影響が直接どのような影響を及ぼしていくかは確証を持てないが、恐らくプラスの影響を生み出していくものと思われる。「北総鉄道50年史」のP175によると、北総鉄道の利用者は2019年まで堅調に増加している。2020年に利用者が急激に落ちてしまったが、原因は恐らく新型コロナウイルスと思われる。

https://www.hokuso-railway.co.jp/digitalbook/50th/#page=177

値下げを実施する前から利用者は順調に伸びていたことから、値下げをしなくても相応の利用者は獲得できていたようだ。むしろ、これからは新型コロナウイルスによって失ってしまった利用者を値下げ効果でどこまで回復できるかが課題といえる。値下げ前から北総線の利用者が堅調に伸びてきたのは、千葉ニュータウンの中心地である印西市の住宅地としての人気の高さが大きいといえる。

印西市は、大手新聞社が行っている「住みよさランキング」で2012年から2018年の7年間において連続で全国1位となっており、人気の住宅地として知名度を上げてきた。人口も2022年10月末時点で10万9,442人となっており、増加傾向を維持している。印西市は千葉ニュータウンとして開発されてきたこともあり、区画が整備され、大型商業施設も計画的に配置されているなど、確かに住みやすい街となっている。従来は千葉ニュータウンに住むには北総線の運賃の高さが一つのネックとされていたが、値下げによって千葉ニュータウンを選ばない理由が一つ解消されたといえる。

北総線エリアは運賃の値下げ前から人口が増えていた地域であるため、値下げが行われたことで魅力はさらに高まっていくことが期待される。

千葉ニュータウン中央駅前千葉ニュータウン中央駅前