日本の道路にもっと賑わいを! 全国に広がるほこみち制度
「世界で最も美しい通り」と呼ばれるフランス・シャンゼリゼ通り。並木道が続く大通りの両脇に広がる歩道は、テラス席でコーヒーを楽しむ人たちや、買い物に精を出す観光客で賑わうことで有名だ。2030年までには4車線から2車線への車線数の減数やさらなる緑化計画も進んでいるという。このシャンゼリゼ通りのように賑わい、街の魅力となるような道路が、日本各地に見られるようになってきている。
「ほこみち(歩行者利便増進道路)制度」をご存じだろうか?2020年に国土交通省により制定された、賑わいのある道路空間を構築するための道路の指定制度である。例えば、この制度を活用すれば、幅の広い歩道にオープンカフェを開いたりベンチなどを置くことができるなど、道路を「通行」以外の目的で利用しやすくなるのだ。
2021年2月に初めてほこみち指定を受けたのが、大阪市・御堂筋、神戸市・三宮中央通り、姫路市・大手前通りだ。それ以降もこの制度を活用して、道路空間に新たな賑わいを生み出している行政や民間企業の実践者が増えている。具体的には全国では31の自治体などで特例が導入され、82路線が指定されている(※1)。
ほこみち制度の認知をもっと広げて、地域に新しい風を起こしてほしい、そんな思いから始まった「ほこみち インスパイア フォーラム 2022」が、2022年11月11日大阪で開催された。会場に集まったのは、約250名。 各地でのほこみちの取組み事例や、変わりゆく道路空間の変化が紹介された。
(※1)国土交通省 2022.8月末
民間企業も行政も、手を取り合って進める街づくりの事例
「道は、もはや車が通るだけの空間ではない。広がりを見せるほこみち制度を活用して道路関係者と共に、街づくりをしていきたい」と話すのは、国土交通省 道路局の嶋田博文さん。ほこみち制度を活用するメリットは3つある。ほこみち制度が指定された場所には、歩行者のためになるモノを歩道におくことができるようになること、道路の占用者を公募して、その中からより良い提案を選定することができること、そして道路の維持管理の協力を行う場合は、占用料が減額(※2)されること、だ。
地域によって、道路事情も異なる。フォーラム内では民間や行政が登壇し、ほこみち空間を生かした、6つの個性あふれる街づくり事例が紹介された。
初めてほこみち指定を受けた路線の一つである兵庫県姫路市の大手前通りは、JR姫路駅と世界遺産『姫路城』を一直線に結ぶ姫路のメインストリート。民間企業として登壇した梶原伸介さん(建築家・コガネブリューワリー)は、2019年から5年間の公民連携プロジェクトである「大手前通りエリア魅力向上推進事業」に参画。道路に櫓を作ったり、近隣大学の学生とのストリートファニチャーを制作したりという2019年、2020年の社会実験の実施を経た後、プレイヤーとして大手前通り沿いにクラフトビール店をオープンさせた(※3)。
「テラス席で常連の人がビールを片手に、道ゆく人と会話する風景が大手前通りに生まれています。大手前通りというメディアを通して、土地の豊かさを知ってもらい、売上げを地域に還元したい」と話した。
(※2)国道の場合、90%減額
(※3)2022年11月現在、仮オープン中
ウォーカブルシティやモビリティなど、新しい視点も
新しい街づくりのトレンドでもある「ウォーカブルシティ」にも触れ、海外や東京・丸の内の事例が紹介された。ウォーカブルシティとは、歩行者のニーズに配慮して設計された歩きやすい都市のこと。バスなど公共交通機関の利用を含め、自動車を使用せずに歩いて移動できる街を目指そうというものだ。車社会であるアメリカが発祥で、脱炭素という地球環境への配慮だけでなく、さまざまな商業活動やコミュニティの創出も目的とされている。
「ウォーカブルは都市全体を、ほこみち制度は道路をみています。歩きやすいということだけではなく、通過するだけの空間に人が滞留できることで街に賑わいを生むこともウォーカブルシティの目的の一つ。ほこみち制度とも、目指す方向は同じです。ハード整備だけを目的にせず、常に人への意識を持つことを忘れずに進めたい」と国土交通省 都市局の松岡里奈さんは話した。
また、道路における移動性や流動性に着目するのがモビリティだ。時速5kmの自動走行モビリティ「iino」の紹介もされた。「時速5kmとは、早歩きくらいの速度。ぴょんと乗ってぴょんと降りられる、フィリピンのジプニーやターレットトラックに近いものです。この速度で街を見ると、普段と見え方が変わる。便利以外の価値があるかもしれない」と話すのは、iino開発者であるゲキダンイイノ座長の嶋田悠介さん。移動が変われば、新しい行動が生まれる。賑わいのなかった場所に賑わいが生まれ、歩行者空間にさらなる価値が見いだされそうだ。
大阪・御堂筋で進む! 2023年秋、なんば駅前広場が歩行者天国に
今回フォーラムが開催された、大阪についての取り組みも大きく取り上げられた。初めてほこみち指定を受けた路線の一つである御堂筋は、大阪市の中央を南北に縦断するシンボルストリート。御堂筋沿いには、百貨店や企業ビルが立ち並んでおり、街づくりや社会実験の取り組みに関しては、民間企業との連携は必須。なんば駅周辺の町会、商店街、企業27団体が参加する「なんば安心安全にぎわいのまちづくり協議会」「NPO法人御堂筋・長堀21世紀の会」「一般社団法人御堂筋まちづくりネットワーク」などが民間発意でスタートしているのも、大阪ならではだろう。
南海なんば駅を担う南海電気鉄道株式会社が連携し、なんば駅前広場の実現に向けて動いている。これまでも、「なんば広場改造計画」として、大阪・なんば駅周辺では2016年から毎年継続的に社会実験が行われてきた。御堂筋では歩道の拡幅工事だけでなく、なんば駅周辺にある「駅前広場」が、歩行者天国に整備される予定が進んでいる。これまで駅前広場にあったタクシー乗り場も周辺の道路に移された。工事の準備が本格化することから、2022年11月8日から車両は全面通行止め。2023年秋には、歩行者天国となる予定だ。今後の人中心の道路空間の広がりを期待させながら、フォーラムは幕を閉じた。
御堂筋は、シャンゼリゼ通りを目指しているという。横断歩道のど真ん中で立ち止まったり、屋台で購入したテイクアウトフードを、屋外ベンチで食べたりする。いつしか当たり前の風景になるかもしれない。自動車交通が中心の道から、人中心の道へ。しかし人を中心とした道路空間を作るには、車両の交通状況や規制などの問題もまだまだ残されている。「みち」が変われば「まち」も変わる。日に日に街の風景が変わっていく様子を楽しみたい。
ほこみちインスパイアフォーラム2022
https://hokomichi.jp/forum/
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