国際水準を満たした施設へと生まれ変わる
愛知県、名古屋市の夏の風物詩のひとつとなっているのが、大相撲の名古屋場所。そのころになると県内各地に相撲部屋の宿舎が設置され、まちを歩くお相撲さんと会うのも楽しみだ。
その名古屋場所が長く開催されてきたドルフィンズアリーナ(愛知県体育館)の移転新築工事が進められている。2022年7月に起工式が行われ、オープンは2025年夏の予定。名古屋城を中心とした城址公園である名城公園(めいじょうこうえん)内での移転となり、現在の位置から900mほど北に建設される。
移転新築の目的は、1964年に建てられた施設の老朽化とともに、現代において規模や機能がスポーツの国際大会を開催するための国際水準を満たしていないため。
2026年に愛知県と名古屋市が共催するアジア最大のスポーツの祭典であるイベントの会場として利用できるように整備を進めることとした。
歴史も継承する新施設に
現体育館は、1971(昭和46)年に行われた第31回世界卓球選手権で中国が6年ぶりに出場し、それをきっかけにその後アメリカと中国の国交が正常化された、いわゆる「ピンポン外交」の舞台になった場所でもある。
そんな歴史を持ちつつ、誕生から58年という年数経過による建物の傷みは避けられない。それだけでなく時代の変化によってスポーツ施設として求められる水準も変わってきた。
そこで、1:大相撲名古屋場所にふさわしい風格のある施設、2:ピンポン外交など50年以上の愛知県体育館の歴史を引き継ぐ施設、3:全国大会を常時開催できる施設、4:国際大会を開催できる施設、5:全国レベルのコンサート、イベント、コンベンション等の拠点となる施設という5項目を満たした「愛知県体育館が積み重ねた伝統を継承した愛知・名古屋のシンボルとなる施設」をコンセプトとすることになった。
事業方式としては、事業者が自らの提案をもとに設計・建設したあと、県に所有権を移転する「BT方式」と、県が事業者に公共施設等運営権を設定して維持管理・運営を行う「コンセッション方式」を組み合わせた、「BTコンセッション方式」となる。複数の企業で構成された事業コンソーシアムとなる株式会社愛知国際アリーナが事業者となり、設計・建設時の代表企業は前田建設工業株式会社、維持管理・運営時は株式会社NTTドコモが務める。
今回、愛知県発表の資料をもとに、具体的にどのような施設が予定されているのかをご紹介したい。
最先端技術を駆使した“スマートアリーナ”
国際水準を満たすためにどのような計画がされているのか。
世界では、5GやIoT(モノのインターネット)といったICT(情報通信技術)を導入した“スマートスタジアム”が注目されている。例えば、ARやVRなども利用した観戦体験、情報収集などに役立つWi-Fi環境の整備、売店やトイレなどの情報提供などの混雑緩和、電子チケットやキャッシュレス決済、監視カメラなどによる警備面の強化。それらは、利便性の高まりと共に、観戦・観賞体験の満足度を高める。
そうしたなかで、愛知県新体育館は、最先端の“スマートアリーナ”を目指す。NTTドコモという最大手移動通信企業の参加により、最先端の維持管理システムを導入し、効率的かつ効果的に業務を遂行。そして最新の観戦・鑑賞体験ができる国内最大相当数のビジョン映像の演出を予定。また、ICTを活用して入場前から退場後まで常にワクワク感を出す仕組みの提供を考えているという。
ハイブリッドオーバル型の観客席とは?
観戦・鑑賞体験には、観客席もポイントとなる。
施設内には、メインアリーナ、サブアリーナ、多目的ホールなどを整備し、一体利用や個別利用に対応する配置・動線も構想に入れているそうだ。
30m以上の天井高を確保したメインアリーナの観客席は、中央の競技場あるいはステージをぐるっと観客席が囲む、主にスポーツに適したオーバル型と、コンサートなどに適した馬蹄型の座席位置が可能となる、ハイブリッドオーバル型となる。
愛知県では“フィギュア王国”と言われるほどにフィギュアスケートの名選手を輩出しているが、フィギュアスケートのように広い競技面が必要となる場合も対応できるなど、グローバルな水準を満たして、ワールドクラスのイベント誘致が可能になる。
周囲の公園の自然と一体化したデザイン
施設デザインは、世界的建築家である隈研吾氏が担当する「樹形アリーナ」。パースを見ると、外壁にデザイン性のある木材が使われ、それが緑豊かな公園の木々と連続性を持つように感じられる。
現体育館は建築面積7,633m2・延床面積1万7,240m2(地上3階・地下1階)だが、新体育館は建築面積2万6,500m2・延床面積6万3,000m2(地上5階)と、飛躍的にスケール感がアップする。
かつて三大都市圏に挙げられながら海外アーティストなどのイベントが行われないといったことで、“名古屋飛ばし”という言葉が誕生してしまった。愛知県民、名古屋市民としては、この新施設にその分の期待も大きいことだろう。筆者もその一人。建設を見守りつつ、開業の際には実際の様子をまたお伝えできたらと思う。
取材協力:愛知県
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