2021年人口動態統計結果の概要
2022年9月16日に厚生労働省から「令和3 (2021) 年人口動態統計(確定数)の概況」が公表された。2021年人口動態統計は、2021年1月1日~2021年12月31日までの1年間における出生数や死亡数、婚姻件数、離婚件数をまとめたものである。都道府県間の人口移動を示す社会増減については公表されていない。
2021年人口動態統計の概要を示すと以下の通りである。
(カッコ内数値は前年比)
出生数:81万1,622人(▲2万9,213人) 過去最少
合計特殊出生率:1.30(▲0.03)
死亡数:143万9,856人(+6万7,101人) 戦後最多
自然増減数:▲62万8,234人(+9万6,314人) 15年連続で減少
婚姻件数:50万1,138組(▲2万4,369組) 戦後最少
離婚件数:18万4,384組(▲8,869組)
厚生労働省:令和3 (2021) 年人口動態統計(確定数)の概況
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/kakutei21/index.html
特筆すべき点としては、出生数が過去最少となったことだ。合計特殊出生率に関しては、2005年に1.26を記録しており過去最低ではないものの、直近過去10年間の間では最も低い数値となっている。
死亡数については戦後最多となった。死因は1位が悪性新生物(腫瘍)、2位が心疾患、3位が老衰である。
死亡数が出生数を上回っているため、トータルとしては自然減となっている。また、婚姻件数は戦後最少となったが、離婚件数は前年よりも減少する結果となった。
低い出生率が及ぼす将来への影響
現在、日本で発生している人口減少や少子高齢化の問題は「静かなる有事」とも呼ばれている。人口減少や少子高齢化は突然訪れるわけではなく、徐々に進行していく現象だ。少子高齢化の現象は、まず少子化から始まっていく。高齢化社会になるのは少し後であり、少子化と高齢化にはタイムラグがある点が特徴だ。最終的には少子高齢化を生み出す出生率の低さは、将来の日本を見極めていくうえで重要な数値となってくる。
出生率とは、単純に言うと1人の女性が平均して一生の間に何人子どもを産むかを表した数値である。1人の子どもには父と母の2人の親がおり基本的には先に親が死ぬため、2人のマイナスが発生する。子どもが2人生まれれば2人のプラスが親2人のマイナスを相殺し、人口は維持される。しかしながら、実際には親よりも先に死ぬ子どももいることから、出生率が2.0だと人口が減ってしまうことになる。
そのため、一般的には人口を維持するには出生率は2.1程度必要とされている。2021年の合計特殊出生率は1.30であることから、2.1を大きく下回ってしまっている。では、日本で出生率が2.1を上回っていた時期はいつ頃だったかというと、1973 (昭和48) 年あたりまでである (1950年代後半~1960年代前半に2.1を下回っていた時期はある) 。
合計特殊出生率は1973年が2.14、1974年は2.05、1975年が1.91となっており、1975年以降はずっと2.0を下回っている状況だ。1971年~1974年は団塊ジュニアが生まれた第2次ベビーブームの時期であり、当時は人口減少や少子高齢化の懸念はほとんどなかったと思われる。それでも少子化の兆しは1975年から既に始まっており、高齢化社会になる前に少子化社会が訪れていたといえる。
一方で、高齢化が少し遅れて発生する理由には、平均寿命が延びている点が挙げられる。死亡する年齢が少しずつ高くなれば、生存している高齢者も増え、徐々に高齢者の人口が増えていくことになる。少子高齢化は年金生活者を支える労働者の数が減るといういびつな人口構造を生んでしまう。年金制度そのものが破綻するのではないかという懸念も生み、老後の生活を不安にさせる要因を発生させてしまうのである。
2021年人口動態統計は出生数が過去最少であり、出生率も1.30となっており、将来に向けてさらに少子化を加速させる結果になっている。
過去と将来の人口
日本の歴史を振り返ると、人口は必ずしも一律に増加してきたわけではない。人口が増えるには画期的な社会変化が必要だ。少し古い資料になるが、内閣府の「平成16年版少子化社会白書」には、有史以来の人口の推移が掲載されている。
https://www8.cao.go.jp/shoushi/shoushika/whitepaper/measures/w-2004/pdf_h/pdf/g1010100.pdf
日本の人口は、縄文時代は約10万人~約26万人程度で、弥生時代には約60万人となった。弥生時代に人口が増えたのは、恐らく稲作が始まって食料事情が改善されたことが主な理由と思われる。奈良時代には約450万人、平安時代には約550万人となり、江戸時代(慶長時代:1600年)には約1,220万人となる。
江戸時代に入ると一気に人口が増えることになるが、人口増加は江戸時代の前半にしか見られず、後半には人口増加が停滞してしまう(明治以降になると再び人口は急増する) 。江戸時代前半に人口が伸びた理由は、戦国時代が終わって平和となり、田畑の開墾が大きく進んだことが挙げられる。その後、江戸時代後半になると、田畑を広げるのに限界が生じ、徐々に生産活動が頭打ちになっていく。江戸時代の後半は経済の低成長社会となったことで、人口も増えなかったのではないかという説もある。さらに江戸時代の後半には飢饉が発生し、人口が減少した時期もある。
現在の日本も経済の低成長社会となっており、過去の歴史から見ると人口が増えにくい状況といえるのかもしれない。経済が低成長となれば、就業機会を得にくくなり、人口も増えにくいということだ。また、内閣府の「令和4年版少子化社会対策白書では、将来の人口も推定されている。
https://www8.cao.go.jp/shoushi/shoushika/whitepaper/measures/w-2022/r04pdfhonpen/pdf/s1-1.pdf
日本の人口は2021年10月1日時点で1億2,550万人となっているが、2053年には1億人を割り込んで9,924万人となる見込みだ。さらに2065年には8,808万人となる。
人口減少社会が不動産に及ぼす影響
日本全体の人口減少は2008年ごろから始まっており、人口減少社会に突入してから既に10年超を経過している。2022年9月20日に公表された2022年の都道府県地価調査(価格時点は2022年7月1日)では、土地の価格は全国の全用途平均で上昇している。ここ数年、地価公示や都道府県地価調査といった土地の公的評価額は総じて上昇傾向にあり、必ずしも人口動向と不動産価格は連動していない。
住宅地に関しては、住宅ローンの低金利環境や住宅ローン減税などの住宅取得支援政策の存在などを理由に地価が上昇している。商業地に関しては、国内来訪客が戻りつつある地域では上昇した。工業地に関しては、インターネット通販の拡大より倉庫用地の需要が高くなっており、上昇が続いている。
人口は確かに不動産価格に影響を与える要因の一つであるが、人口以外にも不動産価格に影響を与える要因はあるため、人口だけで不動産価格が決まってしまうわけではない。ただ、人口減少が進めば「狭い範囲での二極化」が進展する要因にもなると考えられる。従来、不動産の二極化は「東京と地方」のような日本全体の視点で語られることが多かった。しかしながら、今後は都道府県内または経済圏内といった比較的狭い範囲において二極化が生じていく可能性がある。
ここで、北海道を例に人口減少が不動産に与える影響を見てみよう。
北海道は早くから人口減少が進んでおり、「明日のわが街」を映し出す未来予想図ともいえる。北海道では1997年から人口減少が始まっているが、札幌市は2021年もいまだに人口が増加している。2022年の都道府県地価調査では、札幌市の住宅地は平均で11.8%も上昇しているが、北海道内の芦別市のポイント(芦別-2)では▲7.4%も下落しており、他にも道内には大きな下落率を示した地点が存在する。
地方圏
https://www.mlit.go.jp/tochi_fudousan_kensetsugyo/content/001513336.pdf
下落率順位表(全国)
https://www.mlit.go.jp/tochi_fudousan_kensetsugyo/content/001513315.pdf
北海道という限定された地域の中で、地価の上昇と下落の二極化が進んでいる状況だ。
また、経済圏として大阪圏を例に挙げると、大阪圏には神戸市や京都市といった大きな衛星都市が存在する。近年、これらの衛星都市は大阪市に近いことが理由で人口減少が発生し始めている。今後は、大阪圏という経済圏の中で二極化が顕在化していく可能性はある。
東京圏においても、恐らく例外ではない。現在、横浜市やさいたま市、千葉市といった東京圏内の衛星都市は人口増加が継続している。しかしながら、今後、人口減少が進めば、衛星都市から東京都に人口が引き抜かれ、東京圏の中でも二極化が生じていく懸念はあるのだ。
人口減少は、東京一極集中のミニチュア版を全国の至るところで生み出していくのかもしれない。
公開日:








