スマートシティとは

内閣府によると、スマートシティとは以下のように定義されている。

【スマートシティ】
ICT 等の新技術を活用しつつ、マネジメント(計画、整備、管理・運営等)の高度化により、都市や地域の抱える諸課題の解決を行い、また新たな価値を創出し続ける、持続可能な都市や地域

内閣府:スマートシティ
https://www8.cao.go.jp/cstp/society5_0/smartcity/index.html

スマートシティとは、大まかに言うと「高度にデジタル化された行政サービスを行う街」といえる。ただし、単にデジタル化で行政を効率化するのではなく、ICT※やAIを積極的に取り入れることで、人口減少や、高齢化、災害多発、感染症リスクといった自治体が直面するさまざまな社会課題を解決していこうとするのがスマートシティである。
※ICT:Information and Communication Technology情報通信技術のこと

人口減少や、高齢化、災害多発といった社会課題は今後ますます深刻化することが危惧されている。一方で、ICTやAIといった新しい技術は、急速に発展しており、多くの課題を解決する糸口になると考えられている。

そこで現在、国(内閣府)はスマートシティの普及を推進しており、各自治体がそれぞれの課題や特性を踏まえてスマートシティ化に取り組み始めている。スマートシティには1つの正解というものは存在せず、各自治体が自分たちで取り組み内容を決めて実施しているという点が特徴だ。

出典:スマートシティの進め方<br>
内閣府・総務省・経済産業省・国土交通省 スマートシティ官民連携プラットフォーム<br>
スマートシティガイドブック(概要版)<br>
https://www8.cao.go.jp/cstp/society5_0/smartcity/00_scguide_s.pdf出典:スマートシティの進め方
内閣府・総務省・経済産業省・国土交通省 スマートシティ官民連携プラットフォーム
スマートシティガイドブック(概要版)
https://www8.cao.go.jp/cstp/society5_0/smartcity/00_scguide_s.pdf

内閣府のスマートシティガイドブックでは、スマートシティの進め方として、以下のような手順を掲げている。

1.初動段階:スマートシティの取り組みを発意し、スタートさせる段階
2.準備段階:取り組みの方針を決め、市民への共有、体制を整える段階
3.計画(戦略)作成段階:取り組みを具体化させ、強固な推進体制をつくる段階
4.実証・実装段階:サービス等の社会的受容性等を実証しつつ、順次社会実装していく段階
5.定着・発展段階:実装されたサービス等を適宜モニタリングしつつ充実し、スマートシティを地域に根付かせていく段階

1つの例として、千葉市では2022年3月に「千葉市スマートシティ推進ビジョン」と「千葉市スマートシティプロジェクト2022」を公表している。「千葉市スマートシティ推進ビジョン」によって取り組みの方針を市民へ共有し、「千葉市スマートシティプロジェクト2022」によって取り組みを具体化させている。内閣府が示す進め方に照らし合わせれば、千葉市は「2.準備段階」を終え、「3.計画(戦略)作成段階」に入ったものと思われる。

千葉市の特徴と課題

海浜幕張エリア海浜幕張エリア

千葉市は東京都心まで約40km離れた場所に位置し、人口は約98万人の政令指定都市である。人口は今のところ微増傾向にあるが、首都圏では東京から50km離れた地域では人口が減少し始めており、千葉市は人口増加地域の波打ち際とされている。

千葉市への転入は、県内においては千葉市よりも東側もしくは南側の市町村からの流入が主であるが、流入源となっている自治体では既に人口減少が始まっている。

東京のベッドタウンとしての側面もあり、高度成長期には大規模な団地が開発されたことから、団塊世代も多く住み、2055年には高齢化率が4割まで上昇することが見込まれている。市営住宅やインフラには古いものも多く、更新に莫大な費用がかかることも懸念されている。

一方で、東京からある程度離れた都市であることから、就業者の東京への依存度は低く、昼夜人口比率は97.9%にもなっている。昼夜人口比率は横浜市やさいたま市といった他の首都圏の政令指定都市と比べて高く、職場や学校の多い拠点性の高い街という性格も有する。

また、鉄道網が弱く、他の首都圏の政令指定都市と比べると自動車依存率が高いとされる。

千葉市が取り組む5つのスマート

千葉市には前述のような課題と特徴を踏まえ、「暮らし」「ビジネス」「学び」「まち」「市役所」の5つ方向性でスマートシティ化を推進しようとしている。
https://www.city.chiba.jp/sogoseisaku/miraitoshi/smartcity/smartcity_vision.html

千葉市スマートシティ推進ビジョン

(1)暮らし

あらゆる市民が場所や時間を問わないサービス、活発なコミュニケーションによって健康な生活、充実した生活を得られることを目指している。具体的には広報活動の充実を図るためにSNSなどを活用した情報発信の支援や、空き家を活用するシェアリングエコノミーの普及などが想定されている。

(2)ビジネス

あらゆる人材が活躍できる多様な就労環境のもと、働く人が仕事と生活のバランスを保ち、やりがいや向上心を持って働けること、また事業者による新しい価値の創出や生産性の向上が行われることを目指している。具体的には介護ロボットの活用で介護人材を確保することや、ドローンによる宅配サービスの実現化などが想定されている。

(3)学び

あらゆる市民が時間や場所を問わず、多様な方法で、生涯にわたり個々に応じた質の高い学びに取り組むことができ、千葉市に対して愛着を持ちながら郷土について学ぶことができることを目指している。具体的には来館せずに本の貸し出しや返却ができる電子図書館の構築や、高齢者などを対象としたスマホ講座を開催することでデジタルデバイド※の対策をすることが想定されている。
※デジタルデバイド:インターネットやパソコン等の情報通信技術を利用できる人と利用できない人との間に発生する情報格差

(4)まち

あらゆる市民が、暮らしを支える充実した基盤のもとで、安全・安心な生活を送ることができ、環境にやさしく緑や水辺と調和した千葉市の魅力を感じることができることを目指している。具体的には次世代モビリティ導入による多様な移動・交通サービスの提供や幕張新都心版MaaS※による付加価値のある快適な移動の実現が想定されている。
※MaaS(Mobility as a Service):従来の交通手段に、自動運転やAIなどのさまざまなテクノロジーを組み込んだ次世代交通サービス

(5)市役所

一人ひとりのニーズに合わせた公共サービスを選ぶことができることなどを目指している。
具体的には、オンラインでも申請ができる手続きを拡大し、「行かなくていい、待たなくていい、使いやすい市役所」の実現が想定されている。

千葉市は、「暮らし」「ビジネス」「学び」「まち」「市役所」の5つのスマートシティ化を進める千葉市は、「暮らし」「ビジネス」「学び」「まち」「市役所」の5つのスマートシティ化を進める

予定されている取り組み例

ここでは、千葉市で取り組んでいるスマートシティの一部の例を紹介する。

(1)多様な移動・交通サービスの提供
千葉市では、2017年より幕張新都心で行った「自律走行ロボット実証実験」を皮切りに、次世代モビリティサービスの実証実験を継続している。幕張新都心はすべて埋立地でできており、歩車が分離されており、道路幅も広く見通しがよいため、交通安全性は比較的高い街となっている。もともと交通事故の発生しにくいエリアであることから、次世代モビリティの実験場に選ばれていると思われる。

2019年にはイオンモール幕張新都心にてパーソナルモビリティ屋内無人走行実証実験、2020年には三井アウトレットパーク幕張や幕張メッセにおいてパーソナルモビリティシェアリング実証実験を実施している。また、2020年にはAI運行バス実証実験や自動運転バス公道実証実験も行っており、公道での実証データを積み上げている。

今後、千葉市のスマートシティでは、公共交通の運行情報などの標準化・オープン化の推進を行い、次世代モビリティの社会実装に向けた検討がなされている。千葉市は鉄道網が弱く、自動車依存率が高いという課題があるが、次世代モビリティサービスを既存公共交通とミックスさせることで課題の克服を目指している。

(2)美しいまちづくりの実現
千葉市では今後高齢化により生産年齢人口が減少し、ごみ収集車の運転員などの確保が困難になることが予測されている。そこで、ICTを活用したごみ収集の実施をすることで、ごみ回収を効率化し、美しいまちづくりを目指している。具体的には回収ボックスにセンサーを設置し、最適なタイミングでごみ回収を行うことが想定されている。ごみボックスには堆積量を記録するカメラや騒音を測定するセンサーを搭載し、不法投棄事例をデータベース化しAIで不法投棄の発生を予測するシステムも検討されているようだ。

ごみ収集に置ける課題に対し、テクノロジーの活用が期待されているごみ収集に置ける課題に対し、テクノロジーの活用が期待されている

千葉市は既に町会の高齢化が進み、ごみステーションの管理に課題を抱えている住宅街も多い。ごみ問題が解決すれば、千葉市が目指すスマートシティである「快適なまち」に一歩近づくことだろう。

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