事故物件(心理的瑕疵物件)とは何か

人知れず亡くなる、あるいは発見が遅くなった場合、現場となった不動産物件は
いわゆる事故物件と呼ばれることがある(画像提供:株式会社MARKS)人知れず亡くなる、あるいは発見が遅くなった場合、現場となった不動産物件は いわゆる事故物件と呼ばれることがある(画像提供:株式会社MARKS)

多死社会ともいわれる昨今、高齢者は増加し、死亡数も増加を続ける。亡くなるのはもちろん高齢者だけでなく、その原因もさまざまだが、病院だけでなく自宅で亡くなる人も10%以上いる(2009年 厚生労働省「人口動態統計」)。

人知れず亡くなる、あるいは発見されるのが遅くなって特殊清掃が必要となった場合や、自然死・日常生活の中での不慮の死以外の死が生じた不動産物件は、いわゆる事故物件と呼ばれることがある。事故物件とは、人の死が原因で心理的瑕疵が付いた物件のこと。心理的に人々が忌み嫌うであろうことが起こった場合、現場となった不動産物件の資産価値は低下し、流通が困難になると一般的には思われている。しかし、多死社会を迎え、私たちが所有したり相続したりする物件がいわゆる事故物件となる可能性も十分にある。

もしそのような事態に直面したとき、私たちはどうすればいいのだろうか。
事故物件の買い取りや流通を専門に手掛ける「成仏不動産」を運営する株式会社MARKS 成仏不動産事業部長の佐藤祐貴さんにお話を聞いた。

実家が事故物件になってしまったら?

まずは警察に通報まずは警察に通報

例えば、離れて実家に住む親が、何らかの原因で人知れず自宅で亡くなったとしよう。まずは何をすればいいのだろうか。

「何より警察への通報を優先してください。まずは警察が事件性の有無を捜査します。そして現状把握です。どのような原因でいつ頃亡くなって、部屋がどのような状態なのかを知ることです。この種の事案は、亡くなられてから見つかるまでの時間の長短が、後々の対応を大きく左右します。不動産に関しては、現場の部屋の状況を鑑み、特殊清掃が必要な場合には、専門の事業者が、匂いや体液によるシミなどの痕跡をなくす処置を行います。部屋に残された物品は、遺品整理として必要なものを分別した後、処分します」(佐藤さん)

事故物件を、選ばれる不動産物件に

同社の場合、特殊清掃やリフォームを施した後は、買い取りを行うのか市場での売却を行うのか、所有者の希望に即した方法を考えるという。

「私たちの会社は、住宅メーカーや売買仲介、賃貸などのさまざまな経験とノウハウを持つスタッフがいます。事故物件といえども、正しい処置や施工を行い、市場調査に基づく正しい評価をし、そして正しい販売網で流通させることで、選んでくださる人は必ずいます。事故物件を、選ばれる不動産物件に変えることはできるのです」(佐藤さん)

成仏不動産で実施したアンケートでは、「事故物件に住めますか」という設問に、事故の内容や物件の条件によるとの条件が付くものの、49%の人が「住める」と回答している。いわゆる事故物件でも「気にならない」という人はいるが、従来はその人たちになかなか情報を届けることができなかった。そこで同社は「成仏不動産」として情報を集めることで、ターゲットとなり得る消費者に情報を届ける。
また、おはらいや供養をした物件には「成仏認定書」を発行して、買い手に安心感を持ってもらうなど、ターゲットの拡大にも手を尽くしている。

匂いやシミなど、痕跡を消すために行われるのが特殊清掃(画像提供:株式会社MARKS)匂いやシミなど、痕跡を消すために行われるのが特殊清掃(画像提供:株式会社MARKS)

知り得たことは伝えることが大切

先のアンケートの別の設問で、「不動産を買う、借りる際に、事故物件かどうかの情報は知りたいですか?」と質問したところ、60.2%が「知りたい」、19.4%が「どちらかと⾔えば知りたい」と回答している。

2021年には、国⼟交通省から「宅地建物取引業者による⼈の死の告知に関するガイドライン」が公表された。ガイドラインでは、宅建業者が人の死を告知しなくてもよい場合として、自然死・日常生活の中での不慮の死、隣接住戸や集合住宅の共用部分で発生した死や、賃貸住宅の場合で特殊清掃が行われた場合に発覚から概ね3年間を経過した後、としている。

一方、原則として「宅地建物取引業者は、人の死に関する事案が、取引の相手方等の判断に重要な影響を及ぼすと考えられる場合には、これを告げなければならない」とも記載されている。

「こうした物件に住むことに対して、心理的に負担と感じる人が少なくなってきているのは確かですが、それは事故の中身や物件の条件によるものと理解しています。また、そのためにも告知は絶対条件です。たとえば、ガイドラインでは賃貸物件は3年経過後は告知不要としていますが、私たちは期間で区切るものではないと考え、知り得た情報は必ず伝えます」(佐藤さん)

痕跡を除去した後は、正しいリフォームによって物件の価値を再生する(画像提供:株式会社MARKS)痕跡を除去した後は、正しいリフォームによって物件の価値を再生する(画像提供:株式会社MARKS)

ストック資産の価値を高めるためにも

住宅は、長く何世代にもわたって使用し、受け継がれていくものだ。その過程では、人の死というものも避けて通ることはできない。
従来、不動産業界ではいわゆる事故物件を価値のないものとして放置してしまう場合が多くあった。それは消費者が忌み嫌うであろうという、一方的な考えに基づいたものであったといえる。

特殊清掃やリフォームの技術も進化している。皆が嫌がるだろうという推測だけで、限りある住宅ストックが放置されることがあれば、それは社会的にも損失といえるのではないだろうか。
成仏不動産が行ったアンケート結果を見れば、推測とは違う実態が見えてくる。

「たとえば、高齢者や外国人の住宅困窮者問題も、いわゆる事故物件も含めたストックの活用で解決の糸口が見えてくるかもしれません」(佐藤さん)

成仏不動産の事業により、「事故物件」というネガティブなネーミングの持つイメージが払しょくされることで、ストック型社会が実現に一歩近づくかもしれない。

成仏不動産を運営する株式会社MARKS 成仏不動産事業部長の佐藤祐貴さん成仏不動産を運営する株式会社MARKS 成仏不動産事業部長の佐藤祐貴さん

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