特徴的な外観の上智大学の新校舎が完成
東京都新宿区の四ツ谷駅を出て、新宿通りを少し歩くと、通り沿いに特徴的な外観の建物が見えてくる。2022年5月に竣工した上智大学の木造3階建ての新校舎「15号館」だ。木材を交差させた格子が連なる外観をしており、目を引く。実際に竣工前からSNS等で話題になったり、テレビのニュースで取り上げられたりもした。
外観のデザインについて上智大学の川端健太氏に聞いてみると、「外観の交差した木はクロッシングをイメージしたデザインです。上智大学の建学の理念の『多様性』『対話』『文化の交流』などを表現してしいます」とのこと。
外観のデザインに目を奪われるが、多摩産のスギを使用した格子の隙間からは自然光が室内にやわらかく差し込み、利用者が快適に過ごせて生産性が向上するようにと機能面も考えられて造られている。
2階3階が教室、1階は地域の人も利用できるカフェに
内装にも木材がふんだんに使用されており、中に入ると木の香りが漂ってくる。校舎は3階建てで、1階は地域の人も利用できるカフェを誘致する予定だ。さらに、防災倉庫として利用可能なスペースを近隣町会に提供する。人通りの多い道に面している建物でもあるので、地域の人々の交流を生む開かれた場となっていくことが期待される。
2階と3階はそれぞれ教室が1つずつある。木に囲まれた空間は教室としてイメージするような堅い印象はなく、おしゃれなカフェにいるようなやさしさや温かさを感じさせる。教室は上智大学が社会人向けに2020年から行っているプログラム「プロフェッショナル・スタディーズ」の受講者たちが主に利用する予定となっている。
特徴的なのは3階の活用だ。2階にはホワイトボードの前に机と椅子が並び教室らしさがあったが、それらが見当たらない。「3階は机と椅子を置いた一方的なコミュニケーションではなく、双方で活発に自由なコミュニケーションを図る場所にしたいという思いがあった」と、川端氏。授業も行えるが、講義の後に複数名で語りながら議論を深め合える場所として期待しているという。
設計・施工を行った住友林業株式会社の土屋龍彦氏によると「コロナ禍で人が集まるハードルが高くなったこともあり、せっかく集まるならリラックスでき、コミュニケーションを取りやすい空間を考えて3階はこのような形になった」という。3階で授業を行う場合には、用途により自由にレイアウトを変更できる可変性がある作りになっている。
また、各階にはテラス空間が設けられている。格子の隙間から木漏れ日のような光が差し込み、思わず授業の前後に足を運んでしまいたくなる居心地のよさそうな空間となっている。このテラスは本来、必要とされる空間ではないが、利用者に立ち止まってもらい交流が促されることを目的として設置したという。
建物は木造3階建ての耐火構造。内装にも木材を積極的に使用
15号館は木造3階建ての耐火構造。木造で校舎を建築した経緯について川端氏は「上智大学はSDGs(持続可能な開発目標)実現のための活動に取り組んでおり、環境負荷が少なくCO2排出量の削減と森林資源の循環利用推進になる、木造での建築を選択した」と話す。
上智大学15号館は、自然由来の素材や自然の要素を取り込み、人間の本能的に自然と結びつきたいという欲求を満たす「バイオフィリックデザイン」という手法で造られている。壁面と屋上には緑化を取り入れて、内装にも木材を積極的に使用している。建物の中にいると木材の香りや、格子の隙間から差し込む光など、まるで自然の中にいるような気持ちになってくる。
住友林業の最新技術を結集。全て国産の木材を使用しCO2を削減
15号館に使用されている木材はすべて国産だ。国産の木材を使用することで、原材料の調達、輸送、材料の加工、建築等の過程で出るCO2の排出が削減できる。
建物構造には、住友林業の最新技術である「ポストテンション耐震技術」「木ぐるみFR ®」が採用されている。ポストテンション耐震技術とは、耐力部材に通した高強度の鋼棒やワイヤーロープに引張力を与えることで部材間の固定度を高める技術。壁に覆われた空間でなく開放的な空間が作れることから、この技術が採用されたという。
木ぐるみFR ®とは、1時間耐火の大臣認定を取得した純木質耐火集成材。純木質でありながら構造部材として使えるため、木の表情を生かした建築が可能になっている。
室内での開放感や自然を感じる心地よさは、こうした技術により生まれているのだと合点がいった。
地域交流の拠点となり、地域のランドマークへ
15号館は、社会人教育の場だけでなく、地域交流の拠点となり、地域のサステイナブルなランドマークを目指しているという。1階は前述したとおり、誰でも利用できるカフェや近隣町会への防災倉庫を提供予定だ。2階と3階の教室も料金を支払えば地域住民も利用できるようになる予定だという。
四ツ谷駅から程近い訪れやすい立地なので、各種イベントや勉強会などにも幅広く利用されていくのではないだろうか。
校舎は2022年秋から、カフェは2023年春からの運用開始を予定している。
利用者同士の交流を生み出す、地域に開かれた校舎が、街にどんな影響を与えていくのか、今から楽しみだ。
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