ウッドショックとは
ウッドショックとは、輸入木材価格の高騰のことである。2021年3月頃から発生しており、木造住宅における建築費高騰の一因となっている。
日本は森林大国であるが、木材の自給率は2020年において41.8%しかなく約6割を輸入木材に頼っている状況だ。そのため、輸入木材価格の高騰は日本の建築費に大きな影響を与えている。
令和2年木材需給表 林野庁
https://www.rinya.maff.go.jp/j/press/kikaku/attach/pdf/210930-2.pdf
現在のウッドショックはウクライナ情勢とは直接的な関係はなく、新型コロナウイルスが強く影響している。
発端となったのは米国における住宅需要の増加である。米国では新型コロナウイルスにより在宅勤務が拡大したことで、郊外で木造の一戸建て住宅を建てる人が急増した。また、同時期に中国でも木材需要が高まったことも一因となっている。
さらに、新型コロナウイルスにより世界的なコンテナ不足も加わったことで、海上輸送の運賃が上がっている。
2022年に入ってからも木材価格の高騰は続いており、ウッドショックはいまだ収束には至っていない状況だ。
ロシアの木材の生産の状況
ユーラシア大陸を東西に広がるロシアは、全世界の約2割の森林が集中する森林大国となっている。ロシアの国土のうち、森林保全・保護・利用にあてられる部分は「森林フォンド」と呼ばれ、すべて国有林である。森林フォンドはロシア国土の66%の面積に相当し、そのうち21%の面積が伐採等の積極的な長期利用を目的とした森林として活用されている。
ロシアは広大な森林面積を持っていることから、自国の木材産業の工業化を促すことを目的に丸太輸出関税を課している。ここでいう丸太とは、合板や製材、集成材といった木材商品の原料のことを指す。ロシアでは、丸太をそのまま輸出させにくくするために逆関税を課している。ロシア国内で丸太を製品化することで付加価値を付け、高く輸出できる仕組みを整えているのだ。ロシアは国が政策的に木材産業の育成を図ったことから、製材(建具等の材料)に関しては世界一の輸出国となっている。
ロシアの木材輸出先は中国が第1位であり、それに日本、フィンランド、エジプト、ウズベキスタン等が続いている。 2017年のロシアから中国への輸出額は48億円ドルでであるのに対し、日本への輸出額は約4.8億ドル(2017年の523億円を110円換算。2021年は634億円)となっており、 ロシアからの木材輸出額は中国が圧倒的に多い状況となっている。
日本の木材輸入の状況とロシア木材が占める割合
林野庁が公表している「2021年の木材輸入実績」によると、2021年における日本の木材の輸入額は1.23兆円となっている。輸入額が高い順に並べると、EU、中国、カナダ、ベトナム、フィリピン、インドネシア、米国、マレーシア、ロシアとなる。ロシアは全体の中では第9位の相手国だ。
https://www.rinya.maff.go.jp/j/boutai/yunyuu/attach/pdf/boueki-75.pdf
EUは2年連続の輸入額第1位となっており、2021年におけるEUからの輸入額は1,712億円、全体の約13.9%を占めている。第2位の中国からの輸入額は1,663億円、全体の約13.5%となっており、EUと拮抗している。第9位のロシアからの輸入額は634億円、全体の約5.2%となっている。
木材の輸入先は世界各国に分散しており、どこかの国に大きく依存している状況にはない。特にロシアからの輸入量は全体の約5.2%となっていることから、日本に対する木材の影響力はそれほど大きくはないといえる。ただし、木材の輸入は品目別に輸入先が大きく異なるという特徴がある。ここでは、代表的な木材の品目として「丸太」と「合板」、「集成材」、「製材」の4つの国別の輸入状況を確認する。
(1)丸太
丸太とは、木材製品の原木のことを指し、製材や集成材に加工される前の状態の木材のことを指す。2021年における丸太の輸入量は全体で264万m3となっている。そのうち、内訳としては米国が第1位で151万m3、カナダが第2位で75万m3、ニュージーランドが第3位で31万m3という状況である。
丸太に関しては、米国とカナダ、ニュージーランドの上位3国で輸入量の約97%を占めており、ロシアの影響は少ない。
(2)合板
合板とは、主に壁や床、天井に使用される木材のことを指す。2021年における合板の輸入量は全体で187万m3となっている。そのうち、内訳としてはマレーシアが第1位で79.5万m3、インドネシアが第2位で71.5万m3、ベトナムが第3位で20.7万m3という状況である。合板に関しても、マレーシアとインドネシア、ベトナムの上位3国で輸入量の約92%を占めており、ロシアの影響はほとんどないと考えられる。
(3)集成材
集成材とは、主に柱や梁(はり)の構造体に利用される木材のことを指す。梁とは、柱と柱をつなぐ横架材のことであり、強度を必要とする木材となる。梁の集成材に関しては、ウッドショックに大きな影響を与える製品となっている。理由としては、国産の木材には梁に適した強度を有するものが少なく、梁の集成材は輸入品に多く頼っている現状にあるからだ。2021年における集成材の輸入量は全体で97万m3となっている。
そのうち、内訳としてはEUが第1位で73.3万m3、中国が第2位で9.3万m3、ロシアが第3位で8.4万m3という状況である。
ウッドショックに影響を与えかねない集成材では、ロシアが第3位の輸入先となっている。ただし、集成材はEUの輸入量が全体の約76%も占めており、EUの依存度が極端に高いことがわかる。ロシアは第3位であるものの、割合としては約9%にとどまっている。
(4)製材
製材とは、主に建具等に使われる木材のことを指す。2021年における製材の輸入量は全体で483万m3となっている。そのうち、内訳としてはEUが第1位で215万m3、カナダが第2位で123万m3、ロシアが第3位で85万m3という状況である。製材に関してはロシアが全体の18%を占めており、ロシアの影響が表れやすい品目といえる。
ロシアの木材輸出禁止措置と日本への影響
ウクライナ情勢を受けて、2022年3月9日にロシアは非友好国である日本に対して輸出禁止を決定している。日本が輸入を禁止しているのではなく、ロシアが輸出を禁止している状況だ。ロシアが日本に輸出を禁止しているのは、「木材チップ」と「丸太」、「単板」の3品目である。まず、輸出禁止品目の中にはウッドショックに直接的な影響を与えかねない「集成材」は含まれていない。ロシア産の集成材の割合は約9%であるものの、日本で調達しにくい集成材が輸出禁止品目から外れていることはわが国にとって都合が良い。
また、ロシアからの輸入量が比較的多い「製材」も輸出禁止品目から外れている。ロシアからの輸入木材の品目のうち製材は約7割を占めているが、製材はそのまま輸入されるということになる。一方で、輸入ができなくなった木材チップに関しては、ロシア産は木材チップ輸入量の1%程度となっている。そのため、木材チップがロシアから輸入できなくなったとしても影響はほとんどない。
丸太に関しても、ロシア産は丸太の輸入量の1%程度となっている。そのため、丸太もロシアから輸入できなくなったとしても影響はほとんどないといえる。最後に単板であるが、単板に関しては影響を与えることが予想される。ロシア産は日本の単板輸入量の82%も占めるからだ。ただし、ロシア産の単板は日本で流通している合板原料全体の2%程度となっており、日本の木材市場に与える影響は限定的といえる。
幸いにも集成材や製材といった主要な品目は輸出禁止品目から外れており、今のところロシアによる輸出禁止措置がウッドショックに及ぼす影響は限定的なものと思料される。
今後の見通し
ウクライナ情勢が長期化する可能性も残る中、今後の見通しについては断定的なことは言えない状況にある。ただし、ウッドショックは米国や中国の住宅需要や海上輸送運賃の上昇が主な要因となっており、これらの状況が改善されれば収束する余地はある。また、2022年以降は円安も続いており、輸入価格を押し上げる要因となっている。現状の円安は日本の低金利政策が主な要因となっているため、日本が金利を上げる方針に転換すれば円高となって、輸入価格が下がる可能性も残っている。
なお、経済産業省は2021年時点で「日本国内では、当面は、いわゆるウッドショックといわれる状況が継続する蓋然性が高く、今後の動向を引き続き注視していく必要がある」としており、今後の動向は不透明な状況であるといえる。
いつまで続くウッドショック;価格の高止まりが需要に影響? 経済産業省
https://www.meti.go.jp/statistics/toppage/report/minikaisetsu/hitokoto_kako/20211022hitokoto.html#cont2
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