過去15年間で大きく減少したのは、道路からみて建物奥の被害

コロナ禍、以前に比べ、自宅にいる時間も長くなり、防犯に対する意識が低くなってしまっている方もいるのではないだろうか。換気の必要性もあり、うっかり戸締りを忘れてしまうケースもあるかもしれない。オートロックなどが一般化しているマンションであれば、ある程度の防犯性能は確保できるが、戸建住宅では、防犯に配慮したプランニングはもとより日々の暮らしの中での防犯意識を持つことは重要だろう。

新築やリフォームなどの家づくりの際に、防犯面で考慮しておきたいのは、まず、外構(エクステリア)プラン。外まわりのプランの工夫によって被害のリスクを軽減することは可能だ。

旭化成ホームズ株式会社くらしノベーション研究所が行った、過去15年間の侵入被害についての調査(自社で供給した住宅の修理依頼やメンテナンス履歴のデータベースを元に実施)によると、15年間で減少したのは、道路から見えにくい建物奥の侵入被害だ(敷地の1辺のみが道路に接する敷地形状の場合)。5年ごとの侵入件数平均データからは、建物奥に集中する傾向がみられるものの、近年その数が減少している。

これは、侵入犯が建物奥へ入る経路に当たる建物側面を、一般の通行人からの見守り効果も期待できるように道路から見えやすくすること、奥まで不審者が侵入できないようにゲート(木戸)などの外構を施すといった同社のプラン提案の効果が考えられるという。

敷地条件や周辺環境にもよるが、防犯性を高めるためには、不審者が隠れることができないようにすること、侵入しにくい、もしくは侵入するのに時間がかかるような外構プランとすることがポイントのようだ。

(上)中間画地の侵入場所分布図(侵入リスクの5年毎推移)
(下)ゾーンディフェンス概念図
(上)中間画地の侵入場所分布図(侵入リスクの5年毎推移) (下)ゾーンディフェンス概念図

エリアごとに違いが。中部エリアでは正面への被害が特徴

前述のようなプランは、東京や神奈川の都市部にみられる密集市街地で通行人が多い状況での防犯対策であるが、調査では、道路幅や敷地に比較的余裕がみられるエリアでは、側面中央付近からの侵入もみられるという。

顕著なのは中部エリア。車社会の中部エリアの場合、犯罪者が車で乗り付け、道路から近い開口部で犯行に及んだあと、車で逃走する、という事例が多発しているということから、玄関などの建物正面やカーポートに近い建物側面手前側の窓への被害が多くみられるようだ。

そのため、対策としては、敷地奥に侵入されないためプランに加え、建物側面からの侵入を防ぐため、側面を照らす照明を設け不審者が隠れにくくする、カーポート手前にゲートを設けるなどして侵入を防ぐ提案などが考えられる。敷地条件に合わせて、不審者を門(敷地)の中に入らせない、不審者が車を止めることができないつくりとすることが基本だろう。

(上)中間画地の侵入場所分布図(エリア別の侵入リスク)
(下)侵入場所分布に合わせ進化したゾーンディフェンスの外構提案

(上)中間画地の侵入場所分布図(エリア別の侵入リスク) (下)侵入場所分布に合わせ進化したゾーンディフェンスの外構提案

ガラス割りの被害が減少し、こじ開けの比率が高まる

不審者の屋内への侵入手口として注意したいのがガラス割りだ。調査によると、ガラス割りによる侵入リスクは減少しているが、窓サッシ自体をこじ開ける手段は減少していないという。

取り入れるケースも増えている防犯ガラス(2枚以上のフロート板ガラスの間に、厚く強靭な中間膜とすることで、突き破るのに時間がかかり防犯性に優れるもの)では、ガラス割りよりもこじ開けの方が多く、侵入手段が変わってきていることが読み取れる。

また、窓の形状や大きさ、設置位置も関係しており、人が通れない幅のスリット窓からの侵入は無く、地盤面から高さ2メートルを超える高窓からの侵入被害も極めて少ないという。防犯ガラスやスリット窓、高窓の活用などの対策が有効であったことが、調査結果からも確認できる。

プランニングの際には、開口部の被害が多い1階などは防犯ガラスとする、スリット窓などを組み合わせる、侵入しにくい場所に設けるなど、採光通風を確保しつつ窓計画を行うことが大切だろう。

(上)ガラスの種類と侵入手段の関係
(下)面格子付き窓の開閉状態別、侵入+未遂件数
(上)ガラスの種類と侵入手段の関係 (下)面格子付き窓の開閉状態別、侵入+未遂件数

勝手口ドアの上げ下げ窓の開放や、面格子付浴室窓開放時の被害も

玄関に比べ防犯意識が薄れがちなのが勝手口ではないだろうか。調査によると、勝手口で多くみられるのは、勝手口ドアの格子付きの上げ下げ窓が開いている(無施錠)状態での被害だという。換気のために開けておきたい場合もあるが、外出時には注意が必要だ。

また、水まわりや裏手に設ける窓などに、面格子を設置するケースもある。調査では、面格子がついている窓への侵入リスクは、面格子がない場合と比較し3分の1程度という結果もあり、設置することで防犯性は高まっていることが分かる。しかし、浴室では、面格子を設けていても、窓自体が開いている状態での侵入が多いというデータも。面格子を設置しているということで過信はせず、外出時などには窓を閉め忘れないことが大切だろう。

その他、最近、設置する方も増えてきている窓シャッター。防犯面はもちろん、異常気象が続く中、強風による飛来物への不安などを理由にニーズが高まっている建材だ。調査によると、シャッター付きの窓の場合は、シャッターを破壊しての侵入被害は15年間で7件だったのに対し、シャッターが空いていた状態での侵入が219件あったという。窓シャッターを閉めておくことで、防犯性は高まることが分かる。

商品としても、こじ開けやスラット外しなどに強い構造などにより防犯性能も高まっており、手動で操作するだけでなく、リモコンやスイッチによって操作できる電動タイプもある。窓プランと合わせて窓シャッターの設置も検討したい。

(上)シャッター開閉状態別侵入+未遂件数
(下)居るふり点灯

(上)シャッター開閉状態別侵入+未遂件数 (下)居るふり点灯

日々の生活の中では、「夜を想定した戸締り」と「居るふり点灯」がポイント

暮らしの中での防犯対策としては、外出時の基本的な施錠はもとより、「夜を想定した戸締り」がポイントだ。夕方から夜の犯行が多いと言われる空巣に対し、夜になって室内の照明がついていないと留守と認識されてしまう。昼間からの外出でも、シャッターを閉める、照明をつけておく、などの対策を考えたい。玄関や室内の照明には、タイマー付きの器具を取り入れ「居るふり点灯」させることも有効と考えられる。車社会で正面からの被害の多いエリアでは、車から見て留守に見えないことが重要だ。最近ではスマートフォンで遠隔操作が可能な機器や建材も増えている。ライフスタイルに合わせて検討したい。

防犯性の高い住まいとするためには、地域性や周辺環境などを考慮したプランとすることが重要だ。暮らすエリアの被害状況や不審者の行動などについても確認しておきたい。その上で、敷地やライフスタイルに適した外構プランや間取り、防犯設備や建材など取り入れ活用することが大切だろう。


■調査の概要
調査の目的:侵入被害実態の変化の把握と、防犯対策の効果検証
調査時期:2006~2020年(15年間)
調査方法:ヘーベルハウスの修理依頼・履歴から侵入・未遂被害を抽出・集計
調査対象:防犯仕様が導入された2003年1月以降に契約された、自社設計施工の戸建て住宅
調査対象数:833件(うち侵入件数637件、未遂件数196件)

取材協力:旭化成ホームズ株式会社

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