管理が不十分なマンションが増えている

外壁、手すりが崩落した事例。管理が行き届かなくなった結果、このような事態になることもあり得る(出典:国土交通省「マンション政策の現状と課題」)外壁、手すりが崩落した事例。管理が行き届かなくなった結果、このような事態になることもあり得る(出典:国土交通省「マンション政策の現状と課題」)

「マンションは管理を買え」と言われている。常に隅々まで清掃が行われ、共用部分の傷んだ部分も放置されることなく補修しているような管理が行き届いたマンションは、築年数が経っても高い快適性と資産価値を維持できるからだ。

ところが高経年マンションの増加にともない、管理が不十分な物件が目立つようになってきた。国土交通省のデータによると、2018年末時点のマンションストック数は約654.7万戸。そのうち築40年超の物件は約81.4万戸あり、10年後には約2.4倍の197.8万戸、20年後には約4.5倍の366.8万戸になると推計されている。高経年マンションは、区分所有者の高齢化や非居住化(賃貸・空き住戸化)が進行することで、管理組合の役員の担い手不足や総会運営に支障をきたしているケースが多い。その結果、適切な管理が行われなくなり、快適性や資産価値の低下だけでなく、外壁や手すりの落下など居住者や周辺住民の身体に危険を及ぼす事態も発生している。

このような背景から2022年4月より改正マンション管理適正化法が施行され、同時にマンション管理適正評価制度がスタートすることとなった。

マンション管理適正評価制度とは

マンション管理適正評価制度は、専門家が定期的にマンションの管理状態を評価し、その結果に応じたインセンティブ(報酬)が得られる仕組みだ。

評価方法は次のような流れになる予定だ。

① 評価依頼
マンション管理組合からマンション管理会社へマンションの評価を依頼する。
② 管理状態をチェック
管理会社が登録システムを利用し、評価シートの作成を行う。
③ 登録申請
管理会社の認定マンション管理士(仮称)または認定管理業務主任者(仮称)が評価結果の登録を依頼する。
④ 審査・仮評価
一般社団法人 マンション管理業協会が審査、仮評価を行う。
⑤ 本登録
マンション管理業協会が評価結果を物件管理情報システムに登録する。
⑥ 登録証発行
マンション管理業協会から管理組合へ評価結果を通知する。

マンション管理適正評価制度の流れ。マンション管理組合が管理会社へ評価を依頼し、一般社団法人 マンション管理業協会が審査等を行うマンション管理適正評価制度の流れ。マンション管理組合が管理会社へ評価を依頼し、一般社団法人 マンション管理業協会が審査等を行う

最高100ポイントで管理状態を評価

評価内容は、以下のようにマンションの管理状態を5つのカテゴリーに分類し、建物などのハード面と管理組合の運営状態などのソフト面の両方をポイント付けするものだ(最高100ポイント)。

1.管理組合体制関連事項(20ポイント)
管理者の設置、総会の開催、規約の整備状況など。

2.組合会計収支関連事項(40ポイント)
管理費会計の収支、修繕積立金会計の収支、滞納管理費等の対策、修繕に関する資金計画の状況など。

3.建築・設備関連事項(20ポイント)
法定点検の整備、長期修繕計画書の有無、修繕履歴の保管など。

4.耐震診断関連事項(10ポイント)
耐震診断実施の有無、耐震診断結果と改修計画の有無など。

5.生活関連事項(10ポイント)
設備等異常時の緊急対応、消防訓練の実施、防災マニュアル等の整備状況など。

高評価でも低評価でも得るものはある

制度の利用は任意だが、良い評価を受けることで次のようなインセンティブが期待できる。

・住みやすく、居住者の満足度が高いマンションと認定される
・リセールバリューの向上が期待できる
・管理組合が加入する火災保険料等の割引が期待できる
・リバースモーゲージ(※)を利用する際、高評価を得ることが期待できる

制度の開始を前に、マンション管理業協会は等級評価の仮評価を実施、公表した。有効数6万3,969棟のうち、5段階評価で最も高いS評価は6,714棟と全体の1割だったという。次いでA評価が最も多く3万4,921棟、最低評価のD評価は303棟となった。

とはいえ、結果に一喜一憂するための制度ではない。評価の有効期限は1年間であり、良い評価を得た場合も評価を維持できるよう努める必要があるし、悪い評価を受けたとしても「評価が数値で表れるので管理状態の改善点が分かる」といったメリットがある。マンションの管理状態の良し悪しを客観的に把握し、結果を管理組合の運営や長期修繕計画の見直しなどに活用してこそ意義のある制度である。

※リバースモーゲージ:自宅を担保に生活資金を借入れし、死亡した後に担保となっていた自宅を売却して借入金を返済する仕組み。

マンション管理適正評価制度の利用が当たり前になる日に期待

マンション管理適正評価制度は2022年4月に開始され、火災保険料の割引などインセンティブの適用は同年10月頃からを予定している。そして評価は毎年更新され、その結果は専用サイトに表示されることになっている。また、不動産ポータルサイト等から同サイトへリンクさせることも検討中だ。それらによって一般の人が手軽に良質な管理状態のマンションを知ることができるようになる。これは中古マンションの購入を検討する際の大きな判断材料にもなるだろう。

住みやすくて長寿命なマンションのストック形成のため、安心できる中古マンションの市場形成のため、マンション管理適正評価制度の利用が当たり前になる日を期待している。

マンションの管理状態は、中古マンションの購入を検討する際の判断材料になるマンションの管理状態は、中古マンションの購入を検討する際の判断材料になる