過去、消費増税時の住宅購入状況はどうだったのか?
2017年4月に予定されるはずであった消費税率10%への引き上げの再延期論が拡がりを見せている。実際に予定通り消費税率が10%に引き上げされるのかは、今後の動向を注視する必要がある。
消費税法は1988年に国会で成立し、1989年4月から税率3%が提要された。1997年4月からは5%に引き上げられ、2014年4月に8%となった。2015年度税制改正関連法が2015年3月31日の参院本会議で可決・成立し、同年10月に予定していた消費税率10%への引き上げを1年半延期、2017年4月を増税時期とすることが確定していた。税制改正関連法では、「景気条項」が削除され、景気情勢次第でさらに先送りをしない、つまりは"ほぼ確定"という解釈であった。
これまでも、消費税率の引き上げは住宅購入の動きに大きな影響を与えてきた。
参考までに過去の新築住宅着工数の推移をみていくと、消費増税の前と後では、いわゆる駆け込み需要に対応した動きとその後の反動減が見られる。
多くの方がローンを組んでまで購入をする、"人生の大きな買い物"である住宅は本来何に「お金」を支払っているのだろうか?消費増税についての動きが気になるこの時期に、住宅購入について再考してみたい。
消費税引き上げ時の駆け込み需要と反動減
上記のグラフのように、過去、消費税導入時の3%の際にも、その後5%の増税の際にもその時期の前に住宅着工数が伸び、その後、反動減で数字の落ち込みが見られる。供給側も含めて、消費税の動きを意識してきたことが見受けられる。もし仮に2017年4月に予定通り増税されるとなると、今回の増税による住宅取得の駆け込み及び反動減が起こるのはいつからなのだろうか?
住宅の消費税は原則的に引き渡し時の税率が適用される。契約時期や内容にかかわらず、17年3月末までに引き渡しを受けることができれば税率8%となり、4月以降になると10%が適用されることとなる。この条件だけ考えると、反動減が起こるのは2017年4月からが予想される。が、建築請負契約に限っては、引き渡しまでの期間がかかることを考慮して、2016年9月末までに契約を締結すれば、引き渡しが2017年4月以降になっても税率8%のままという経過措置が適用される。とすると、この条件も考えると経過措置期限が切れる2016年10月からの反動減が考えられる(※税率の下図参照)。
8%の増税の時は、その後10%まで増税されることが告知されていたため、駆け込み需要の増加が多く報じられた。そのため、一時的に住宅建材の不足や着工のための人手不足が伝わり、着工を急ぐがゆえの手抜き工事も出てくるのでは?との懸念もあった。また、人気の物件に人が多く集まり、くじ引きなどによる抽選で結果的に第一希望の物件を購入できなかったケースなどもあった。
また、その後の反動減は明らかであり、住宅・不動産業界のこの間の業績不調は少なからず、その後の景気動向にも影響が出ている。
住宅の取得をどう考えるか?
“できるだけ安く買いたい”という消費者視点は住まい取得の考え方としては、正しいのであろうか?
「住宅を資産として考えた場合、実は取得時にかかるコストに左右されるのではなく、売却時の価値がどの程度維持されているかをイメージすることが重要です」と、HOME'S総研 副所長 チーフアナリスト 中山 登志朗氏はいう。
「まずは、今回の消費増税があったとしても8%から10%への2%の増加であること。
2%の増加の影響がどのくらいなのかを冷静に考えてみましょう。物件購入時にかかる消費税はそもそも土地にはかからず、建物上物にかかるものです。例えば都内の高額物件で土地を合わせると1億を超える物件であっても、建物分の価格が仮に5000万円であれば、8%の時と比較をすると今回の増税が施行されたとしても100万円の差しかありません。
高額物件でもそのくらいですから、総額の上昇分に左右されると"住宅購入の本質"を見失うリスクが高まる、と思います」。
それでは、住宅購入の本質とは、何であろうか?
住宅購入の本質とは?
「まずは、住まいとして“安心・安全に、そして幸せに自分と家族が暮らせること”だと考えます。そして、住宅購入をきっかけとして、将来の資産形成をイメージする事です。
資産形成というと株などの投資をイメージする方もいるかもしれませんが、住宅は実は将来の不労所得として有効に活用することを考えることができる資産なのです。大抵の方がローンを組んで住宅を購入し完済を目指しますが、完済後の住宅資産はライフステージが変わると、例えばリバースモーゲージの制度を活用できたり、賃貸にまわすことで生活費としての糧とすることもできます。もちろん、売却することで次の住まいへの資金とすることも…。住宅購入をするということは、資産をもつことによって、将来の自分と家族の生活を安定させること、もしくはその可能性を高めることであると考えます」と、中山氏。
「もう少しいうと“いくらで買えるか”ではなく、“売るとしたら、いくらで売れるのか”が大切となってくるのです。
"消費増税前が買い時だ。予算内で消費増税前に買えるところを買おう"ではなく、"ここに購入をすることで、自分と家族の暮らしが豊かになる、将来が守れる"というイメージができる住宅を購入することが本質なのです」という。
2017年消費増税後も、住宅取得の消費税対策制度を賢く利用しよう
住宅購入の本質は、先の章で述べたが、もちろん少しでも賢く買いたい…というのも大切だ。国交省も、消費増税の際に、少しでもメリットがあるようにと様々な制度を提供している。
民間を含む住宅ローンの低金利政策もそうであるし、少しではあるが「すまい給付金」の制度も活用できる。また、まだあまり浸透していないようだが、期間限定で贈与税非課税枠の拡大(1年限定2016年10月から2017年9月末まで、最大3000万円の贈与税非課税)も決定している。
「住宅購入は中長期的な視点に立って購入を考えるべきものだ、ということです。住宅購入のポイントとしてよく言われる 1)立地(数字で見える利便性:駅から何分とか)、2)スペック(物件のスペック:間取りや広さなど)、そして3)ロケーション(環境条件:公園、学校、お店など生活利便性)をよく考え、将来の資産価値を意識して選ぶことが、何より大切だと考えます」と中山氏もアドバイスする。
世間の"買い時"に踊らされるのではなく、本質をじっくり考えて、購入物件を選ぶことが幸せな住宅選びにつながる。立地・スペック・ロケーションを比較検討しながら、新築だけでなく、中古物件も含めて考えてみるとよいだろう。
そして、消費税対策制度などを賢く使って、納得のいく住宅選びをしてもらいたい。






