アメリカ発。建物の「環境性能」を可視化するLEED認証とは?

空気がきれいで、安心して遊び回れる自然を未来に残すには…?空気がきれいで、安心して遊び回れる自然を未来に残すには…?

先日、日本の2013年度温室効果ガスの排出量が13億9,500万トンと、統計を取りはじめてから過去最大となったニュースが流れた。原発停止により石炭などの化石燃料の消費量が増え、二酸化炭素の排出が増えたことが主な原因とみられている。
地球温暖化につながる温室効果ガスの日本の排出量は、中国・アメリカ・インド・ロシアに次いで5番目である。

これは他人ごとではない。私たちは日々の暮らしのなかで自動車や電化製品を使い、二酸化炭素を排出している。排出量の内訳をみると「家庭、業務その他部門」は4億8,400万トンにのぼる――。

前途ある未来を子どもたちに残すために、私たちは何を考えるべきか?
今回は、アメリカの「グリーンビルディング協議会」が制定した建築物の環境負荷低減の世界基準「LEED(Leadership in Energy&Environmental Design)」を受賞した街づくりから、環境配慮を前提とした“未来の住みたい街”を考える。

点数制で誰にでも分かりやすいLEED

LEEDで高い評価を受けた「リボンストリート」は、駅から河川敷までを貫く歩行者専用通路LEEDで高い評価を受けた「リボンストリート」は、駅から河川敷までを貫く歩行者専用通路

東京世田谷区にある「二子玉川ライズ」。住居・オフィス・商業施設等から成るこの複合施設は、東京ドームのおよそ2.5倍という都内では最大級の再開発。1期工事で約250の店舗を擁する商業施設と計5棟のタワーマンション・低層マンションを、2期でホテル・オフィス・シネコン等の複合施設をつくる。1期は2011年3月に開業、2期は一部施設を2015年春にオープンする予定だ。

この二子玉川ライズと、隣接する二子玉川公園を合わせた地域が、2014年9月に「LEEDまちづくり部門」で日本初のゴールド予備認証を取得した。
LEED認証のレベルは、最高がプラチナ、以下ゴールド・シルバー・標準と続き、まちづくり部門のほか、新築ビル、既存ビル、住居、小売店など9つのカテゴリがある。
まちづくり部門の評価基準は、
1)スマートな立地選択と土地利用
車社会脱却のための公共交通機関との連携・歩道の整備。生態系保全を長期的に行う緑地保全管理計画の策定など
2)エリア開発形態とコミュニティデザイン
商業・オフィス・多くの住戸パターンを持つ住宅など、様々な人々が多目的に集う複合機能都市かどうか。歩いていて楽しく安全な歩行者空間があるか、など
3)グリーンインフラ&グリーンビルディング
新築棟の9割以上に一定以上の省エネ・節水性能を確保。エネルギー効率の高い設計・施工で環境配慮をしていること、など。

各評価基準に必須項目・選択項目があり、基準を満たしている部分を点数化し認証レベルを決める。厳格な評価基準に基づく第三者認証制度であり、定量的で誰にでも分かりやすいのがLEEDの特長だ。

二子玉川ライズの評価ポイント――“世界基準”の環境性能とは?

二子玉川東第二地区市街地再開発組合の江口祐輔さん二子玉川東第二地区市街地再開発組合の江口祐輔さん

二子玉川ライズの2期工事で建設中のオフィス・商業施設には、約28,000m2の敷地に屋上緑化を使って6,000m2ほどの緑地を設ける。この緑地には開発エリアの周辺にある樹木が植樹されるほか、多様な生物が棲む多摩川の生態系を学べる「めだかの池」、土に触れ・育てる楽しみを共有し、食育に貢献する「菜園広場」をつくる予定。また、かつては多摩川に多く生息していたが、生息地が玉石河原に限られているために年々その数が減っている希少植物「カワラノギク」の保全を目的にしたエリアも設置する。

「屋上緑化は管理費がかかるため、当初、事業者にとってはマイナス要素でした。ただ、昭和30年代から二子玉川の住人と多摩川はずっと共存して暮らしてきたので、地域貢献の観点からマイナス要素だった緑地をアピールポイントと捉えて、多摩川の自然を再現しています。2期工事ではシネコンの上に太陽光パネルを設置して、植栽の照明に利用するなど再生可能エネルギーも積極的に取り入れています」と、二子玉川東第二地区市街地再開発組合の江口祐輔さん。

その他、リサイクル材・地場産材の利用、貯水槽設置による災害対策、雨水利用による高い上水削減率など、設計・建設段階での環境対策も評価されている。ただ、LEED取得は開発当初から狙っていたのではないそう。
「二子玉川の再開発には地権者の交渉等で30年という長い期間がかかっています。長期にわたる街づくりを多くの人に認めてもらい、広くアピールしていくためには、第三者からの評価は重要だと考えLEED取得に取組みました。また、二子玉川の価値向上にも寄与できると思っています」
まちづくり部門でゴールド認証を取った場合“日本初”とうたえることも一因だという。消費者にとって分かりづらい環境保全努力が、公正な立場から分かりやすく評価される価値は大きいということだろう。

環境性能の“お墨付き”に経済効果はあるか?

第三者による環境評価は、その地域の価値向上につながるか…?第三者による環境評価は、その地域の価値向上につながるか…?

日本では、LEED取得は環境配慮企業としてのブランディング、地球温暖化の課題に対して企業が果たしている責任の可視化など、企業CSRやイメージ向上の側面が強いように感じる。もちろん環境保全を伴う再開発は進歩だが、経済効果が無いと“LEED取得ブーム”で終わる可能性がある。では、一過性で終わらせないためにどうすべきか…。ヒントは江口さんの言葉にあった。

「LEED認証を受けたマスコミ説明会で、金融系からの出席者が目立ちました。皆さん、LEED取得が入居率やリーシングに効果的かどうか、不動産価値の向上につながるかに注目していました。日本ではまだ認知率が低く認証件数も少ないですが、アメリカではLEED取得が与える経済効果の研究が進んでいます」

厳密な評価基準による第三者認証は、環境配慮を重視する企業や入居者の誘致に有利に働くだろう。入居率が向上すれば、結果として不動産価値は向上するのではないか。さらに長い目で見れば、再生可能エネルギーの利用は建物の維持・運営経費の削減につながるし、将来起こりうる環境規制強化などへの対応費用リスクも低減する。

環境保全の第三者認証が“当たり前”になる未来に

「世界基準の環境性能を持つ街」は、近い将来に憧れになる「世界基準の環境性能を持つ街」は、近い将来に憧れになる

LEEDのように環境保全を前提とした建築物の第三者評価制度はほかにもあり、日本の「CASBEE(建築環境総合性能評価システム)」、ヨーロッパで標準基準として使われるイギリスの「BREEAM(Building Research Establishment Environmenta  Assessment Method)」が特に知られている。
これらの取得による経済効果が伴えば、“環境に配慮したビルを建てる・買う・借りるのが当たり前”という未来がくるのは充分に考えられる。

「日本初の“LEEDまちづくり部門ゴールド予備認証”という名誉に様々な問い合わせをいただいています。建築・不動産業界で環境性能の高い開発が当然だ、というトレンドになれば良いなと思います。また、二子玉川ライズに暮らす人、働く人、遊びにくる皆さんが、多摩川と繋がった緑いっぱいの再開発を見て、少なからず環境保全を考えるきっかけになると良いですね」

“世界基準の環境性能を持つ街で暮らす”ことが誇りになる日は、近い将来にきっと来るはずだ。