平均年齢37.7歳、住みよさランキング第4位!

名古屋市の東側に隣接する愛知県長久手市。
歴史好きな人には、羽柴(豊臣)秀吉と徳川家康が直接刃を交えて戦った「小牧・長久手の戦い」の地、と言ったほうがピンとくるかもしれない。中部エリアに縁のない人にはあまり知られていない都市だと思うので、まずは長久手市の基本情報を紹介しよう。

長久手市は2012年1月に町からの単独市制施行を実現した、誕生して数年の若い市である。
総人口は約5万2千人、市民の平均年齢は37.7歳で全国1位の若さ(2010年国勢調査)、人口増加率は11.9%で県内1位・全国11位(2005年~2010年国勢調査)。市としての若さもさることながら住む人々も若く、とにかく“若さあふれる市”という印象を受ける。

平均年齢が若い理由の一つには、市内に大学が4校(周辺地域を合わせると11校)あって学生が多く住んでいるということもあるのだが、人口グラフを見ると30~40代が突出しており、この世代が市民平均年齢の若さをけん引しているともいえそうだ。

長久手市は市外や県外からの転入者が多く、古くからこの地に住む人と、新しく住む人が混在している。そうなると、新旧の住民が互いに相いれないこともあるのではないかと思うのだが、某経済誌の「住みよさランキング2014」で長久手市は全国4位という高い評価を得ており、住民にとって風通しがよく住みやすいという魅力があるようだ。

出典:長久手市勢要覧補足資料〈長久手市データファイル〉出典:長久手市勢要覧補足資料〈長久手市データファイル〉

新しい町並みあり、田園風景ありの恵まれた環境

環境面に目を移してみると、東西が約8km、南北が約4kmという実にコンパクトなエリア。名古屋市営地下鉄「藤が丘駅」に隣接する長久手市西部には新しい町並みが見られ、東部には昔ながらの豊かな田園風景が残り、南部にはおしゃれな住宅街が広がり、北部には地域行政活動の拠点となる市役所がある。

市の東西を日本で唯一の“磁気浮上式リニアモーターカー”通称「リニモ」が結び、通勤者や沿線周辺の大学に通う学生、観光施設を訪れる多くの人々がリニモを利用している。
主な観光施設としては、2005年に開催された愛・地球博の長久手会場跡地を利用した「愛・地球博記念公園(モリコロパーク)」や「トヨタ博物館」「古戦場公園」などがあり、近年では特に「あぐりん村」が人気を集めている。あぐりん村には、地元で採れた野菜を売る農産物直売所やレストランがある。また、同敷地内には天然温泉である「長久手温泉」もあり、今や長久手の人気スポットになっている。

また、大学が多いエリアとあってしゃれたカフェやスイーツの店なども多く、地元の情報誌などで特集を組まれているのをよく見かける。

……という長久手市は、筆者には“おしゃれで裕福なまち”というイメージがある。そんなまちの自治体なら、きっとリッチな行政活動をしているのではなかろうかという好奇心にかられ、市役所を訪ねてみることにした。

鮮やかなグリーンの時計台が目を引く長久手市役所の正面入口(左上) 電気と磁石で浮上走行するリニモは騒音や振動が少ないのが特長(右上) “古戦場”という名がつく駅名はおそらく全国でもここだけ!(右下) 人気のスポット「あぐりん村」には名古屋からも多くの人が訪れる(左下)鮮やかなグリーンの時計台が目を引く長久手市役所の正面入口(左上) 電気と磁石で浮上走行するリニモは騒音や振動が少ないのが特長(右上) “古戦場”という名がつく駅名はおそらく全国でもここだけ!(右下) 人気のスポット「あぐりん村」には名古屋からも多くの人が訪れる(左下)

市制施行と共に誕生した「たつせがある課」

筆者が訪問させていただいたのは、くらし文化部「たつせがある課」。初めて課名を聞いたときは、なんだそりゃ? と思った。課名の意味と課の役割について、たつせがある課 地域協働係の長谷川さんに話を伺った。

「“たつせがある”という言葉は、たつせがない(自分の役割や居場所がない)の対義語として市がつくった造語です。長久手市になってすぐの2012年4月に、市民一人ひとりに役割や居場所があるまちづくりを進める課として立ち上がりました」

吉田一平市長は、新生長久手住民プロジェクト「絆」をテーマに3つのフラッグ(基本理念)「一人ひとりに役割と居場所があるまち」「助けがなかったら生きていけない人は全力で守る」「ふるさと(生命ある空間)の風景を子どもたちに」を掲げ、日本一の福祉のまちづくりを推進している。その具体的な取り組みを行っているのが、長谷川さんが所属している、たつせがある課なのだ。

たつせがある課の特長として挙げられるのは、市民との協働事業が多いということ。長谷川さんに、何かユニークな活動事例があるか尋ねてみたところ「住民プロジェクト推進事業」が面白いとのこと。

たつせがある課は11名のメンバーで構成されている。写真は課長の吉田弘美さん(後列左)、地域協働係長の名久井洋一さん(後列中央)、主任専門員の粕谷庸介さん(後列右)、お話を伺った長谷川礼菜さん(前列左)、課長補佐の福岡弘恵さん(前列右)たつせがある課は11名のメンバーで構成されている。写真は課長の吉田弘美さん(後列左)、地域協働係長の名久井洋一さん(後列中央)、主任専門員の粕谷庸介さん(後列右)、お話を伺った長谷川礼菜さん(前列左)、課長補佐の福岡弘恵さん(前列右)

未来の市長が生まれるかも? 若手職員と若手市民の協働まちづくり

「住民プロジェクト推進事業」というのは、市の若手職員と公募で集まった若手市民が一緒になって、まちづくりについて考え、実践するという取り組みだ。現在、定期的にワークショップを行ったり、他の地域のまちづくり事例の視察に出かけたりといった活動を通して、具体的なプロジェクトの立ち上げを目指している。

「この取り組みの目的は、市民と市職員の垣根を超えて自分たちで地域のことを考え、自分たちで地域をもっと魅力あるまちにすることです。また、そのために必要なスキルを身につける場でもあるんです」

参加者の年齢制限は40代までとなっているが、そのほかに制限はなく、まちづくりに関心のある長久手市の住民や在勤者なら誰でも参加できる。登録者は職員と市民合わせて50名ほどで、会社員や公務員、建築士、大学生など多彩な顔触れが集まっているという。もちろん長谷川さんもメンバーの一人だ。

「まちづくりに参加したいとか、地域の課題を解決したいとか、信念を持って意欲的にまちづくりに取り組みたいという方たちが集まっています。ほかの地域の事例を学んで『長久手ではこんなことができるんじゃないか』など、若手ならではの新しいアイデアがわいてきています!」

若手市民と若手職員によるワークショップチーム、その名も「なでラボ(ながくてできたてラボラトリーの意)」。</br>ネーミングも参加者自身が考えたという若手市民と若手職員によるワークショップチーム、その名も「なでラボ(ながくてできたてラボラトリーの意)」。
ネーミングも参加者自身が考えたという

地域住民がつくった地域住民のためのコミュニティ施設

さらに、たつせがある課ならではの特筆すべき取り組みに「地域共生ステーション」の整備事業がある。

地域共生ステーションというのは公共施設だが、公民館とはまったく違うもの。地域の人がふらっと立ち寄って、雑談したり食べたり飲んだり、何かプログラムを提案して開催したりできる、何ともファジーなコミュニティの場だ。施設内にはコミュニティスペース、会議室、キッチン、授乳室が設けられている。

現在、この地域共生ステーションは西小学校区に一つあるのみ。これを長久手市内6つの小学校区に整備するというのが、たつせがある課のミッションだ。西小学校区のステーションは2013年にオープンしたばかりで、地域の人たちが何度も話し合いを重ね、地域性に合ったステーションの整備へとこぎつけた。行政主導ではなく、行政と地域の人が協働でこうした施設をつくったというのが面白い。

2014年9月現在、北小学校区で地域共生ステーション整備に向けての活動が進んでおり、南小学校区では初めてのワークショップが開催された。

市と同様に誕生して数年の、たつせがある課の取り組みは、いずれもまだ道半ばといったところ。市民との協働は大変なことも多いと思うが、長谷川さんはやりがいがあるという。

「職員と市民の方のニーズがアンマッチだったり意見が合わなかったり、難しい局面に当たることもありますが、そこは話し合いです。お互い理解し合って行動するには、やっぱり時間がかかりますから。そういうなかで尊敬できる市民の方との出会いがあったりするのは楽しいですし、頑張ろうとも思います。私たち公務員も10年、20年後のことを見据えて考え方を変えなくちゃいけない時代。お決まりのことをやっていてはいけませんよね」

長谷川さんの話を聞き終わる頃には、最初に抱いていた“裕福な自治体・長久手市”というイメージが“考えて行動するアクティブな自治体”に変わっていた。

次回は、南小学校区地域共生ステーション整備に向けた第1回ワークショップの様子をレポートする。

【取材協力】
■長久手市役所  http://www.city.nagakute.lg.jp/
【関連リンク】
■リニモ http://www.linimo.jp/

共生ステーションのコンセプトは「ふらっと小屋(こやぁ)~一人ひとりが主人公」。“こやぁ”は名古屋弁で「おいで」の意味。会議室は有料(要登録)だがコミュニティスペースやキッチンは無料で利用できる。テーブルや食器などは住民の持ち寄りでまかなわれているという共生ステーションのコンセプトは「ふらっと小屋(こやぁ)~一人ひとりが主人公」。“こやぁ”は名古屋弁で「おいで」の意味。会議室は有料(要登録)だがコミュニティスペースやキッチンは無料で利用できる。テーブルや食器などは住民の持ち寄りでまかなわれているという