国税庁「令和2年分 民間給与実態統計調査(令和3年9月)」によると、平均給与は433万円となっています。年収850万円は平均的な年収と比べてかなり高い水準です。とはいえ、生活費や住宅ローン計画などによってはゆとりがないと感じられてしまうケースもあります。

今回は、年収850万円世帯の手取りや生活費、適正家賃や住宅ローン借入額をまとめました。どのような家が買えるのかも見ていきましょう。
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給与明細

 

年収850万円といっても、もちろんそのまま850万円を年間で使えるというわけではありません。生活費や住宅ローン借入額などを考えるうえでは、まず手取り額がどのくらいになるのかを把握しておくことが重要です。

手取りとは額面収入から所得税や住民税、社会保険料などを差し引いた金額のことであり、具体的な割合は家族構成などによって異なるものの、年収の75~85%ほどとなるのが一般的です。

 

ただ、日本では累進課税制度が導入されているので、年収が平均よりも高い850万円である場合、手取りは年収の75%程度と考えておくほうが安全です。そのため、年間では「637万~650万円」程度が目安です。

 

月額換算すると、ボーナス支給額を考慮しなければ、「52万~54万円」程度となります。

家計から住宅購入予算を試算する

生活

 

続いて、「家計調査報告(家計収支編)2020年」のデータで、年収850万円の世帯がどのくらいの生活水準を保っているのか見ていきましょう。なお、データには実家住まいや持ち家などの世帯も含まれていることを考慮し、住居費は除いて計算します。

家計調査における単身世帯の年収分類は600万円以上が最高値になっているため、ここでは600万円以上世帯の生活費データを見ていきます。住居費を除くと、1ヶ月当たりの平均生活費は「21万9,521円」となりました。

費用項目

食費

5万1,600円

水道・光熱費

1万2,938円

家具・家事用品費

8,602円

被服費

1万3,943円

保険・医療費

1万102円

交通・通信費

3万4,719円

教養・娯楽費

2万4,356円

その他の費用

6万3,262円

合計

21万9,521円

参考までに、単身世帯における全体的な生活費平均額を計算すると、住居費を除いて「12万9,558円」となります。この結果と比較すると、年収600万円以上世帯は、月々9万円近くゆとりのある生活水準を保っていることが分かります。

続いて、年収800万~900万円の2人以上世帯における平均的な生活費は、住居費を除いて1ヶ月当たり「30万5,846円」となりました。単身世帯と比べたとき、単純に倍額とはならない費用項目も数多くあるので、1人当たりで計算すれば単身世帯よりも安くなります。

 

細かな内訳は以下のとおりです。

費用項

食費

8万3,786円

水道・光熱費

2万2,457円

家具・家事用品費

1万4,114円

被服費

1万2,086円

保険・医療費

1万5,210円

交通・通信費

5万1,167円

教育費

1万5,923円

教養・娯楽費

2万9,934円

その他の費用

6万1,169円

合計

30万5,846円

年収850万円世帯の適正家賃・住宅ローン借入額

 

続いて、適正家賃と住宅ローン借入額についても詳しく見ていきましょう。

一般的に、無理のない家賃の目安は「手取りの3分の1以下」とされています。前述したように、年収850万円世帯の手取りは月額52万~54万円と想定できるため、計算上は「家賃約17万3,000~18万円」までが適正範囲と考えられます。

 

しかし、「趣味にお金を使いたい」「貯蓄に多くのお金を回したい」など、個別のライフスタイルによっても適正範囲が異なる点には注意が必要です。そのため、手取りから生活費などの固定費を引いて、具体的な金額を計算することも大切です。

 

たとえば、先ほど紹介した平均生活費のデータを参照すると、単身世帯では「約30万~32万円」が手元に残ります。ここから貯蓄や万が一のための予備費などを残しておくとしても、家賃は手取りの3分の1より少し高く設定することも可能といえるでしょう。

 

また、2人以上世帯でも手元に20万円以上は残る計算となるので、適正範囲の家賃であれば無理なく生活していけると判断できます。ただ、子どもの教育費や将来住宅を購入するための頭金の貯蓄といった費用を考えると、家賃の水準を下げてゆとりと持たせることも大切です。

住宅ローンの適正借入額については、「返済負担率」から計算するのが近道です。返済負担率とは「年収に対する年間返済額の割合」のことで、毎月の返済額と年収のバランスを確かめるうえで重要な指標となります。

 

たとえば、年収850万円で毎月15万円の返済を続ける場合、返済負担率は「15万円×12ヶ月÷850万円=21%」となります。一般的に、無理のない返済負担率は「25%以内」とされているので、まずはこの数値を基準にして借入額を考えてみるといいでしょう。

 

LIFULL HOME’S「住宅ローンシミュレーター」を使い、以下の条件で借入可能額を試算してみます。

条件

  • 世帯年収:850万円
  • 毎月返済額:17万7,000円(返済負担率約25%)
  • 金利:全期間固定金利1.5%
  • 返済期間:20年、30年、35年の3パターンで計算
  • その他の条件:頭金なし、ボーナス併用払いなし

上記の条件で計算すると、借入可能額は以下のとおりになりました。返済期間を30年以上に設定すれば、5,000万円を超える融資額も無理なく返済できる計算となります。

 

借入可能額

返済期間20年

3,668万円

返済期間30年

5,129万円

返済期間35年

5,781万円

月々の返済額を調べる 家賃相場を調べる

一戸建て

 

先ほど試算したシミュレーション結果では、返済期間35年に設定した場合、無理なく借りられる住宅ローン融資額は「5,781万円」となりました。この金額は住宅購入所要資金の全国平均を大きく上回る水準であり、「おおむね理想を実現できる価格帯」であるといえます。

 

一方、地価の高い首都圏など、エリアによっては平均額を少し上回る程度の金額となります。住宅金融支援機構が調査した「2020年度 フラット35利用者調査」によれば、首都圏における土地付き注文住宅の平均所要資金は「5,162万円」です。

 

そのため、予算は購入するエリアに合わせて考える必要があります。ここでは、東京都と一般的な地方都市に分けて、購入できる住宅の事例を見ていきましょう。

LIFULL HOME’Sの「価格相場」で新築一戸建ての価格相場をリサーチすると、5,781万円は都心部などの一部地域を除き、23区内の多くのエリアで購入が可能な価格帯となります。また、23区外であれば、広さや設備、デザインなどにこだわった住宅を購入することも十分に可能です。

 

今回は参考例として、新築と中古それぞれで購入可能な物件の事例を紹介します。

新築一戸建ての例

  • 所在エリア:東京都北区
  • 交通アクセス:最寄り駅から徒歩11分
  • 建物面積:約103m2
  • 間取り:2SLDKの3階建て(専用駐車場付き)
  • 主な設備:ウォークインクローゼット、全居室収納付き、床暖房 など

続いて、中古一戸建ての事例も見ていきましょう。

中古一戸建ての例

  • 所在エリア:東京都大田区
  • 交通アクセス:最寄り駅から徒歩13分
  • 建物面積:約105 m2
  • 築年数:7年
  • 間取り:3SLDKの3階建て(専用駐車場付き)
  • 主な設備:全居室収納付き、浴室乾燥機、システムキッチン など

地方都市の場合は、東京都と比べて購入できる物件やエリアの選択肢が大きく広がります。ここでは、地方都市の例として宮城県仙台市の物件を例に見ていきましょう。

新築一戸建ての例

  • 所在エリア:宮城県仙台市
  • 交通アクセス:最寄り駅から徒歩7分
  • 建物面積:約92 m2
  • 間取り:4LDKの2階建て(専用駐車場2台分付き)
  • 主な設備:ウォークインクローゼット、システムキッチン、浴室乾燥機 など

中古一戸建てであれば、さらに高性能な設備・仕様を備えた物件の購入も視野に入る価格帯といえます。

中古一戸建ての例

  • 所在エリア:宮城県仙台市
  • 交通アクセス:最寄り駅から徒歩8分
  • 建物面積:約204 m2
  • 築年数:19年
  • 間取り:7LDKの2階建て二世帯住宅(専用駐車場4台分付き)
  • 主な設備:LDK・浴室・トイレ2つずつの二世帯住宅向き設備、その他設備多数 など
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マンション

 

次に、年収850万円で無理なく購入できるマンションの特徴も見ていきましょう。なお、「2020年度 フラット35利用者調査」によれば、新築マンションの平均購入価格は全国平均で「4,545万円」となっており、東京都を含む首都圏の平均では「4,993万円」となっています。

 

このことから、5,781万円の予算があれば、都心などを除き、基本的にどのエリアでも問題なくマンションを探せるといえるでしょう。

東京都で購入できるマンションの事例として、ここではファミリー向けの間取りを持つマンションを紹介します。

新築マンションの例

  • 所在エリア:東京都北区
  • 交通アクセス:最寄り駅から徒歩3分
  • 専有面積:約57 m2
  • 間取り:2LDK
  • 主な設備:食器洗浄乾燥機、浴室暖房乾燥機、宅配ボックス、その他共用設備 など

一方、中古マンションになると、新築よりも選択肢の幅が広がります。

中古マンションの例

  • 所在エリア:東京都新宿区
  • 交通アクセス:最寄り駅から徒歩1分
  • 専有面積:約63 m2
  • 築年数:23年
  • 間取り:3LDK
  • 主な設備:床暖房、システムキッチン、浴室乾燥機、その他共用設備 など

続いて、地方都市でマンションを購入する場合について見ていきましょう。一戸建てのときと同じように、ここでも宮城県仙台市の例を基に紹介します。

新築マンションの例

  • 所在エリア:宮城県仙台市
  • 交通アクセス:最寄り駅から徒歩7分
  • 専有面積:約74 m2
  • 間取り:3LDK
  • 主な設備:ウォークインクローゼット、浴室換気暖房乾燥機、その他共用設備 など

一戸建てと比べて駅に近い物件も多く見つかるので、交通利便性のいいマンションを見つけるのはそう難しくありません。また、中古マンションになると、新築以上に設備や立地に優れた物件が見つかります。

中古マンションの例

  • 所在エリア:宮城県仙台市
  • 交通アクセス:最寄り駅から徒歩15分
  • 専有面積:約100 m2
  • 築年数:3年
  • 間取り:4LDK
  • 主な設備:オール電化、システムキッチン、浴室乾燥機、その他共用設備 など

これまで紹介したように年収850万円は、新築・中古、一戸建て・マンションを問わず、どのタイプの物件でもほとんどのエリアで購入可能なラインといえます。多様な選択肢があるからこそ、住まい選びにはじっくりと時間をかけて、納得のいく物件を見つけることが大切です。

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住居について話す

 

  • 年収850万円の手取りは637万~650万円が目安、月額換算すると52万~54万円
  • 生活費の平均(住居費除く)は単身世帯で「21万9,521円」、2人以上世帯で「30万5,846円」
  • 家賃の目安は17万3,000~18万円まで
  • 住宅ローンは35年返済なら5,700万円程度まで無理なく借りられる
  • 住宅の選択肢が幅広いため、希望条件を明確にして納得のいく物件探しを行うことが大切
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更新日: / 公開日:2022.02.28