- 団信は「もう1本の大型生命保険」であること
- 団信は、住宅ローン契約者に万一のことがあった場合に残債がゼロになる保険です。つまり家を買った時点で、ローン残高分(数千万円規模)の死亡保障に新たに入ったのと同じ状態になります。この視点を持つと、既存の生命保険をそのままにしておくことが保障の重複=保険料のムダにつながりやすい理由が理解できます。
- 団信の種類と特約の選び方
- 一般団信・三大疾病特約付き・八大疾病特約付きの3タイプについて、保障範囲とコストの考え方を比較表で整理します。「特約は手厚いほど安心」とは限らず、支払い条件(所定の状態の定義)まで確認して選ぶという、後悔しないための判断軸がわかります。
- 家を買った後の保険見直しの具体的な手順
- 団信でカバーされる部分・されない部分を切り分け、公的保障(傷病手当金など)→団信→民間保険の順に積み上げて考える見直し手順を、チェックリスト付きで解説します。読み終えたその日から、保険証券を並べて自分で点検できるようになります。
住宅ローンの契約書類の山の中に、「団体信用生命保険」という耳慣れない書類が混ざっていて、内容をよく確かめないままサインした。そんな経験をお持ちの方は少なくないはずです。
実はこの団信、単なる「ローンの付属品」ではありません。中身を見れば、ローン残高と同じ金額の死亡保障がついた、れっきとした生命保険です。つまり家を買った瞬間、あなたの世帯には数千万円規模の保障が1本増えているのです。
にもかかわらず、独身時代や結婚直後に入った生命保険をそのまま払い続けている世帯は珍しくありません。生命保険文化センターの調査によると、2人以上世帯の生命保険の年間払込保険料は平均35.3万円にのぼります(出典:生命保険文化センター「2024(令和6)年度 生命保険に関する全国実態調査」)。月換算で約3万円。住宅ローン返済が始まる家計にとって、決して小さくない固定費です。
だからこそ、家の購入は「保険を足すタイミング」である前に、「重複を外すタイミング」。この記事では、団信の仕組みと種類を押さえたうえで、購入後の保険をどう見直せばよいかを順を追って整理していきます。
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団体信用生命保険(団信)とは?住宅ローン専用の生命保険

団体信用生命保険(団信)とは、住宅ローンの契約者が返済期間中に死亡、または所定の高度障害状態になった場合に、保険金でローン残債が完済される仕組みの生命保険です。金融機関が保険契約者となり、ローン利用者が被保険者になる「団体」契約であることから、この名前がついています。
万一のとき、家は残り、ローンは消える
団信の最大の役割は、残された家族に「住まい」を残し、「借金」を残さないことです。契約者に万一のことがあれば、保険会社から金融機関へ保険金が支払われ、その時点のローン残高はゼロになります。家族はそのまま自宅に住み続けられ、以後の返済義務はありません。
一般的な生命保険と大きく違うのは、保障額が「ローン残高」に連動して自動的に減っていく点です。返済が進むほど必要な保障も減るため、合理的な設計といえます。
保険料の払い方と、民間ローンでの位置づけ
多くの民間住宅ローンでは、一般団信の保険料は金利に含まれており、契約者が別途保険料を支払うことはありません。また、民間ローンの大半は団信への加入が融資の条件となっています。言い換えると、健康状態によって団信に加入できない場合、そのローン自体が組めないケースがあるということです。
フラット35は「任意加入」—外すと金利は下がるが
全期間固定金利の【フラット35】では、団信(新機構団体信用生命保険)への加入は任意です。加入しない場合の借入金利は「新機構団信付きの借入金利−0.2%」となりますが、契約者に万一のことがあった場合は債務が残り、相続した家族が返済を引き継ぐことになります(出典:住宅金融支援機構【フラット35】よくある質問「新機構団信制度に加入しない場合も利用できますか」)。
金利0.2%の差は魅力に見えますが、団信を外すなら、同等の保障を別の生命保険で確保できているかを必ず先に確認してください。「金利が下がるから外す」は、順序が逆です。
一人暮らしにぴったりな中古マンションを探す 子育てに嬉しい環境の新築マンションを探す団信の3つの種類と保障内容—比較表で整理
団信は大きく「一般団信」「三大疾病特約付き」「八大疾病特約付き」の3タイプに分けられます。違いを一覧で確認しましょう。
| 種類 | 保障される主なケース | 保険料(コスト)の考え方 |
|---|---|---|
| 一般団信 | 死亡・所定の高度障害状態 | 金利に込み(別途負担なし)が一般的 |
| 三大疾病特約付き | 上記+がん・急性心筋梗塞・脳卒中で所定の状態 | 一般団信に金利を上乗せ |
| 八大疾病特約付き | 上記+高血圧性疾患・糖尿病・慢性腎不全・肝硬変・慢性膵炎などで所定の状態 | 保障範囲が広い分、上乗せ幅も大きくなる傾向 |
※上乗せ幅や対象となる病気の範囲・名称は金融機関ごとに異なります。必ず各金融機関の商品概要説明書で最新の条件を確認してください。
一般団信—「高度障害」の基準は意外と厳しい
一般団信の保障対象は、死亡と「所定の高度障害状態」です。注意したいのは、この高度障害の基準が「両眼の視力を永久に失った」「常に介護を要する状態」など、かなり重い状態を指すことです。障害年金の等級や労災の認定基準とは別物であり、「働けなくなった=保障される」ではありません。
三大疾病・八大疾病特約—「診断=残債ゼロ」とは限らない
特約付き団信で見落とされがちなのが、保険金の支払い条件です。たとえば脳卒中や急性心筋梗塞では「所定の状態が60日以上継続」といった条件が付くのが一般的で、診断された瞬間にローンがゼロになるわけではない商品が多く存在します(がんは「診断確定で支払い」とする商品が主流です)。
特約を検討するときは、「どの病気か」だけでなく「どの状態になったら支払われるか」まで読み込むことが、後悔しないための最重要ポイントです。がん特約を付けるべきかどうかの詳しい考え方は、住宅ローンの団信、がん特約は付けるべき? がんになったとき、ローンはどうなるで掘り下げていますので、あわせてお読みください。
特約の要否を分ける3つの判断軸
特約を付けるかどうかは、次の3点で考えると整理しやすくなります。
- 上乗せコストの総額:金利の上乗せは、月々の返済額では小さく見えても、数十年の返済期間で積み上がると大きな金額になります。月々ではなく総額で捉えましょう
- 既存の医療保険・がん保険との重なり:すでに手厚い医療保障があるなら、団信側は一般団信+差額を貯蓄に回す選択も合理的です
- 加入時の年齢と完済年齢:借入期間が長く、働き盛りの期間に大きな残債を抱える人ほど、疾病特約の効果は相対的に大きくなります
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意外と知られていない落とし穴—団信の「加入時」と「保障範囲」

団信は頼れる仕組みですが、つまずきやすいポイントが2つあります。ここを知らずに進めると、住宅購入計画そのものが揺らぐこともあります。
落とし穴①:健康告知に通らないとローンが組めないことがある
団信は生命保険なので、加入時に健康状態や過去の傷病歴を告知する必要があります。持病や通院歴によっては加入を断られることがあり、団信加入が条件の民間ローンでは、それが融資否決に直結します。
対処法はあります。引受基準を緩和した「ワイド団信」(金利上乗せあり)を扱う金融機関を選ぶか、団信が任意のフラット35を利用する方法です。健康に不安がある方は、物件探しと並行して早めに金融機関へ相談しておくと、直前で慌てずに済みます。
なお、事実と異なる告知をすると告知義務違反となり、いざというときに保険金が支払われない恐れがあります。「これくらい書かなくても」が家族の住まいを危険にさらすと考え、正確に申告してください。
落とし穴②:団信は「住居費」しか守らない
団信が守るのは、あくまで住宅ローンの返済だけです。契約者が亡くなった場合でも、残された家族の生活費・教育費は別途必要ですし、死亡に至らない病気やケガで収入が減った場合、一般団信では何も起こりません。ローン返済はそのまま続きます。
つまり団信は万能の保険ではなく、「家計のうち住居費部分を切り出して守る保険」。だからこそ、次の章で扱う「家計全体での見直し」が欠かせないのです。ローン返済中に名義人が亡くなった場合の具体的な手続きは、住宅ローン名義人が死亡したら返済はどうなる? 免除されるケースとされないケースも参考になります。
家計から住宅購入予算を試算する 住宅ローンについて調べる家を買ったら保険を見直す—「重複を外し、穴を埋める」手順
ここからが本題です。団信に加入した世帯が保険を見直すときは、「公的保障 → 団信 → 民間保険」の順に土台から積み上げて考えると、過不足が見えやすくなります。
手順①:死亡保障から「住居費分」を差し引く
生命保険の死亡保険金額は本来、遺族の生活費・教育費・住居費などの必要額から、遺族年金や貯蓄を差し引いて設計するものです。賃貸時代に入った保険であれば、その中には「家賃分」が含まれているはずです。
家を買って団信に入ると、万一の際の住居費はローン完済という形でカバーされます。つまり既存の死亡保障のうち住居費相当分は重複となり、減額の余地が生まれます。参考までに、2人以上世帯の普通死亡保険金額は平均1,936万円です(出典:生命保険文化センター「2024(令和6)年度 生命保険に関する全国実態調査」)。仮に月の住居費相当10万円×20年分を保障から外せると考えれば、見直しインパクトの大きさがイメージできるでしょう。
なお、死亡保障の減額には「収入保障保険」への切り替えも有効です。保険金を年金形式で受け取るタイプで、子どもの成長とともに必要保障額が減っていく実態に合っており、同じ保障を割安な保険料で確保しやすい商品です。
手順②:「働けなくなるリスク」は公的保障を知ってから埋める
一般団信がカバーしない「死亡に至らない就業不能」への備えは、まず公的保障の確認からです。会社員や公務員が業務外の病気・ケガで働けなくなった場合、健康保険から傷病手当金が支給されます。支給額は1日あたり標準報酬月額(直近12ヵ月平均)÷30×3分の2、支給期間は支給開始日から通算1年6ヵ月です(出典:全国健康保険協会「傷病手当金」)。
つまり会社員なら、収入の約3分の2×最長1年6ヵ月は公的にカバーされる一方、それを超える長期の就業不能は空白地帯です。この空白を埋める選択肢が、就業不能保険や団信の疾病特約です。自営業・フリーランスには傷病手当金がないため、就業不能への備えの優先度は会社員より一段高くなります。
手順③:チェックリストで「重複」と「空白」を点検する
保険証券とローンの商品説明書を手元に置き、次の項目を確認してみてください。
【団信加入後の保険見直しチェックリスト】
- 既存の死亡保障の設計に「住居費(家賃)」が含まれたままになっていないか
- 死亡保険金額は、団信でローンが消える前提で再計算したか
- 団信の特約と、手持ちの医療保険・がん保険の保障が二重になっていないか
- 会社員か自営業か。傷病手当金の有無を踏まえて就業不能への備えを判断したか
- 団信の「所定の状態」の支払い条件(60日ルール等)を商品説明書で確認したか
- 減額・解約の前に、新しい保険の加入可否(健康状態)を先に確認したか
- 老後資金の準備(iDeCo・NISA・個人年金保険など)に回せる余力が生まれたか
最後の項目は特に大切です。見直しで浮いた保険料は、消費に回すのではなく、老後資金や繰上返済の原資に振り向けてこそ「見直しの成果」になります。
また、順番にも注意が必要です。既存保険を先に解約してしまうと、健康状態によっては新しい保険に入れず、無保険期間が生じるリスクがあります。必ず「新しい備えの確保が先、解約は後」の順で進めてください。
おすすめ特集から中古マンションを探す おすすめ特集から中古一戸建てを探す保険の見直しは「資金計画の総仕上げ」—物件選びと同時に考える
保険の見直しというと購入後の作業と思われがちですが、本当は物件探しの段階から並行して考えるのが理想です。借入額が変われば団信の保障額も、家計に残せる保険料の余力も変わるからです。
たとえば同じ予算でも、「借入を抑えて疾病特約を付ける」プランと、「一般団信にして就業不能保険を別途契約する」プランでは、月々のキャッシュフローも保障の形も変わってきます。資金計画・物件価格・保険は三位一体で決まるもの。まだ検討初期の方は、相場観をつかむ意味でも、気になるエリアの物件価格をまず眺めてみることから始めると、必要な保障額のイメージも具体的になります。
▶ LIFULL HOME’Sで気になるエリアの物件価格を見てみる
団信そのものの仕組みをもう少し基礎から確認したい方は、住宅ローンとセットの団体信用生命保険(団信)とは? 知っておきたい基礎知識もあわせてお読みください。本記事が「見直しの実行」に踏み込んでいるのに対し、こちらは制度の全体像を丁寧に押さえられます。
価格帯や条件から中古マンションも検討してみる 価格帯や条件、設備から中古一戸建てを探すまとめと次のステップ
団信は、家を買った世帯に自動的に備わる「数千万円級の死亡保障」です。その存在を前提にせず古い保険を払い続けることは、年間数万円〜十数万円の固定費を静かに垂れ流すことと同じ。35年のローン期間で積み上がる差額を考えれば、見直しを先送りするコストは決して小さくありません。
とはいえ、やるべきことはシンプルです。①団信で守られる範囲を正確に知る、②既存保険から住居費分の重複を外す、③公的保障を踏まえて就業不能・老後の空白を埋める。この3ステップだけ。保険証券を引き出しから出して並べる15分が、その第一歩になります。
これから購入を検討する方は、資金計画と保険をセットで考えるためにも、まずは無理のない予算感を物件相場から逆算してみてください。
よくある質問
Q1. 団信の保険料は毎月いくらかかりますか? A. 多くの民間住宅ローンでは、一般団信の保険料は金利に含まれており、別途の支払いはありません。三大疾病などの特約を付ける場合は金利の上乗せで負担する形が一般的で、フラット35では団信込みの金利が表示されています(不加入なら−0.2%)。「保険料ゼロ」ではなく「金利に溶け込んでいる」と理解するのが正確です。
Q2. 健康状態に不安があり、団信に入れるか心配です。家は買えませんか? A. 選択肢はあります。引受基準を緩和した「ワイド団信」を扱う金融機関を利用する方法と、団信加入が任意のフラット35を利用する方法です。ただしフラット35で団信を外す場合は、万一の際に債務が家族に残るため、既存の生命保険などで代わりの備えを確保しておくことが前提になります。
Q3. 団信に入ったら、今の生命保険は解約していいですか? A. 全部解約は危険です。団信が守るのは住宅ローン(住居費)だけで、遺族の生活費・教育費は守ってくれません。見直すべきは「住居費分の重複」であり、基本は解約ではなく減額や収入保障保険への切り替えです。また、健康状態によっては新しい保険に入り直せないため、必ず新しい備えを確保してから既存契約を整理してください。
Q4. 夫婦のペアローンの場合、団信はどうなりますか? A. ペアローンでは夫婦それぞれが自分の借入分についてのみ団信に加入します。一方が亡くなった場合、消えるのはその人の借入分だけで、残された側のローン返済は続きます。世帯収入が減った状態で返済が続くリスクを踏まえ、単独ローンよりも死亡保障や就業不能への備えを厚めに検討するのが安全です。
更新日: / 公開日:2020.09.11










