- 2年目以降の手続きは年末調整で完結する
- 住宅ローン控除の初年度は確定申告が必要ですが、会社員なら2年目以降は勤務先の年末調整に書類を出すだけで手続きが終わります。個人事業主など確定申告が引き続き必要なケースとの違い、還付金が戻ってくるタイミングの目安まで、手続きの全体像を整理して解説します。
- 必要書類は原則2点。ただし「調書方式」なら残高証明書が不要になる
- 年末調整で提出するのは「住宅借入金等特別控除申告書」と「住宅ローンの年末残高証明書」の2点が基本です。ただし2022年度税制改正で導入された調書方式に金融機関が対応している場合、残高証明書の提出が不要になります。自分がどちらの方式かを見分ける判断軸を示します。
- 書類をなくした・申告を忘れた場合のリカバリー方法
- 申告書を紛失しても税務署に再交付を申請でき、年末調整で申告し忘れても確定申告(還付申告)をすれば控除は受けられます。還付申告の期限は5年間です。「もうダメかも」と諦める前に確認したい救済ルートを、具体的な手続き先とあわせて紹介します。
10月の中旬、勤務先から年末調整の書類一式を渡されて、「そういえば住宅ローン控除って今年はどうすればいいんだっけ」と手が止まる。マイホーム購入2年目の秋に、多くの方が一度は経験する場面です。
初年度の確定申告はあれほど大変だったのに、2年目の手続きは誰も詳しく教えてくれません。しかも最近は、金融機関によって「残高証明書が届く人」と「届かない人」に分かれるようになり、ネットで調べた情報が自分に当てはまるのかどうか、余計に分かりにくくなっています。
安心してください。会社員であれば、2年目以降の住宅ローン控除は初年度よりはるかに簡単です。この先を読みながら手元の書類を確認していけば、今年の年末調整はミスなく終えられます。順を追って見ていきましょう。
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2年目以降は確定申告ではなく年末調整でOK

初年度と2年目以降で手続きが変わる理由
住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)は、返済期間10年以上の住宅ローンを組んで住宅を取得した場合に、原則として年末時点のローン残高の0.7%が所得税から控除される制度です(控除しきれない場合は一定額まで住民税からも控除されます)(出典:国税庁「No.1211-1 住宅の新築等をし、令和4年以降に居住の用に供した場合(住宅借入金等特別控除)」)。
初年度に確定申告が必要なのは、住宅の床面積や所得などの適用要件を税務署が確認するためです。この確認は最初の1回で済むため、2年目以降の会社員は、勤務先の年末調整に必要書類を提出するだけで控除が受けられます。税務署に行く必要も、確定申告書を作る必要もありません。
一方、個人事業主やフリーランスの方、給与収入が2,000万円を超えるなどそもそも年末調整の対象にならない方は、2年目以降も毎年の確定申告で住宅ローン控除を申告します。
年末調整で申告した還付金はいつ・どう戻る?
年末調整で住宅ローン控除を申告した場合、控除分は「毎月の給与から源泉徴収された所得税の払い過ぎ」として精算され、一般的には12月の給与に上乗せする形で還付されます。会社によっては冬の賞与と同時だったり、1月の給与での精算だったりと運用が異なるため、正確な時期は勤務先の給与担当に確認するのが確実です。
初年度の確定申告のように「申告から1〜2ヶ月待って口座に振り込まれる」のではなく、給与と一緒に自動的に戻ってくる。これが2年目以降の大きなメリットです。
年末調整で必要な書類は原則この2点
1. 給与所得者の(特定増改築等)住宅借入金等特別控除申告書
初年度の確定申告を済ませると、税務署から2年目以降の控除年数分の「年末調整のための住宅借入金等特別控除証明書 兼 給与所得者の住宅借入金等特別控除申告書」がまとめて交付されます。控除期間が13年なら12年分、10年なら9年分が一度に手元に届く(またはe-Taxで電子交付される)イメージです。
毎年の年末調整では、この束の中から「その年分」の1枚を取り出して記入し、提出します。翌年以降の分は、確定申告書類の控えと一緒にファイルなどで保管しておきましょう。この「残りの年数分をなくさず保管する」ことが、2年目以降の手続きで一番大切なポイントといっても過言ではありません。
2. 住宅ローンの年末残高証明書(証明書方式の場合)
住宅ローンを借りている金融機関から、毎年10月頃(借入時期が年の後半だった場合などは翌年1月頃)に「住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書」が郵送されます。名称は「融資額残高証明書」など金融機関によって異なりますが、年末時点のローン残高(予定額)を証明する書類です。
夫婦でペアローンを組んでいる場合はそれぞれに、複数の金融機関から借りている場合は各ローンについて証明書が必要です。届いたら年末調整まで大切に保管してください。
提出前チェックリスト:出す前に30秒だけ確認
| 確認項目 | チェック |
|---|---|
| 申告書は「今年の年分」のものを使っているか(束の中の別の年分と取り違えていないか) | □ |
| 残高証明書の金額を「年末残高(予定額)」欄に正しく転記したか | □ |
| ペアローン・複数借入の場合、証明書をすべて揃えたか | □ |
| 連帯債務の場合、備考欄に自己負担割合と連帯債務者の情報を記入したか | □ |
| 繰上返済で返済期間が当初借入から10年未満になっていないか(10年未満になると控除対象外) | □ |
| 勤務先の年末調整の提出期限を確認したか | □ |
このうち意外と多いのが「年分の取り違え」です。申告書は見た目がほぼ同じなので、右上の年分表記を必ず確認してから記入を始めましょう。
意外と知られていない変化:「調書方式」なら残高証明書がそもそも届かない
2022年度税制改正で手続きが変わった
ここが元記事の公開当時から大きく変わった点であり、いま最も誤解が生まれやすいところです。
2022年度(令和4年度)の税制改正で、住宅ローン控除の手続きに「調書方式」が導入されました。従来の「証明書方式」では金融機関が納税者に年末残高証明書を郵送し、納税者がそれを勤務先や税務署に提出していましたが、調書方式では金融機関が残高情報(年末残高調書)を税務署へ直接提出し、税務当局から納税者に年末残高情報が提供される仕組みに変わります。この方式では、従来の年末残高証明書の添付・提出が不要になります(出典:国税庁「住宅ローン控除の適用に係る手続(年末残高調書を用いた方式)について」)。
調書方式の対象になるのは、原則として2024年(令和6年)1月以降に入居した方のうち、借入先の金融機関が調書方式に対応しているケースです。ただし、システム対応が難しい金融機関には引き続き証明書方式を続けられる経過措置が設けられているため、現在は「調書方式の人」と「証明書方式の人」が混在している状態です。
自分がどちらの方式かを見分ける判断軸
次の3つの順に確認すると、自分のケースを整理できます。
- 入居時期:2023年12月以前に入居した方は、基本的に従来どおりの証明書方式です。毎年届く残高証明書を年末調整で提出します。
- 借入先の対応状況:2024年1月以降に入居した方は、借入先の金融機関が調書方式に対応しているかを確認します。対応金融機関の一覧は国税庁のウェブサイトで公表されているほか、借入時に「住宅ローン控除の適用申請書」を金融機関に提出したかどうかも手がかりになります。
- 証明書が届くかどうか:調書方式の場合、金融機関から残高証明書は発行されません。「10月になっても証明書が届かない」ことが、必ずしも郵送事故や手続き漏れとは限らないわけです。判断に迷う場合は借入先の金融機関に問い合わせるのが確実です。
「証明書が届かない=トラブル」と決めつけない、でも放置もしない
ここで注意したいのは、両極端の失敗パターンです。証明書方式なのに「調書方式だから届かないのだろう」と思い込んで放置すれば、年末調整に間に合わなくなります。逆に、調書方式なのに「証明書が届かない」と慌てて金融機関に再発行を求めても、そもそも発行されない書類なので解決しません。
11月に入っても状況がはっきりしない場合は、(1)借入先の金融機関、(2)勤務先の年末調整担当、の順に確認する。これだけで大半の混乱は防げます。なお、ご自身のローンを見直したくなったときのために、住宅ローンの金利動向や借り換えの基礎知識をまとめて確認できるページを眺めておくと、毎年の残高確認が「わが家のお金の定期健診」に変わります。
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申告書の書き方と提出までの流れ

記入は「残高証明書からの転記」が基本
書類が揃ったら、残高証明書(調書方式の場合は提供された年末残高情報)をもとに申告書へ記入します。大まかな流れは次のとおりです。
- 申告書上部に氏名・住所・勤務先などの基本情報を記入する
- 「新築又は購入に係る借入金等の年末残高」欄に、証明書記載の年末残高(予定額)を転記する。複数のローンがある場合は合計額を記入する
- 申告書下部にあらかじめ印字された取得対価や床面積の情報をもとに、様式の指示に従って控除額を計算・記入する
- 記入済みの申告書と残高証明書(証明書方式の場合)を、他の年末調整書類と一緒に勤務先へ提出する
計算といっても、印字された数値と転記した残高を使って掛け算をする程度で、初年度の確定申告に比べればずっとシンプルです。
連帯債務でローンを組んでいる場合の注意点
夫婦や親子の連帯債務で住宅ローンを組んでいる場合は、記入項目が少し増えます。「連帯債務による住宅借入金等の年末残高」欄に残高を記入したうえで、備考欄に自分の負担割合に基づく負担額、連帯債務者の住所・氏名・勤務先を記入します。負担割合は初年度の確定申告で申告した割合と揃える必要があるため、当時の書類の控えを手元に置いて記入すると間違いがありません。
なお、ペアローン(それぞれが別々のローン契約を結ぶ形)の場合は連帯債務とは扱いが異なり、夫婦それぞれが自分の申告書と証明書で申告します。
転職した場合はどうなる?
年の途中で転職しても、住宅ローン控除が受けられなくなるわけではありません。転職先で年末調整を受けるなら、手元の申告書と残高証明書を新しい勤務先に提出すればOKです。年末時点でどこにも在籍していないなど年末調整を受けられない場合は、自分で確定申告をして控除を受けます。
忘れた・なくした・間に合わない。トラブル別リカバリー法
年末調整で申告し忘れても、確定申告をすれば取り戻せる
勤務先の締切に間に合わなかった、書類を出し忘れた。そんな場合でも、控除を諦める必要はありません。翌年に自分で確定申告をすれば、払い過ぎた所得税は戻ってきます。確定申告の期間は原則として毎年2月16日から3月15日までです。
さらに、住宅ローン控除のように税金が戻ってくるだけの申告は「還付申告」にあたり、還付申告は対象年の翌年1月1日から5年間提出できます(出典:国税庁「No.2030 還付申告」)。つまり、数年前の申告し忘れに今気づいた場合でも、5年以内であれば遡って取り戻せる可能性があります。「もう手遅れだ」と決めつけて機会を捨ててしまうのが、一番もったいないパターンです。
申告書をなくしたら:税務署に再交付を申請できる
税務署からまとめて交付された残り年数分の申告書を紛失してしまった場合は、「年末調整のための(特定増改築等)住宅借入金等特別控除関係書類の交付申請書」を所轄の税務署に提出すれば再交付を受けられます。窓口への持参・郵送のほか、e-Taxでの申請も可能です(出典:国税庁「A1-39 年末調整のための(特定増改築等)住宅借入金等特別控除関係書類の交付申請手続」)。
再交付には日数がかかるため、紛失に気づいたら早めに動くのが鉄則です。年末調整の提出期限に間に合わない場合は、無理をせず翌年の確定申告(還付申告)に切り替えるという選択肢もあります。
残高証明書をなくした・届かないときは金融機関へ
証明書方式の方で残高証明書を紛失した場合は、借入先の金融機関に再発行を依頼します。多くの金融機関で電話やインターネットバンキングから手続きでき、通常1〜2週間程度で再送されます。「そもそも届いていない」場合は、前述の調書方式の可能性と、引越し後の住所変更漏れの両方を疑って確認しましょう。
こうした毎年の手続きを機に、「今の返済額は妥当なのか」「教育費が増えても大丈夫か」といった住まいのお金全体を見直したくなったら、専門アドバイザーに無料で相談できる窓口を使うのも一つの方法です。第三者に現状を話すだけでも、家計の輪郭がはっきりします。
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まとめと次のステップ
住宅ローン控除の2年目以降は、会社員なら「その年分の申告書」と「年末残高証明書(調書方式なら不要)」を年末調整で提出するだけ。初年度の確定申告を乗り越えた方なら、拍子抜けするほど簡単なはずです。万一忘れても還付申告で5年間は取り戻せますが、還付が遅れる分だけ手元資金の余裕は削られますし、「あとでやろう」が積み重なると、控除という本来受け取れるお金を置き去りにしたまま家計が回ってしまいます。
そして、年に一度ローン残高と向き合うこの機会は、住まいのお金を点検する絶好のタイミングでもあります。残高証明書の数字を眺めながら、「金利が下がった今、借り換えたら月々いくら変わるのか」を試算してみるだけでも、次の一手が見えてきます。まずは現在の借入条件を入力して、毎月の返済額がどう変わるか眺めてみてください。
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よくある質問
Q1. 2年目の年末調整で、初年度のような登記事項証明書や売買契約書は必要ですか?
A. 不要です。適用要件の確認は初年度の確定申告で完了しているため、2年目以降は「住宅借入金等特別控除申告書」と「年末残高証明書」(調書方式の場合は申告書のみ)を勤務先に提出すれば手続きできます。
Q2. 残高証明書が10月を過ぎても届きません。どうすればいいですか?
A. まず借入時期を確認してください。借入が年の後半だった場合、証明書の発送が翌年1月頃になることがあります。また、2024年1月以降の入居で金融機関が調書方式に対応している場合は、証明書自体が発行されません。いずれにも当てはまらない場合は、住所変更漏れや郵送トラブルの可能性があるため、借入先の金融機関に問い合わせましょう。
Q3. 繰上返済をしたら、住宅ローン控除はどうなりますか?
A. 繰上返済自体は問題ありませんが、返済期間の短縮により「当初の返済開始月から最終返済月までの期間」が10年未満になると、その年以降は控除を受けられなくなります。期間短縮型の繰上返済を検討する際は、控除への影響もあわせて確認してください。
Q4. 育休中で今年の所得がほとんどありません。年末調整で申告する意味はありますか?
A. 住宅ローン控除は納めた所得税(および一部の住民税)から控除する仕組みのため、その年の所得税がゼロであれば控除額も実質ゼロになり、未使用分を翌年に繰り越すこともできません。ただし、少しでも所得税が発生している場合は申告する価値がありますし、申告自体にデメリットはないため、書類は例年どおり提出しておくのが無難です。
住宅ローン控除の制度そのもの(適用条件・控除額・初年度の確定申告)について詳しく知りたい方は、以下の記事もあわせてお読みください。
更新日: / 公開日:2019.08.02










