- ローン返済中の家が「そのままでは売れない」本当の理由
- 抵当権と残債完済の仕組みを、はじめての方にもわかる言葉で解説します。
- 「売り先行」と「買い先行」どちらが自分向きかの判断軸
- それぞれの流れ・メリット・リスクを比較表で整理し、迷いを解消します。
- ダブルローンを避けて住み替える3つの具体策
- 住み替えローン・買取保証・税制特例など、残債があっても前に進む方法がわかります。
子どもが大きくなって部屋が足りない。転勤や親の介護で通勤・通学圏を変えたい。理由はそれぞれでも、「今の家のローンがまだ残っているのに、住み替えなんて本当にできるのだろうか」という不安は、多くの方に共通しています。
賃貸なら退去届を出して次の部屋を契約すれば済みますが、住宅ローンで購入したマイホームはそう単純ではありません。家には金融機関の「抵当権」が付いており、ローンの残債と売却代金のバランス、売却と購入のタイミング、利用するローンの種類—この3つを外すと、家計に長く響く選択になりかねません。
ただ、逆にいえば、この3つさえ押さえれば、ローン返済中でも住み替えは十分に実現できます。実際、住み替えを伴う中古住宅の取引は活発で、2025年の首都圏中古マンションの成約件数は49,114件(前年比31.9%増)と3年連続で増加し、成約平均価格は5,200万円(前年比6.3%増)で13年連続の上昇となりました(出典:東日本不動産流通機構「首都圏不動産流通市場の動向(2025年)」)。売り手にとって追い風の市況が続く今こそ、正しい手順を知っておく価値があります。ここからは住み替えの「つまずきポイント」と回避策を順番に整理していきます。
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ローン返済中の家が「そのままでは売れない」理由ー鍵は抵当権

抵当権とは何か。なぜ抹消しないと売れないのか
住宅ローンを組むと、購入した家と土地には金融機関の「抵当権」が設定されます。抵当権とは、万が一返済が滞ったときに、金融機関がその家を競売にかけて売却代金から融資を回収できる権利のことです。いわば家が「ローンの担保」になっている状態です。
抵当権が付いたままの家を買いたい人は、まずいません。前の所有者のローンが焦げ付けば、自分が住む家が競売にかけられてしまうリスクを抱えることになるからです。そのため実務上、マイホームの売却では引き渡しまでに抵当権を抹消することが必須条件となり、抵当権を抹消するには住宅ローンの残債を完済しなければなりません。
「アンダーローン」か「オーバーローン」かで難易度が変わる
ここで重要になるのが、売却価格とローン残債の大小関係です。
- アンダーローン(売却価格 > 残債):売却代金でローンを完済でき、手元にお金が残ります。住み替えの資金計画は比較的シンプルです。
- オーバーローン(売却価格 < 残債):売却代金だけでは完済できず、不足分を貯蓄で埋めるか、後述する「住み替えローン」を検討する必要があります。
自分がどちらに該当するかは、金融機関の残高証明書(またはWEB明細)でローン残債を確認し、複数の不動産会社の査定額と突き合わせればおおよそ判断できます。住み替え計画は、この「残債と査定額の突き合わせ」から始まります。机上査定だけなら数日でできるので、具体的に動く前の最初の一歩としておすすめです。
家計から住宅購入予算を試算する 月々の返済額を調べる「売り先行」か「買い先行」か—住み替えの成否を分けるタイミング戦略
2つの進め方と、それぞれの向き・不向き
住み替えには大きく分けて、今の家を先に売る「売り先行」と、新居を先に買う「買い先行」の2つの進め方があります。
| 比較項目 | 売り先行 | 買い先行 |
|---|---|---|
| 流れ | 売却→(仮住まい)→購入・入居 | 購入・入居→売却 |
| 資金計画 | 売却額が確定してから買うので堅実 | 売却額が未確定のまま買うため不確実性が残る |
| ダブルローンのリスク | 原則なし | 売れるまで発生する可能性が高い |
| 住まいの空白 | 仮住まい(引越し2回)が必要になる場合あり | なし。空き家にしてから売るので内見対応もしやすい |
| 売却価格 | 期限に追われず納得の価格を狙いやすい | 早く売りたい心理が働き、値下げ圧力がかかりやすい |
| 向いている人 | 残債が多い人、資金に余裕をもたせたい人 | 資金に余裕がある人、新居の条件に強いこだわりがある人 |
資金面の安全性を重視するなら、基本は「売り先行」です。売却代金が確定してから新居の予算を決められるため、「売れなかったらどうしよう」という最大の不安要素を先に消せます。一方で、新居が決まるまでの仮住まい費用と2回分の引越し費用は織り込んでおく必要があります。
理想は「売り」と「買い」の同時進行
実務では、売却活動と新居探しを同時にスタートし、売買契約の引き渡し時期を調整して仮住まい期間を最小化する「同時進行型」が理想とされます。売却の媒介契約を結ぶタイミングで、新居の候補エリアの相場観を養っておくと、いざ買付を入れる場面で迷いません。まずは肩の力を抜いて、▶ LIFULL HOME’Sで住み替え先の候補物件を眺めてみるところから始めると、予算と希望条件のギャップが早い段階で見えてきます。
なお、新居の予算感をつかむうえでは公的データも参考になります。国土交通省の令和6年度住宅市場動向調査によると、住宅購入資金の平均値は注文住宅で6,188万円、分譲集合住宅(マンション)で4,679万円でした(出典:国土交通省「令和6年度住宅市場動向調査」)。売却代金と自己資金、そして新たに組むローンの合計がこの水準に届くのか、早めに全体像を描いておきましょう。
6,000万円以内の中古マンションを探す 6,000万円以内中古一戸建てを探す意外と知られていない落とし穴—ダブルローンと「合算審査」の仕組み

ダブルローンは返済だけでなく「借入可能額」も削る
買い先行で進めた場合、前の家が売れるまでは旧居と新居、2本の住宅ローンを同時に返済する「ダブルローン」状態になります。毎月の返済額が単純に重くなることは想像しやすいのですが、実はもう一つ、見落とされがちな落とし穴があります。
それは、新居のローン審査で「既存ローンの残債と新規借入額が合算して評価される」ことです。金融機関は申込者の年収に対する年間返済額の割合(返済負担率)で融資額を判断するため、旧居のローンが残っていると、その返済分だけ新規に借りられる額が圧縮されます。たとえば単独なら3,000万円借りられる属性の人でも、旧居に1,000万円の残債があれば、新規借入の上限は実質2,000万円程度まで下がるイメージです。「新居の予算が想定より組めない」という誤算は、たいていここで起こります。
住宅ローン控除と売却時特例の「併用不可」にも注意
もう一つ、プロがよく注意を促すのが税制の落とし穴です。マイホームを売って利益(譲渡所得)が出た場合、一定の要件を満たせば「居住用財産の3,000万円特別控除」で税負担を大きく減らせます。
ところがこの特例は、新居で住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)を受ける場合、原則として併用できません。売却益の大きさと、新居のローン控除で戻ってくる税額—どちらを取るほうが得かは残債・売却益・借入額によって変わるため、売却前に試算しておくことが大切です。判断に迷う場合は、税務署や税理士、FPへの相談も選択肢に入れてください。
無料で住まいの窓口に相談する 住まいの窓口に資金計画を相談する残債があっても住み替える3つの方法
方法1:住み替えローン(買い替えローン)を使う
オーバーローンで不足分の現金が用意できない場合に有効なのが「住み替えローン(買い替えローン)」です。これは、旧居の売却代金で返しきれなかった残債分を、新居の住宅ローンに上乗せして一本化できるローンで、多くの金融機関が取り扱っています。
メリットは主に2つです。第一に、完済用の現金を用意できなくても住み替えが可能になること。第二に、金利水準や返済条件を組み直すことで、従前より有利な条件になる場合があることです。ただし、担保価値を超える融資となるため審査は通常の住宅ローンより厳しく、また旧居の「売却決済日」と新居の「購入決済日」を同日に揃える必要があるなど、スケジュール調整の難易度が上がります。取り扱い経験の豊富な不動産会社・金融機関と組むことが成功の条件です。
方法2:買取保証(売却保証)でスケジュールを固定する
「期日までに売れなかったらどうしよう」という不安には、不動産会社の「買取保証」付き売却が一つの答えになります。一定期間は市場価格での仲介売却に挑戦し、期限までに売れなければあらかじめ合意した価格で不動産会社が直接買い取る仕組みです。買取価格は市場相場より低くなる傾向がありますが、「必ずこの日までに現金化できる」という確実性は、買い先行や住み替えローンとの相性が良い選択肢です。
方法3:売却損が出たら「譲渡損失の損益通算・繰越控除」を検討する
旧居を残債より安くしか売れず損失が出た場合でも、一定の要件を満たせば、その譲渡損失を給与所得など他の所得と相殺(損益通算)し、控除しきれない分を翌年以降最長3年間繰り越せる特例があります。住み替えで損が出た年の税負担を軽くできる制度なので、オーバーローンでの住み替えを検討している方は、確定申告を前提に要件を確認しておきましょう(制度の詳細は国税庁のタックスアンサー等で最新情報の確認をおすすめします)。
匿名査定依頼へ進む 物件の参考価格を調べるプロが使う「住み替え準備チェックリスト」—動き出す前の7項目

住み替え相談の現場でつまずきやすいポイントを、着手前に確認できるチェックリストにまとめました。3つ以上「未確認」があるうちは、売却活動を本格化させるのはまだ早い、というのが実務上の目安です。
- ローン残債の正確な金額を残高証明書で確認したか(ボーナス返済分・諸費用ローンも含めて)
- 複数社の査定を取り、残債とのアンダー/オーバーを把握したか(1社の査定額を鵜呑みにしない)
- 売却にかかる費用(仲介手数料、抵当権抹消費用、印紙税、場合により譲渡所得税)を試算したか
- 新居の予算上限を、売却額の「弱気シナリオ」で計算したか(強気の査定額を前提にしない)
- 仮住まいの要否と費用(賃料・引越し2回分)を資金計画に入れたか
- 税制特例の選択(3,000万円特別控除か住宅ローン控除か、損失時は損益通算)を試算したか
- 家族の合意——通勤・通学・実家との距離など、住み替えの目的を家族全員で言語化したか
このうち4番の「弱気シナリオで予算を組む」は、特に大切です。売却額は市況と物件次第で振れ幅があります。査定額の9割程度で売れた場合でも資金計画が破綻しない予算設定にしておくと、売却活動中の心理的な余裕がまったく違います。予算の当たりを付けたら、▶ LIFULL HOME’Sでその予算内の物件がどれくらいあるか確認してみると、計画の現実味を早めに検証できます。
まとめと次のステップ
住宅ローンが残っている家の住み替えで押さえるべきは、次の3点でした。
- 家には抵当権が付いており、売却には残債の完済が必要。まず「残債と査定額の突き合わせ」から始める
- 資金の安全性なら売り先行、住み替えの快適さなら買い先行。理想は売りと買いの同時進行でダブルローンを回避する
- オーバーローンでも、住み替えローン・買取保証・税制特例を組み合わせれば道はある
住み替えは「いつか」と先送りしやすいテーマですが、家族構成に合わない家に住み続ける我慢のコストや、売り時の市況を逃す機会損失は、静かに積み上がっていきます。かといって、焦って動く必要もありません。今日できる小さな一歩は、残債の確認と、住み替え先の相場を知ること。その第一歩として、▶ LIFULL HOME’Sで気になるエリアの物件情報を見てみることから始めてみてください。実際の物件を眺めるうちに、「わが家の住み替え」の輪郭が具体的になっていくはずです。
売却を相談する不動産会社を探す 注文住宅の資金計画講座よくある質問
Q1. 住宅ローンが残っていても、家を売りに出すこと自体は可能ですか?
A. 可能です。売却活動(査定・媒介契約・広告・内見)はローン返済中でも行えます。ただし買主への引き渡し時までに残債を完済し、抵当権を抹消する必要があります。実務では引き渡し日の売却代金受領と同時に完済・抹消手続きを行う「同時決済」が一般的です。
Q2. 売り先行にした場合、仮住まいは必ず必要ですか?
A. 必ずではありません。売買契約時に「引き渡し猶予」(決済後も一定期間住み続けられる特約)を買主と合意できれば、仮住まいなしで新居へ直接移れる場合があります。ただし買主側の了承が前提となるため、確実性を求めるなら仮住まい費用も資金計画に入れておくのが安全です。
Q3. 住み替えローンの審査は、通常の住宅ローンより厳しいのですか?
A. 厳しくなる傾向があります。新居の担保価値を超える金額(旧居の残債分)まで融資するため、金融機関は年収・勤続年数・返済負担率をより慎重に見ます。また旧居の売却決済と新居の購入決済を同日に揃える必要があり、スケジュール管理の難易度も上がります。早めに金融機関へ事前相談することをおすすめします。
Q4. 今の家がいくらで売れるか、ざっくり知る方法はありますか?
A. 不動産会社の机上査定(簡易査定)なら、物件情報をもとに数日で概算価格がわかります。加えて、東日本レインズなど公的機関が公表する成約データや、不動産ポータルサイトで近隣の売出し事例を見るのも有効です。1社の査定額だけで判断せず、複数の情報源で相場観を作ることが失敗を防ぐコツです。
更新日: / 公開日:2016.10.06










