内閣府の発表した「令和元年版高齢社会白書」(※1)によると、2018年10月1日時点で日本の総人口(1億2,644万人)に占める65歳以上の高齢者の割合は28.1%(3,558万人)であり、「超高齢社会」といわれています。

そんな現在の日本では、高齢者や障がい者に対応したバリアフリーへの需要が集まっています。段差のない家やスロープ、手すりのついた建物、車椅子でも入りやすい広いトイレなどがそうです。また、滑りにくい床材を使い、間口を広くとり、入りやすい高さの浴槽にしたお風呂なども該当します。

こういったバリアフリー化がなされていないと段差でつまずいたり、階段から転落したりするなど、事故やけがの原因となりますが、特に高齢者の事故で多いのが、お風呂場での事故です。

そこで今回は、高齢者や障がいのある方、そのご家族が家を新築する際、お風呂場をどのようにバリアフリー化すればいいのか、そのポイントについて紹介します。

※1 出典:「令和元年版高齢社会白書」(内閣府)

お風呂をバリアフリー化するポイント

お風呂をバリアフリー化するポイント

“高齢の両親や障がいのある家族と同居しているから“、もしくは“自分が高齢になったときの将来を見据えて”など、バリアフリーを求める背景はさまざまです。

 

先ほども紹介したように、高齢者の事故の中で多いのがお風呂場です。人生100年時代といわれている昨今、転倒などにより、それまでの健康状態が悪化しないよう、しっかりと対策を行う必要があります。

 

まずはバリアフリー化する際に押さえておきたいポイントについて見ていきましょう。

お風呂場は足元が濡れていると、非常に滑りやすい場所です。高齢者や障がい者の滑ることによる転倒事故も多く、頭部打撲などによって重症となる可能性もあるため、対策が必要であると言えます。

 

対策としては、滑りにくい材質の床材を使うようにしましょう。さらに、水はけがいいか、転倒した際に衝撃を吸収してくれるかなどの確認も必要です。

 

さらに手すりを設置するなどして、転倒対策を行いましょう。手すりは洗い場の横、浴槽内、浴槽から出るときにつかめる場所、出入り口付近に設置するといいでしょう。

お風呂場の床から浴槽の縁までの高さがあると、その分またぐ際に足を上げなければいけないため危険です。特に、高齢者の方などは体力を消耗し、滑って転倒するリスクも高まります。浴槽は人が簡単にまたげる高さ、30~40cmにしましょう。なお深さも膝上くらいを目安に設置するといいでしょう。

通常、浴室は脱衣所よりも若干低く設置してあります。これは水を使うことが理由であり、脱衣所と浴室の床の高さがフラットであると、脱衣所の方まで床が濡れてしまう可能性が高いからです。

 

バリアフリーの視点で考えると、脱衣所と浴室との段差は2cm以下であることが望ましいとされています。たかが2cmと思われるかもしれませんが、高齢の方はつまさきが上げづらくなっており、些細な段差でも転倒してしまう可能性があるため注意が必要です。

お風呂場のドアは必ず引き戸にしましょう。これはお風呂場で滑り、転倒などをしてしまった際、押し戸だと倒れた人にぶつかってしまい、外から開けることができないからです。高齢者のお風呂での事故は初期対応が遅れてしまうと、その分死亡のリスクが高くなります。

高齢者がお風呂場で死亡する原因のひとつとして、“ヒートショック”というものがあります。ヒートショックとは特に冬場、寒い脱衣所で衣類を脱ぎ、温かいお湯に浸かることで血圧が急激に変動、体温が急上昇するなどし、不整脈や失神などの症状が起こる健康障害です。

 

また、64歳未満の方に比べて、65歳以上の高齢者になるとヒートショックで死亡する確率が急激に上がります。厚生労働省は毎年、ヒートショックに対する注意喚起を行っていますが、なかなか事故は減りません。

 

そうしたことから、脱衣所などに断熱材を入れる、もしくは脱衣所にも暖房器具などを設置するなどして寒暖差を減らすようにすることが大事です。このように、温度によって起こりうる危険性に対応したバリアフリーのことを“温度のバリアフリー”とも呼びます。

家を建てる際にバリアフリー要素を取り入れようとした場合、標準仕様より割高になるのでは、と心配されるかもしれませんが、近年ではバリアフリー仕様を標準としている会社も多く、バリアフリー要素を取り入れたからといって、必ずしも余分な費用がかかるとも言えません。

 

標準化されているバリアフリー、特に浴室に関係するものの例としては次のような項目があります。

 

・手すりの設置

・バリアフリー対応のユニットバス

・浴室のドアの変更

・滑り止めなど

お風呂のリフォームには補助金が利用できる

お風呂のリフォームには補助金が利用できる

一方、既存住宅をバリアフリー仕様にリフォームしようとした場合には、補助金制度が利用できることがあります。補助金は自治体や国、介護保険などから出ます。ここでは併せて、リフォーム時の補助金制度についても説明しておきます。

国の補助金制度“ライフサポート推進事業”では、手すりの設置や段差の除去など、さまざまなバリアフリーリフォームに対して補助金を受けられます。

 

この制度の対象要件は既存住宅であり、リフォーム後の住宅規模が一戸建てでは55m2以上、集合住宅等では40m2以上、補助対象事業費の合計が30万円以上であることです。これを満たしていれば、工事費用の3分の1、最大100万円の補助を受けることができます。

さまざまな自治体にてバリアフリー補助金制度を設けています。例えば、東京都千代田区では“高齢者福祉住環境整備事業”という名で、補助金制度を行っています。

 

このうち、介護予防住宅改修等給付では、本人の介護保険料の段階に応じて、給付限度額を20万円として、工事費用の40%~90%程度の補助を受けることが可能です。対象となるのは65歳以上の千代田区民で、介護認定を受けていないが、日常生活の動作に困難があり住宅の改修が必要であると認められた方です。

介護保険による高齢者住宅改修費用助成制度として、手すりの取り付けや滑り防止、転倒対策などに対して国から補助金が受け取れます。

 

要介護者などが住宅改修を行う際、最大20万円の補助金を受け取ることが可能です。なお、原則としてこの制度が利用できるのは“生涯で1度だけ、20万円まで”ですが、要介護度が3段階以上上がった場合や転居した場合は、その限りではありません。

お風呂での事故をなくすために、高齢の方や同居家族の方が新築住宅を検討される際には、バリアフリー仕様を取り入れてみてください。新築でのバリアフリー仕様を標準としている会社も増えてきているので、一度相談してみるといいでしょう。

 

また、住宅を建てたあとにバリアフリーの必要性を感じたのであれば、補助金制度が利用できる可能性のあるリフォームを検討してみてください。

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