一戸建てリノベーションは比較的自由度が高いのですが、気をつけなければいけないのが家の築年数や劣化状態によってリノベーションの内容が左右されること。また工法によっては間取り変更などが制限されるケースがあります。増築の場合は面積などの法規制がからんできます。それらを踏まえて、一戸建てリノベのできること、できないことについて解説しましょう。
一戸建てリノベーションの前にやっておきたいこと
一戸建てリノベーションをする前に確認しておきたいことがあります。まずはそれを押さえましょう。
耐震診断
耐震基準は1981年に大きく変わり、2000年にも改正が行われています。それらの基準に適合していない住宅は耐震補強が必要。自治体やリノベーション会社に耐震診断をしてもらい、どこをどう補強するべきか示してもらいましょう。
断熱の有無
築20年を超える一戸建ては断熱していないか、断熱していても不十分なレベルの場合が多いです。冬場部屋の温度が低すぎたり、夏場のエアコンが効きにくいのはそのため。現場調査時に調べてもらい、必要な断熱を行いましょう。
工法の確認
家を建てる主な工法は以下のとおりで、木造軸組工法以外はリノベーション会社によっては不得意だったり、対応していなかったりする場合があるので確認が必要です。
木造軸組工法
柱や梁、筋交いで建物を支える、日本の家で最も多い工法です。間取り変更がしやすいです。
2×4工法
北米生まれの工法で、床、壁、屋根の面で支える壁式工法の一種。間取り変更には制約があります。
住宅メーカー独自の工法
部材を工場生産する住宅メーカーが独自に国の認定を受けた工法。各社独自の設計ルールで建てており、間取り変更には制約があります。
鉄骨造
太い鉄骨の柱と梁を組む工法で、柱や梁を移動しない範囲で間取り変更は可能です。
RC造
鉄筋コンクリート造で一戸建ては壁式工法が中心。その場合、構造に関係する壁を撤去しない範囲で間取り変更が可能です。
構造部から外装までリノベーションが可能
一戸建てリノベーションではどんなことができるのか、箇所別に見ていきましょう。以下は主に木造軸組工法の家を対象にしていますが、内外装や設備は他工法にも共通します。
①屋根
1.屋根材に塗装をする
2.既存の屋根材の上に重ねて軽量な鋼鈑の屋根材などを施工する
3.既存の屋根材を撤去して葺き替える。
3つの方法が可能で屋根下地の傷み具合などで方法を選びます。防火地域・準防火地域※では、鋼鈑や化粧スレートなど不燃材料を用いる必要があるケースが多いです。
※市街地の中心部に多いのが防火地域、その周辺に多いのが準防火地域で、火災の危険を防止するために外装に使ってよい材料などが制限されています。
②外壁
屋根と同様に塗装、重ね張り、張り替えの3つの方法が選べます。防火地域・準防火地域では不燃材料を選ばなくてはならないケースが多いです。
③窓
断熱性の高い複層ガラス入りなどの新しいサッシに交換ができます。防火地域・準防火地域では網入りガラスを使用するなど防火仕様のサッシを選ばなくてはならないケースが多いです。
④断熱
外壁の中、1階の床、天井裏(または屋根)に断熱材を入れて、家全体の断熱性をアップすることができます。壁をはがして戻す工事が必要な場合が多いので、耐震補強と同時に行うとよいでしょう。
⑤耐震補強
耐震診断の上、壁の中に足りない筋交いや耐震用合板を追加する工事を中心に耐震性を上げることができます。
⑥ドア
室内ドアの交換は可能で、ある程度サイズの変更も可能です。
また、一戸建ては玄関ドアの交換も可能です。防火地域・準防火地域では防火仕様にする必要があるケースが多いです。
⑦内装
壁紙や床材など内装を一新することができます。床の張り替え時に床段差をなくすこともできます。
⑧設備機器
キッチンやバス・トイレなどの設備機器は交換ができ、位置の変更も可能。例えば1階の設備を2階に移動することも可能です。
⑨コンセント・スイッチ
増設や位置変更が可能です。リノベプラン時にしっかり考えておかないと、後から増設したりするのは手間も費用も余分にかかるので注意しましょう。
⑩ロフト
小屋裏(屋根裏空間のこと)を活用して、収納空間などに利用することができます。
⑪吹き抜け
構造上問題がなければ、例えば1階の天井を一部撤去して、吹き抜けを設けることが可能です。のびやかな空間ができます。
⑫増築
敷地にゆとりがあれば増築が可能ですが、建ぺい率・容積率(※1)をオーバーしないよう気をつける必要があります。
また、建物の高さを上げる場合は斜線制限(※2)を守らなければなりません。2階建てを3階建てにすることは法規上難しいです。
(※1)敷地にどれだけの面積の家が建てられるのかを法的に示すもの。建ぺい率は敷地面積に対する建築面積(建物の外壁で囲まれた面積)の、容積率は延床面積(各階面積の合計)の割合
(※2)北側斜線制限と道路斜線制限があり、北側隣地や道路への日照を守るために建物の高さを一定角度の斜線内に収める規制

