時を重ねるごとに刻まれていく味わい
リフォームを前提に、中古マンションを購入したHさんご夫婦。空や夜景を臨むロケーションが魅力のタワーマンションですが、白を基調とした画一的なデザインにはお持ちの家具が合っていませんでした。海外在住のご経験から、欧米の古い邸宅のように、経年とともに趣が生まれるようなお住まいにしたいと考えていました。今回のリノベーションで目指したのは、使うごとに刻まれる傷や変色がかえって味わいとなるような空間。そこで素材にはどこまでもこだわりました。リビングにはダークブラウンが落ち着いた印象を与えるローズウッドのフローリング、廊下には重厚さと高級感のある大理石を張り、別々の雰囲気ながらも趣のある雰囲気に。窓に広がる現代的な風景と、室内のクラシカルな光景が美しく調和します。リビングの入り口には、ご希望だったアイアンドアを設置。黒く塗装した細い鉄のフレームにガラスを入れて、アメリカから輸入した真鍮のドアノブを取り付ければ、古いホテルのエントランスのようなたたずまい。ガラス越しにはヘリンボーンの床がのぞき、入り口に立った瞬間にゲストの期待も高まりそうです。

(写真左)ずっと暮らし続けてきたような趣がただよう、美しい空間に生まれ変わった
(写真右)重厚なアイアンドア。ドアを開く前からすでにリビングの趣が伝わってくる
夜景と家具を引き立てる、プランと素材使い
夜になると、窓の外には夜空やビル群など都会的な景色が広がります。贅沢な眺めとお持ちの家具の魅力を活かすため、ダウンライトの配置にこだわりました。家具と夜景をもっとも美しく見せる角度から照らし、外界から切り離されたような幻想的な空間に。陰影によって素材の趣が増し、夫婦で静かな夜を過ごすのにふさわしい落ち着きと上質感が生まれました。非日常的な印象を損なわないよう、キッチンはあえて独立式に。一方で壁の上部に隙間を設け、空間にかすかな繋がりをつくりました。簡単な工事によって、いつでもオープンキッチンにできるようにしています。就寝前のひとときを快適に過ごせるよう、2部屋をつなげてスペースを拡大。欧米邸宅のように広々とした寝室となっています。床にはリビング・ダイニングと同じローズウッドをヘリンボーンに張り、テイストを統一。スタンドライトで部分的に照らし、奥行きも演出しています。静寂に包まれた寝室で過ごしていると、都心だということを忘れてしまいそうです。

(写真左)天井裏にあるスプリンクラーの配管に気をつけながら照明の位置を検討し、効果的にライティング
(写真右)壁面収納やWICを設けてもゆとりのある寝室。おだやかな気持ちで眠りにつくことができる
邸内のどこにいても心地さを感じるように
廊下から玄関ホールにかけての床には大理石のトラバーチンを張り、連続性をもたらしました。トラバーチンはふつう穴埋め処理によって、フラットな状態で使われます。しかし今回は、素材そのものの質感を活かすためにあえて加工を施さず、自然の窪みのままで使用しました。斑の自然な流れ模様や風合いが、お持ちのクラシカルな家具と調和します。トイレは素材とデザインにこだわって、居心地のよさを追求しました。床にはモザイクタイル、手洗いカウンターは大理石を使用。洗面室と同じ素材を使って水まわりをホテルのような落ち着いた雰囲気で統一しています。カウンター収納の扉にはサペリ材を使用。赤褐色の上品で美しい木や大理石が、限られた空間に伸びやかさをもたらしています。リビング・ダイニングのテイストを随所に散りばめ、ディテールにこだわることで、どこで過ごしていてもくつろぎを感じられるようになりました。

(写真左)ドアやキッチン・バスルームの設備は既存を使うなどし、コストバランスを図っている
(写真右)モザイクタイルや大理石、サペリ材といった上質な素材を使用。リラックスできる空間に

