銀座といえば、地価の高いハイブランドが並ぶショッピングの街、バーやクラブが多い街、画廊の多いアートの街というイメージもあるかも。いずれにしても東京を代表する街で、高層ビルの並ぶ都会のイメージが強いのではないでしょうか。
そんな銀座のど真ん中に、5万匹以上のミツバチを飼う養蜂所があります。ワンシーズンで採れるハチミツは約1トンという「銀座ミツバチプロジェクト」を取材しました。
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いったいどこに蜜があるの? 銀座のビルの屋上で1トンのハチミツが採れる秘密を探る
2006年からスタートした「銀座ミツバチプロジェクト」。
銀座でハチミツが採れたら面白い、とはじめたプロジェクトが成長し、現在は銀座のビルの屋上3箇所に養蜂所を持ち、年合計で約1トンのハチミツを収穫しています。
今回取材したのは、松屋銀座から1本通りを挟んだ場所にある11階建ての高層ビルの屋上。まさに一等地にある養蜂所です。

柵に囲まれた部分が養蜂所。季節によって個体数は変わるが、ひとつの箱に約1万匹のミツバチがいる
銀座は緑が少なく、密集してビルが建ち並んでいます。ここのミツバチはどこから蜜を集めているのでしょうか。特定非営利活動法人 銀座ミツバチプロジェクト広報の田中章仁さんに聞きました。
「銀座から半径2キロ圏内には皇居・浜離宮・日比谷公園という大きな公園があります。また、街の街路樹も100本単位で植えられています。ミツバチたちは、そこから蜜を集めてきています」。

特定非営利活動法人 銀座ミツバチプロジェクト広報の田中章仁さん
そもそもミツバチは2キロも飛ぶのでしょうか?
「長距離を飛ぶのは疲れるので(笑)、近くに花があればそこに行きます。ただ、ミツバチも美味しいものを食べたいので、近場で蜜が見つからない場合は、がんばって飛んでいるようです」。
一匹のミツバチが蜜を見つけると、有名な「八の字ダンス」をして仲間に蜜の場所を伝えます。お尻を振る角度で蜜のある方向を表し、お尻を振る速さで距離を表しているそうです。
一体ずつが意思を持ってコミュニケーションしていると知って、ミツバチに親近感が沸いてきます。

養蜂所は、このビルの屋上にある。本当に銀座の中心! ここからミツバチたちが蜜を集めに飛び立つ
ミツバチが蜜を集めるのは3~7月。
銀座ミツバチプロジェクトのミツバチたちは、3~4月に銀座の街路樹や皇居の「桜」、5月に街路樹の「マロニエ」、6月に皇居外周の「ゆりの木・トチノキ・菩提樹」、7月は国際フォーラムに植えられている「エンジュ」から蜜を集めてまわるそうです。
最盛期は6月で、1週間に約100キロのハチミツが採れるそうです。まさに、半径2キロ圏内の自然の恵みを食べる、“究極の地産池消”。

銀座ミツバチプロジェクトのハチミツ。国際フォーラムに植えられたエンジュのハチミツと、皇居・京橋近辺の桜のハチミツ。桜のハチミツは、口に入れた途端にふわっと桜の香りがする絶品! この桜のハチミツを食べた人が味に魅了されて、銀座の各店舗とのコラボレーションが実現していった
奇想天外なことをする人は現れるもの
2006年からスタートした「銀座ミツバチプロジェクト」。今でこそ150人のメンバーがいて、国内外から視察の来る団体ですが、設立当初は活動内容の理解を得るのが大変だったようです。
「銀座で養蜂ですから、最初は怪訝な顔をされました。ミツバチは刺すイメージがあるので、そんな昆虫を銀座の街に放って大丈夫か、という意見もありました。ただ、銀座は常に新しいものを受け入れてつくられてきた街です。明治時代から、新聞街・銀行街と当時の最先端が銀座に集まって街が形づくられていきました。そういう街の歴史を振り返ると、奇想天外なことをする人は現れるけれど、街にそぐわなかったら消えていくのだと、それが“銀座のフィルター”だと言ってくれた人がいて、プロジェクトをスタートすることができました」。

銀座のビルの屋上で養蜂…。奇想天外な発想は、「銀座フィルター」に受け入れられたようです
物件を探す銀座の街と養蜂は、どう寄り添っていくか
ミツバチは、蜜をとるときに受粉をして花を咲かせます。銀座ミツバチプロジェクトがスタートしてまもなく、銀座の街路樹に花が咲きはじめ、街に変化が出てきました。
その目に見える環境の変化が現れたときに、銀座に仲間が増えたそうです。
「街に花が咲いていくのに気がついた方や、ハチミツを味見して美味しさを認めてくれた銀座の飲食店の皆さんが、ハチミツを商品に使ってくれるようになりました。今では様々な店舗が銀座限定品として商品を販売していただいています。ミツバチが飛びまわるという性格上、自分たちだけで養蜂はできないので、クローズした組織ではなく、街に寄り添っていく方法を考えて今のかたちに落ち着きました」。

銀座の店舗とのコラボレーションのひとつが松屋銀座のシェ・シーマで扱う「銀座はちみつシュー(400円・税込)」。 中にハチミツジュレが入っていて、銀座ミツバチプロジェクトのハチミツの美味しさをじっくり味わえる。銀座限定ということもあり、人気商品のひとつになっているそうだ

こちらは松屋銀座に入る喜多福の「銀座はちみつ梅(378円)」「銀座はちみつ入り季節のピクルス(432円)」※税込 いずれも銀座ミツバチプロジェクトで採れたハチミツを使っている
銀座で楽しく経済をまわす
プロジェクト発足から11年、銀座ミツバチプロジェクトは、「銀座の活性化」と「都市と環境は共生するのが次世代の街のあり方」という2つの理念を持って活動しています。
「経済合理性を一番に考える地域活性ではなく、楽しそうなことをやっているけれど実は環境に優しいとか、周りが参加したくなる仕掛けから銀座の経済がまわっていけばいいと思っています。今後も、銀座の皆さんと様々な角度からコミュニケーションを続けていきたいと思っています」。
このコミュニケーションを体現する場として、多種多様な人が集まる場としてつくられたのが、養蜂所と同じビルにつくった「ビーガーデン」。
福島の菜の花・新潟の茶豆など日本各地の作物を育てており、銀座や産地の人々が一緒に収穫をするそうです。

養蜂所と同じビルにある「ビーガーデン」。菜の花や茶豆のほか、銀座のバーでつかうミント等のハーブ園もある
物件を探す銀座の魅力の多様性を促進する
一言で”こんな街”と言い表すのが難しいのが銀座。
新橋の芸者がいて、歌舞伎座があり、ファストファッションとハイブランドのショップが並んでいて…ここに、銀座ミツバチプロジェクトから発信する「環境の街」というブランドが根付いたら、さらにおもしろい街になりそうです。
「そもそも多様性がある街に、”環境の街・銀座”という姿を見せられれば、世界から賞賛される街になるのではと思っています」。
田中さんは、銀座に空いている土地はほとんど無いけれど、空いているビルの屋上はたくさんあると言います。環境の街・銀座は、今まで注目されてこなかったビルの屋上から始まるかもしれません。
実は、暮らす街としての側面もある銀座。2017年2月末時点で、LIFULL HOME’Sには銀座駅徒歩圏内の賃貸物件が100件弱掲載されています。
都心で自然が無いイメージのある銀座ですが、これから変わっていくかも?! 多様な魅力で様々な人を惹きつける銀座に、これからも注目です。

銀座は、ショッピング・グルメ・アートの街の次に、環境の街にもなり得るか? 今後の銀座に注目
【コラム】ご存知ですか? ミツバチの命は30日程度であること
甘味料のイメージがあるハチミツですが、ヨーロッパでは昔から薬として扱われてきました。ミイラの防腐剤として、ハチミツが使われていたという記録もあるそうです。
最後に、ハチミツをつくってくれるミツバチについて少し触れておきます。
ミツバチが生きられるのは30日程度というのはあまり知られていない事実。
生まれてから死ぬまでの役割は決まっていて、①巣の掃除 ②子育て ③巣の修復 ④蜜の受け渡し ⑤門番 ⑥門番をしながら飛ぶ練習 ⑦ハチミツ集め の順に役割をこなして天寿を全うするそうです。
ひとつの巣箱に女王バチは1匹、女王蜂の寿命は3年程度で、女王蜂が死んだら次の女王蜂候補を2~3匹つくります。ただし、1匹目の女王蜂が孵化したら、争いが起きないように残りは殺してしまうそう。
また、働き蜂はメスのみで、オスは何をしているかというと、女王蜂が一生に一度外に出るタイミングで巣の外に出て、女王蜂と交尾をするそうです。ただし、交尾をしたオスはその時点で死亡します。
秋、ハチミツが少なくなるころには働き蜂(メス)がオスを巣の外に追い出すため、オスは餓死してしまうそうです。
人間から見たら壮絶な人生ですが、自然の摂理に則った賢い生き方といえるかもしれません。いずれにしても、私たち人間は、そんなミツバチを通して自然の恵みをいただいているのですね。

ふだん食べているハチミツには、壮大なドラマがありました。大切に食べないといけません
物件を探す更新日: / 公開日:2017.03.30









