トークショーは2階の多目的スペース「 yoriai(よりあい)」で開催されました。プロジェクトを手がけるメンバーが「中宇治のこれまでとこれから」をテーマに意見を交わすとあって地域の方々の関心も高く、始まる前から会場は多くの人でいっぱいに。熱気に包まれてトークがスタートしました。

会場席はあっという間に満席
会場席はあっという間に満席

ボロボロの建具工場が見事に生まれ変わった!

【スピーカー】
宮城俊作(奈良女子大学教授・平等院住職)
森正美(京都文教大学教授)
山根健太郎・武田憲人・山田央彦(一級建築士事務所expo(エキスポ))
岸本千佳(addSPICE)

まず始めにプロジェクトのディレクションを担当する岸本氏から、施設が完成するまでの経緯について説明がありました。

「地域の活性化につとめる宇治観光まちづくり株式会社から『今の宇治に危機感を抱いている。若い人のためのスペースを一緒につくってくれないか』というご相談をいただきました。設計は、古民家再生を数多く手がけ、宇治でも喫茶店の改修も手がけた実績のあるexpoさんにお願いして、一緒にプロジェクトを進めることに。
木造町家と鉄骨の建具工場だったこの建物は最初、今では想像しがたいほどボロボロでした。5月の現場見学会ではそんな状態をあえて多くの方に見ていただき、それでもやりたい! というチャレンジングな3組の方を募り、ここで小商いをしてもらうことに決まりました。
そのあといよいよ施工に入りましたが、もともとボロボロだった建物だけに一時は骨組状態になったほどでした。今回はお店の内装もexpoさんに手がけていただき、最初にプロジェクトチームの皆さんが集まった会議から1年程かかって、今ようやく完成に至りました。やっと……! という実感が皆さんあると思います」

「出身が宇治という縁もあって今回のプロジェクトに携わらせていただいています」と話す岸本氏
「出身が宇治という縁もあって今回のプロジェクトに携わらせていただいています」と話す岸本氏

歩いて楽しい宇治の街。ポテンシャルを引き出す余地がたっぷり

以前、宇治の古民家を喫茶店として再生し、今回、中宇治yorinの改修を手がけたexpoの方々は、宇治の印象についてこう語ります。

「以前、宇治の喫茶店の改修に携わったとき、宇治に観光に来ても日帰りができてしまうので、滞在型の施設や住まう人たちが宇治のなかで完結して楽しめる場所があれば、と強く感じていました。今回のプロジェクトが進むなか、多くの方に『やっとこういう場所ができた』と声をかけていただきました。京都市内とは違った明媚さのある宇治に、皆さんが待ち望むこういう場所がもう少し増えていくといいのかなと思います」(山根氏)

「最初にこの建物の前の通りを案内してもらったとき、とても狭くて、人間のスケールに近い感じの裏通りがたくさん残っていて、京都市内のように碁盤の目に直行した通りが通り抜ける感じではなく、微妙にうっすらと曲がって見通せないところがあるなど、本当に歩いていて楽しいと感じました。宇治にはそういうポテンシャルを引き出していく余地がまだまだあると思います」(山田氏)

さらに、武田氏が建物設計にまつわる舞台裏について、次のように話しました。

「今でこそ4つのスペースに分かれているのが当たり前のようになっていますが、実は最初は中庭もなく、向こうの町家がこの建物までくっついてる状態でした。奥に建っていた蔵を撤去すると山が見え、入口から奥に明かりが見えることがわかりました。暗い中から向こうの方に光がある建物にするよりは、真ん中にワンクッション明るい場所をつくり、町家的な暗いところ、明るいところ、少し重たい暗いところ、そしてまた明るいところ、と多層的に明暗が繰り返される形にするほうがリズム感が生まれるということで、これで行こう! と3人の意見が一致しました。結果的にちょうどよいテナントスペースになり、今後も皆さんが協力し合えそうな雰囲気になったので、とてもよかったと思っています」

来場した学生から質問を受けるexpoの山根氏(右)
来場した学生から質問を受けるexpoの山根氏(右)

グローバルな視点と同時に、もっとローカルを極めていく視点を

出産を機に、子育てと仕事を両立させるため20年ほど前に宇治に移住してきたという森教授は地域住民として、まちづくり研究の専門家として多様な視点で意見を述べます。

「バブル崩壊後の宇治橋商店街は空き店舗がどんどん増え、商店街の皆さんは大変危機感を持っていました。何とかしなければということで地域参加型のお祭りを始めるようになり、10年ほど続けた頃には地域の雰囲気が変わってきました。それに連動して行政にも変化が見られ、重要文化財ではない古民家の改修などに取り組み始めています。この10年を振り返ってあらためて思うのは、平安の時代から積み重ねてきた歴史を次にどうつないでいくかを問われているタイミングではないかということ。
多くの海外の方が訪れる今、グローバルな視点は大事ですが、だからこそもっとローカルを極めていくという視点も同時に持つ必要があります。それが全国どこでもできるのかというと、そうではなく、そういう意味で宇治は地域資源に恵まれていると思いますが、それが地域の方からは意外と評価されていないように感じます。
多忙な今の世の中、これからは住職接近というモデルが重要になってくると思います。たとえば町家の空き家対策としてこれを考えるとき、町家自体の使用価値は高いですが、居住価値という点ではなかなか難しいところです。この点をどう面につなげていくかというのが次に取り組むべき課題だと思います」

母、研究者、プロジェクトメンバーなどさまざまな立場から説得力ある意見を述べる森教授(右)
母、研究者、プロジェクトメンバーなどさまざまな立場から説得力ある意見を述べる森教授(右)

宇治に住まう私たちが、この街をつくっていく

トークショーの後半には、会場にいらっしゃった平等院住職の神居文彰氏もトークに加わりました。

「中宇治yorinが立ち上がり、お店を展開していくことになりますが、私たちはこれをもって、宇治の土地の経済価値だけを高めようというような考えは一切ありません。この街で実際に小商いをして、生活をして、街の文化をつくっていくのは、宇治に住まう私たちです。私たちがどうするかを考え、これから動いていく1つのきっかけとして宮城住職、岸本さん、expoさん、森先生達と共に今回のオープニングを開催させていただいています。
宇治は本当に素晴らしい街です。でも、ここに住んでいる方々がその素晴らしさを活用しない限り、生ける街にはなり得ません。皆さんそのことをぜひ理解していただき、自分たちが住まっているこの地に誇りを持ち、これからどう活用していくかということを真剣に考えていただきたいです」

神居氏の言葉にじっと耳を傾けていた来場者の皆さん。お話が終わると同時に会場が大きな拍手に包まれました。

多様な人が動きやすい街は、安全・安心度の高い街にもなる

トークショーの最後を締めくくるのは奈良女子大学で環境デザインを教え、平等院住職でもある宮城教授。中宇治の未来について次のように語りました。

「地方都市でまちづくりに携わっていると“賑わい”という言葉が必ず出てきます。にぎわいのバロメーターとして何百人、何千人、何万人来たという話をよくされますが、いろいろな街が同じようなことをやれば、結局は人の取り合いになるわけです。それよりもモビリティ、つまり街の動きやすさのようなものが上がれば、同じ人数でも賑わいにつながっていきます。そこがたぶんこれからの分かれ目になっていくでしょう。
今はスマホ片手に街の隅々まで人が入っていける時代です。高齢の方や体の不自由な方、海外から来た方などのモビリティを高めるためのさまざまな仕組みをつくり、街中にネットワークがある状態ができると街が非常に変わっていくと思います。そして、それはおそらく街の安全や安心に必ずつながっていきます。安全・安心度が高い街は、街としてのグレードがどんどん上がっていくと思います。そういったことに取り組むことが、中宇治のまちづくりの次のステップかなと考えます」

中宇治yorinが完成したことで、宇治のまちづくりに新たな息吹が芽生えたようです。未来への期待がより一層高まる充実したお披露目会となりました。

中宇治yorinの最新情報や小商いの紹介などはホームページで確認できます。ぜひチェックしてみてください!
http://nakaujiyorin.com/

中宇治の新しい未来がここから始まる
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