埼玉県といえば何が浮かびますか? 『さいたまスーパーアリーナ』、『ガリガリ君』、浦和と大宮は仲が悪いうわさがあるけれど、どちらも近年はタワーマンションが建って東京のベッドタウンのイメージも強いでしょうか。
実は、埼玉県の農業産出額は2,012億円(2013年産)で全国18位。特に、野菜は埼玉県の農業産出額の50.9%を占めていて、全国で6番目の産出量と、意外に”農業県”の埼玉県。
今回は、埼玉の農業を特集。美味しい野菜や農業に興味のある人は埼玉に住むべきかも?!
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埼玉に、農産物の収穫体験ができる公園があった
埼玉県深谷市にある「埼玉県農林公園」は、埼玉県民の農林業に関する学習機会を設けること、農林業への理解を深めることを目的につくられた公園。公園内で栽培している野菜・花・果樹の収穫体験ができます。
取材チームが訪れたのは、8月中旬。真夏に収穫ができるのは、モロヘイヤ・ピーマン・なす・ミニトマト・梨など。さっそく収穫体験をさせていただきました。
まずは、健康食材として有名なモロヘイヤを収穫。巨大な草のようなモロヘイヤは、先端の葉だけを摘み取ります。
「モロヘイヤは育ちやすい作物です。放っておくと上へ上へ伸びるので、新芽へ養分をまわすために定期的に切り戻しをします」。と農林公園管理事務所の荻野清春さん。
芽の先端はプチッと簡単に摘み取れます。プチプチと摘み取っていると無心になってきて、くせになる体験。袋いっぱいに詰めて100円はとても安い。粘り気のある葉っぱはクセのない味で、お味噌汁やサラダで食べると美味しいです。

左:モロヘイヤは葉の先を食べます 右:大きな草みたいなモロヘイヤ
子どもも好きになりそう! もぎたてのなすとピーマンの魅力
次は夏野菜の代表格、なすとピーマンを収穫。
表面がぱんぱんに張ったなすは、今にも落ちそうに大きくて美味しそう。ひとつずつはさみで切って収穫していきます。
ピーマンは香りがよくて、そのまま食べたくなるくらい。もぎたてのピーマンの香りがこんなに良いものだと初めて知りました。
なすはごま油で炒めて醤油で味付け、ピーマンはさっと炒めて塩をふって食べました。野菜そのものが美味しそうなので、自然にシンプルな調理方法になります。
野菜嫌いな子どもたちも、自分で収穫したものなら好きになってくれそう。

左:表面がぱんぱんに張った大きななす 右:香りのいいピーマン
物件を探す 街の情報を見る埼玉の土壌の良さが育てたブランド「深谷ねぎ」
埼玉県農林公園のある深谷市で有名なのが「深谷ねぎ」。深谷市を中心に、埼玉県のねぎ出荷量は全国1位です。
深谷ねぎの特長は白い部分の柔らかさと甘み。1年中栽培されていますが、特に美味しいと言われるのは、秋冬ねぎです。
埼玉県のなかでも深谷市がねぎ栽培で有名になったのは、昔から利根川の氾濫が繰り返されて肥沃な土壌になったことと、冬の日照時間が長い天候のため。改めて、農業は天候に左右される仕事なのだなと感じます。

深谷ねぎの特長は白い部分の柔らかさと甘み
埼玉県でしか栽培されない梨があった!
最後に梨の収穫体験。今回は埼玉県オリジナルの梨「彩玉(さいぎょく)」を収穫しました。
彩玉は1984年に「新高」と「豊水」を交配した新品種の梨で、埼玉県でしか栽培されていない貴重な梨です。

彩玉は甘みが強くて、食感の良さが魅力
物件を探す 街の情報を見る都心に近い立地を生かす、埼玉県ならではの農業とは?
埼玉県は、消費量の多い東京へすぐに野菜を運べる立地的メリットがあります。そのため、少量生産でも売れる可能性が高く、多種多様な野菜・果樹・花卉が栽培されてきたのが特長。東京を中心に日本全国へ出荷されるほか、埼玉県に点在している直売所にも置かれます。
「埼玉県は野菜の直売所が多くあります。新鮮なので、直売所で買う人も多いのではないでしょうか」。
朝採れた野菜がその日のうちに直売所に並んで、夕食で食べられる。近い場所でつくられた野菜を新鮮なうちに食べられるのは、”農業県”埼玉県民ならではのメリットでしょう。

農林公園管理事務所の荻野清春さん

埼玉県農林公園内にある直売所では、珍しい野菜が並んでいました。平日でも多くの人が野菜を買いにきます
自分で野菜をつくりたくなったら? 初心者の駆け込み寺はココ!
埼玉県農林公園では、植物に関する相談をすることができます。
「野菜や木・花の病気の相談や虫駆除の方法、植物の名前を知りたいというものまで、いろんな相談が寄せられます。家庭菜園レベルの内容はここで回答しています」と園芸相談員の清水昇さん。
例えば、じゃがいもが”そうか病”にかかったらどうしたらいいのか? という質問には、土壌に石灰を混ぜていないか確認をするそう。石灰は土壌の酸度を中性に近づける役割があるため多くの人がやっていますが、この土でじゃがいもを育てると”そうか病”にかかりやすいそうです。

埼玉県農林公園では、植物に関する相談をすることができる
物件を探す 街の情報を見る家で梨の木は育てられる?
梨の木は1本で100個以上の果実をつけるそうです。これを聞くと、庭に梨の木を植えたくなりそうですが、育てるのはけっこう大変そう。
「梨は葉が変色する赤星病にかかりやすいので、成長過程に注意が必要です。果実がなってきたら、今度は虫と鳥被害が出てきます。木は太陽に向かって上へ伸びていくので、葉や果実にまんべんなく太陽の光をあてるために剪定も必要ですね」とのことで、素人が安易に植えるのは考えものです。

庭で梨を育てるのはちょっと大変…
家で育てやすい野菜は?
「野菜はベランダや庭で育てやすいです。最初は種ではなく、苗を買って植えるといいでしょう。夏の終わりから秋にかけては、ブロッコリー・キャベツ・白菜・レタスなどがよく育ちます。特にレタスは虫がつきにくいので初心者でも育てやすいです」。
春は虫が元気になる季節なので、作物が育てにくい季節だそうです。
野菜や虫は、温度・日照時間に合わせて素直に育ちます。自然の道理に合わせて野菜の世話をすることで、人が自然から学ぶことがありそうです。

家で育てやすい野菜は?
物件を探す 街の情報を見る埼玉県の農業は”日本農業の縮図”
「埼玉県の農業は”日本農業の縮図”と言われます。それくらいいろんな野菜や果樹が栽培されているということです。ねぎ・こまつな・さといも・パンジーの出荷量は全国1位(※)ですし、最近は冬が暖かくなってきたので、温州みかんがとれていると聞きます。戦前には、さとうきびをつくっていた記録もあります。地質や気候に恵まれている埼玉は、本当に多様な作物が栽培されています」。

農林公園管理事務所・園芸相談員の清水昇さん
取材をしていて驚いたのは、北埼玉エリアで小麦の栽培がさかんなこと。小麦といえば北海道のイメージが強かったのですが、埼玉の小麦出荷量は全国4位(※)。浦和や大宮など都会のイメージが強い埼玉県ですが、実は、恵まれた大地と天候を生かした豊かな農業が行われていました。
埼玉は、東京に近いという立地の良さで住む場所に選ぶ人が多い県です。しかし、意外と”農業県”の埼玉の素顔を知ると、また違った視点で住まい選びができそうです。
※「平成25年主要農産物の算出額と構成比」(農林水産省調べ)

意外と”農業県”だった埼玉県
■埼玉県農林公園
住所:埼玉県深谷市本田5768-1
電話:048-583-2301
開園期間:1月4日~12月28日 ※毎月臨時休園日あり
開園時間:午前9時~午後4時30分 ※4月~9月は午後5時30分まで開園
入園料・駐車場:無料
更新日: / 公開日:2016.09.20










