2日間のわがままプランのスタート

1泊2日の体験プログラムをアテンドいただくのは、雲南市 移住定住相談の専属スタッフの須藤さん。プログラムの日程づくりから個人のニーズに対応してくださり、体験の2日間はあちらこちらと市内を案内いただきます。

雲南市は、出雲縁結び空港からも県庁所在地の松江からも車で約30分、交通の便は良いのが魅力。結構な山道を通りますが、豪雪地帯ではないため冬場であっても雪道の心配はあまりないとのこと。やはり、移住者が直面するのは公共交通機関の不便さ。都会では車がなくとも生活できますが地方では必須。私みたいなペーパードライバーにとって、積雪量の多い雪道を運転するのはちょっと難しい。移住地としては、雪が多い地域かどうかなど、気候もしっかりチェックです。

そうこうしているうちに、ランチにと推薦してくれた「菜野花」さんに到着。ここは、雲南市では珍しいマクロビオティック・カフェ。お子さんのアトピーがきっかけで、食とカラダの関係を研究し、マクロビ食とそのショップをはじめられたのだとか。おいしいランチはもちろんのこと、オーナーさんにこの街でショップを開いた感触などもうかがいます。ランチもさることながら、お弁当が人気。マクロビのイベントを開催すると、県外からも多くお客さんが集まるそうです。

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「菜野花」さんのマクロビランチ。700円でこのボリューム

田舎の子も山では遊ばない?知っておきたい子育て環境

次に案内いただいたのが「里山笑学校」。持続可能な農業を目指すNPO法人日本エコビレッジ研究会さんが、今後、自然の中で子どもたちが遊んだり学んだりする場づくりを計画されています。お話しを聞いて知ったのが、実は、田舎の子どもたちであっても必ずしも大自然で遊んでいないということ。

そこに山があっても、実は人の土地だったりするため、結局「テレビゲーム」で遊んだりと都会とあまり変わらない遊び方になってしまっているそう。そこでここではツリーハウスをつくったり、竈での煮炊き体験など里山の魅力と文化を子どもたちに伝えていこうとされてます。

こうしたことは地域の交流に努められている「阿用交流センター」さんでも同じ話が出ていました。「田舎の子どもたちが山での遊び方を知らないばかりか、30-40代の大人たちも分からなくなっている」と。こちらの地区では、小学生を集めて通学合宿を行い昔ながらの田舎の暮らしを伝える取り組みもされています。

都会の人間は、「田舎に行けば子どもたちは山や川で普通に遊んでいる」と思いがち、しかし実際には素材があっても「場」や「コミュニティ」がないと自然と交わる機会は多くはないのだとか。こうした移住者の勝手な思い込みというのは、結構多いのでしょうね。こうしたギャップをあぶりだすのも現地を訪れる醍醐味です。また、最近では、こうした昔ながらの知恵や自然との共生を次世代につなぐ取り組みをされる地域も増えているため、移住先のコミュニティの元気さも感じておきたいものです。

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田園風景が広がる田舎の美しき風景。子どもたちも外で元気に遊んでほしい

無料の宿泊は、宿屋にゲストハウスに民泊と色々

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三瓶浩己さんと三瓶裕美さんご夫婦。
屋号は「つちのと舎」

この体験プログラムでは、宿泊が無料(食事代は別途)で提供いただけるのですが、この日のお宿は民泊。しかも、東京からのIターン、地域おこし協力隊として雲南市に入り、その後こちらに定住された三瓶さんご夫婦のご自宅に泊めていただくことに。

民泊だけに、ご夫婦の暮らしにそのままお邪魔させていただく距離感が嬉しく、しかもIターン経験者のご夫婦だけにリアルなお話しもうかがえるのがありがたい。須藤さんのさすがのアレンジです。宿泊に関しては、利用者の趣向や体験プログラムの内容に合わせ、宿屋やゲストハウス、ペンションとその時々最適な場所を提案されているそうです。

ここでは田舎料理を一緒に作るのもプログラムの一部。到着後には奥様の裕美さんと地元の野菜をたっぷり使った素朴なほっこり料理に挑戦。ご夫婦の食卓で一緒にいただきました。

「あまり料理が上手じゃないけれど、地元の野菜やお米がおいしいからそれだけで十分」と謙遜されていましたが、本当に素材の持つおいしさにびっくり。焼いただけというズッキーニとインゲンの味が濃く、玉ねぎは驚くほど甘い。玄米ご飯には、地域の方と一緒につくった「桜の塩漬け」が添えられていて、優しいアクセントに。

「雲南は桜の名所で、地域の女性グループで桜の花をを採って塩漬けにして販売しています。『桜摘むのはクセになるよ~』と言われていたのですけど、本当に楽しくて、熱中しました(笑)」そんな地域での暮らしぶりを聞けるのも楽しい食事の時間です。

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この日は残念ながら三瓶さんの畑の収穫はなかったが、おいしい地元野菜

民泊でIターンオーナーのお話しを存分に聞く

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「出雲風土記」にも湯治場として
記されている「湯村温泉」

食事の後は、なんとこの時期天然の蛍が見られるということで、温泉に立ち寄りながらの蛍見物のサプライズを企画してくれていました!

温泉は「出雲風土記」にも湯治場として記載があるという歴史の湯。とっても雰囲気のある天然温泉の湯につかりながらの女子トーク。もちろん移住についてもたくさんお話しを聞かせていただきました。

東日本大震災を期に、生き方を見直し移住を決めたお二人。浩己さんは「産業体験制度」を活用して1年間の農家研修を行い、裕美さんは「地域おこし協力隊」を経てこの場所に家と畑を購入されたのが2014年。現在は、浩己さんがお勤めをしながら自然農を営み、裕美さんは地域のラジオ番組のパーソナリティや、小学校でダンスの授業を受け持ちながら、自宅でボディワークのセラピストをするなど多彩に活躍されています。

実は雲南市は市民演劇が盛んな地域で、プロ顔負けの舞台が開催されるのですが、裕美さん女優としても参加されているのだとか。「東京にいたときよりも、文化的なことをたくさんしている自分にびっくりです」と笑います。

もちろん田舎にも都会にもそれぞれ良さと難しさはあるものの、移住をして感じるのは「つくる側に立つことが多くなった」ことだそう。

「東京にいる頃は、物にしても楽しみ方にしても”消費”することばかりだった気がします。今の方が演劇をしたり、音楽イベントを開催してみたり、ないところから何かをつくっています。雲南は地元の方も活動的で、色んな方と協力して色んなことができるように思います」(裕美さん)

今年から民泊としてご自宅を提供するようになったのも、「先に移住して来たものの役割として、自分たちの経験談と暮らしぶりを見てもらって役に立てば」との思いから。そう話してくれたのは旦那さまの浩己さん。

畑仕事をする浩己さんは、次の日も朝早くから活動のはず。それにも関わらず、「せっかくこの時期に雲南に来てもらったのだから、蛍を見てもらいたくて」と蛍の群衆が現れるという場所に夜のお散歩に。するとそんな気持ちが通じたのか、ありがたいことに数えきれないほどの蛍の光が現れました。ゆらぎながらの光はあまりにも幻想的で、息を飲んで立ちつくすばかり。どこか違う空間に入り込んだような貴重なひと時を経験させてもらいました。

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民泊としておじゃました。
三瓶さんご夫婦宅

2週間前に移住した女性に遭遇!

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「日登牧場」さんでは放牧を実践。
赤ちゃんに授乳体験!

次の日も古民家を改修したシェアオフィス(こちらのお話はまた別途ご紹介します)。日本で初めて低温殺菌牛乳をつくった雲南市の代表企業「木次乳業」の乳牛を育てる「日登牧場」などなどアテンドいただきました。単に見学をするだけではなく、そこで働かれる方々にお話しも聞けるように須藤さんが配慮をしてくれます。

ちょうど市内を案内していただいていると、とびっきりの笑顔で駆け寄ってくる女性がこちらに。なんと2週間前に埼玉県から移住してきたばかりという黒川さん。小柄な女性ながらとてもパワフルです。木次乳業さんの「人間都合ではなく自然との共存」という理念に心を打たれ、就職を希望して移住を決断。もちろん、この「田舎体験プログラム」の利用者でもあり、住まい探しをされたそうです。

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この日、移住して2週間という黒川さん

実は黒川さん、現在はゲストハウスでの仮住まい。「もう少し良い物件が出るまでとりあえずはゲストハウスで」と須藤さんが手配をしてくれたのだとか。そんなきめ細やかな対応ができるのも雲南市の移住サポートの魅力。

街の輪郭を捉えるのに大切なのは、やはり魅力的な「人」の存在。それをたっぷりと感じさせてもらえた2日間でした。

次回雲南市さんに取材をした内容を例に、市が提供する移住サポートプランや、「移住に向く人、向かない人」などをご紹介します。

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