少子高齢化や地方の過疎化を背景に、日本国内における空き家問題は年々深刻さを増しています。その一方で、訪日外国人観光客の需要は急速に拡大しており、主要都市や観光地を中心に宿泊施設不足が再び大きな課題となっています。
こうした中、所有しているものの使い道のない「空き家」を「民泊」として再生・活用する手法が注目を集めています。資産を有効活用して新たな収益源を生み出せるだけでなく、地域の活性化や空き家放置によるリスク解消にもつながるためです。
しかし、空き家で民泊を始めるには、法律(住宅宿泊事業法など)の壁や、特有の基準、近隣トラブル対策など、事前に押さえておくべきポイントが多数存在します。本記事では、空き家を活用した民泊運用の基礎知識から、必要な法的手続き、成功のポイント、運用が難しい場合の代替案まで、専門的な視点から網羅的に解説します。物件を探す空き家バンクで住まいを探す
空き家は民泊として活用すれば維持コストを解消し収益化できる
放置空き家の固定資産税や管理費などの維持コストを削減するだけでなく、賃貸経営よりも柔軟に方針転換(自分で住む、売却するなど)ができる点が大きなメリットです。 詳しくは、「空き家を民泊として活用する3つのメリット」をご覧ください。
民泊を始めるには住宅宿泊事業法などの基準を満たす必要がある
主に3つの法律(住宅宿泊事業法、旅館業法、特区民泊)があり、それぞれ営業日数や用途地域、消防設備の設置基準が異なるため事前の確認が必要になります。 詳しくは、「知っておくべき「民泊」の3つの法律と基準の違い」をご覧ください。
民泊運用が難しい空き家は特定空家になる前に早期売却が賢明
マンション管理規約や条例の制限、消防設備投資の負担で民泊化が難しい場合は、固定資産税が最大6倍に跳ね上がる前に不動産会社の一括査定を利用して売却するのがおすすめです。 詳しくは、「民泊運用が難しい空き家はどうすべき?最適な代替案」をご覧ください。
空き家を民泊として活用する3つのメリット
民泊とは、宿泊施設ではない一般の民家や空き家を活用し、旅行者などに宿泊サービスを提供することを指します。ただ放置しているだけの空き家を民泊へ転換することには、主に以下の3つのメリットがあります。
① 放置空き家の維持コストを解消し、収益化できる
誰も住んでいない空き家であっても、固定資産税や都市計画税、建物の維持管理費(修繕費や草刈り費用など)といったコストは毎年確実に発生します。空き家を民泊として稼働させることで、これら固定費の負担を相殺するだけでなく、立地や運用の工夫次第では毎月大きな利益(キャッシュフロー)を生み出すことが可能です。
② 賃貸経営よりも柔軟な運用・転用が可能
一般的なアパートや一戸建ての「普通借家契約」で賃貸経営を行う場合、一度入居者が決まるとオーナー都合での解約や退去請求は法律上非常に困難です。一方、民泊(住宅宿泊事業)であれば、あくまで「宿泊施設」としての提供となるため、将来的に「自分で住む」「親族に譲る」「売却する」といった方針転換が必要になった際、いつでも柔軟に対応できるメリットがあります。
③ 地域社会への貢献と物件の劣化防止
建物は人が住まなくなると、換気が行われず湿気がこもり、急速に老朽化が進みます。定期的にゲストが宿泊し、清掃や換気が行われる民泊運用は、建物の寿命を延ばすことにつながります。また、インバウンドの受け皿となることで、地域にお金が落ち、周辺コミュニティの活性化にも寄与します。
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自分の家も宿にできる“民泊”の特長と課題
知っておくべき「民泊」の3つの法律と基準の違い
日本で空き家を使って合法的に民泊を営むには、主に3つの法律(制度)のいずれかを選択し、その基準を満たす必要があります。
① 住宅宿泊事業法(民泊新法)
2018年に施行された、最も一般的な民泊の形態です。最大のメリットは「住宅」の扱いのまま始められるため、用途地域(住居専用地域など)の制限をほとんど受けず、多くの空き家で届出が可能な点です。ただし、年間営業日数が「180日以内」に制限されるため、残りの期間をどう活用するか(マンスリー賃貸との組み合わせなど)の戦略が必要になります。
② 旅館業法(簡易宿所営業)
年間365日フルに営業して収益を最大化したい場合に選ばれるのが、旅館業法に基づく「簡易宿所」の許可取得です。ただし、空き家の所在地が「工業地域」や「第一種・第二種低層住居専用地域」などの場合は営業できません。また、建築基準法上の用途変更や、非常に厳しい消防設備の設置基準(自動火災報知設備など)を満たす必要があり、初期の改修コストが高額になる傾向があります。
③ 国家戦略特区民泊(特区民泊)
政府が指定した特定の自治体(東京都大田区、大阪府の一部自治体など)でのみ実施できる制度です。180日制限がなく通年営業が可能ですが、「最低宿泊日数が2泊3日以上(自治体により異なる)」といった独自のルールが設けられています。対象エリアに空き家がある場合は、有力な選択肢となります。

本格的な民泊解禁への動きもある
おすすめ特集から住宅を探す空き家を民泊にする際の見落とせない注意点とリスク
空き家民泊は魅力的な投資・活用法ですが、事前の確認を怠ると、事業の継続が不可能になるほどの致命的なトラブルに発展することがあります。特に以下の3点には注意が必要です。
① マンションの場合:管理規約による「民泊禁止」の壁
分譲マンションの空き部屋を民泊にしようとする場合、「マンション管理規約」を確認してください。現在、大半のマンションで「民泊(住宅宿泊事業)を禁止する」という旨の条項が明記されています。規約で禁止されている場合、どれだけ法律上の要件を満たしていても営業はできません。隠れて営業した場合、高額な違約金請求や差し止め裁判に発展するリスクがあります。
② 戸建ての場合:近隣住民とのトラブル・騒音・ゴミ問題
一戸建ての空き家を民泊にする場合、最も多いのが「騒音」「夜間の話し声」「ゴミ出しルールの不徹底」による近隣住民からの苦情です。特に閑静な住宅街に見知らぬ外国人が頻繁に出入りするようになると、周辺住民は強い不安を感じます。事前に近隣への説明会や挨拶を行うほか、多言語でのハウスルール作成、夜間の騒音センサー設置などの徹底した対策が求められます。
③ 家主不在型における「民泊管理会社」への委託義務
空き家活用は基本的にオーナーが別の場所に住む「家主不在型」となりますが、この場合、国土交通省に登録された「住宅宿泊管理会社」への管理委託が法律で義務付けられています。これには毎月の委託手数料(売上の15〜20%程度が相場)が発生するため、そのコストを織り込んだ収支シミュレーションが必要です。
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民泊の問題点とは?
民泊運用が難しい空き家はどうすべき?最適な代替案
「調べてみたら自治体の条例が厳しくて年間180日すら営業できない」「マンション規約でNGだった」「消防設備投資が高額すぎて予算オーバーになってしまった」など、民泊を断念せざるを得ないケースも少なくありません。
そのような場合でも、空き家をそのまま放置することは避けたいものです。2023年(令和5年)の法改正により、適切な管理が行われていない空き家は「特定空家」または「管理不全空家」に指定されるリスクが高まっています。指定されてしまうと、固定資産税の優遇措置(最大6分の1に減額)が解除され、税金が実質最大6倍になる可能性があります。
民泊以外の選択肢として、普通借家としての賃貸や、近年需要が高まっている「レンタルスペース」への転用が難しい場合は、早めに売却処分を検討するのも一つの方法です。築年数が古くても、土地としての価値や、リノベーション前提の買取需要が存在します。まずは信頼できる不動産会社に一括査定を依頼し、「今いくらで売れるのか」の現実的な数字を把握することから始めましょう。
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人や文化との出会いが広がる民泊
【よくある質問(FAQ)】
Q.1 空き家で民泊を始める場合、年間何日まで営業できますか?
A.1 住宅宿泊事業法(民泊新法)に基づいて届け出る場合、年間の営業日数は最大180日までと定められています。365日フルに営業したい場合は、用途地域の制限や厳しい消防基準をクリアした上で、旅館業法に基づく「簡易宿所営業」の許可を取得する必要があります。
Q.2 マンションの空き部屋を民泊として活用することはできますか?
A.2 法律上の要件を満たしていても、マンションの「管理規約」で民泊(住宅宿泊事業)が禁止されている場合は営業できません。現在、多くの分譲マンションで民泊禁止が明記されているため、事前に管理組合や規約の確認が求められます。
Q.3 空き家民泊で発生しやすいトラブルにはどのようなものがありますか?
A.3 旅行者による深夜の騒音、話し声、ゴミ出しルールの不徹底による近隣住民とのトラブルが代表的です。また、オーナーが同居しない「家主不在型」の民泊では、住宅宿泊管理業者への管理委託が法律で義務付けられています。
Q.4 民泊の基準を満たせない古い空き家はどう活用すべきですか?
A.4 消防設備の設置費用やリフォーム費用が高額で民泊化を断念する場合、建物をそのまま放置すると「特定空家」に指定され、固定資産税の優遇措置が解除されるリスクがあります。賃貸への転用が難しければ、手遅れになる前に不動産会社の一括査定を利用して売却することをおすすめします。
更新日: / 公開日:2016.08.19









