2016年。東京湾アクアライントンネルが浸水し、崩落するという大事故が起きました。対策に追われる関係者たち。そして、謎の巨大生物が東京湾に出現。巨大生物は上陸し、街が破壊されていく……。

実はこれ、庵野秀明監督作品として話題の「シン・ゴジラ」で描かれる世界です。ゴジラは、日本の怪獣映画の原点。そのゴジラと大きな関わりがあるのが、品川駅なのです。

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1954年8月13日。太平洋上を航行中の貨物船が、救難信号を発信し行方不明になる事故が発生。その後、同じ海域で原因不明の沈没事故が続出し、同海域の大戸島に巨大生物が上陸。ゴジラと名付けられたこの巨大生物は北上し、東京湾から品川付近に上陸。走行中の東海道線らしき列車がゴジラの足に激突して脱線。ゴジラは客車をくわえて放り投げ、足元の客車を蹴散らし、周囲の建物を破壊して海へ戻っていったのでした……。

 

ということで、品川は、「ゴジラ日本初上陸の地」であり、品川駅は「日本で最初に怪獣に破壊された駅」なのです。もちろんこれは映画に描かれた出来事なのですが、品川駅にはあたかもそれが歴史的事実かと思わせるかのような、モニュメントがあるのです。

 

品川駅1番ホームの床面に怪獣のプレートが。※山手線ホームはで2016年8月11日までホームドア取り付け工事が実施され、ゴジラのプレートは一時的に取り外されています

品川駅1番ホームの床面に怪獣のプレートが。※山手線ホームはで2016年8月11日までホームドア取り付け工事が実施され、ゴジラのプレートは一時的に取り外されています

 

品川駅1番線ホームの8号車乗車口付近の床面。そこに、独特のデザインのプレートが埋め込まれています。

 

プレートには怪獣のシルエットと、「JR東日本 品川駅」「SHINAGAWA STATION」「鉄道発祥の地」「Since 1885」「山手線 0km」の文字。

 

この怪獣のシルエットが、品川駅とゴジラの関わりを示しているのです。ちなみに怪獣のシルエットがゴジラらしくないのは、おそらく版権の関係かと思われます。

 

プレートのデザイン。怪獣がゴジラに見えないのは版権の関係とか※山手線ホームはで2016年8月11日までホームドア取り付け工事が実施され、ゴジラのプレートは一時的に取り外されています

プレートのデザイン。怪獣がゴジラに見えないのは版権の関係とか。※山手線ホームはで2016年8月11日までホームドア取り付け工事が実施され、ゴジラのプレートは一時的に取り外されています

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「鉄道発祥の地」の意味は、品川が、事実上、日本で最初に開業した駅だからということを示します。

 

一般的に、日本の鉄道は、1872年10月14日(旧暦9月12日)、新橋~横浜間での鉄道開業が始まりだといわれています。わが国初の鉄道事業として、10月14日は鉄道記念日にもなっています。

 

しかし、実際にはこの「公式開業」に先立って、日本の鉄道事業は、品川~横浜で仮開業をしているのです。それが1872年6月12日(旧暦5月7日)。仮開業ではありますが、新橋駅開業よりも半年ほど早いのです。

品川駅創業記念碑

品川駅創業記念碑

 

品川駅高輪口、駅前のロータリーに「品川駅創業記念碑」があります。品川駅開業80年を機に駅舎が改装され、それを記念して1953年に品川駅関係者らによって立てられたもの。

 

表面には、「明治五年五月七日 品川駅創業記念碑 品川横浜間鉄道開通」。

 

品川駅創業記念碑

 

裏面には、当時の表記のまま(午後4時が「午后四字」 運賃が「賃金」など)、運賃や発車時刻が記されています。参考までに裏面の碑文を紹介しておきます。

 

鉄道列車出発時刻及賃金表    

定 明治五年五月七日

 

上り                    
横浜発車   品川到着         
午前八字   午前八字三十五分    
午后四字   午后四字三十五分    

 

下り

品川発車   横浜到着

午前九字   午前九字三十五分

午后五字   午后五字三十五分

 

賃金表  
車ノ等級
 上等  片道 壹円五拾銭
 中等  同  壹円
 下等  同  五拾銭

 

仮開業当時は1日2往復の運転で、横浜駅8時発の列車が品川駅到着8時35分。この列車が折り返して9時品川発で9時35分横浜着。午後になって横浜発16時の列車が16時35分品川着。折り返し17時品川発で17時35分横浜着。

 

記念碑にはそうした単純な運転時刻が刻まれているだけですが、こうして時刻表や運賃を祈念碑に刻むことで、日本初の鉄道事業の詳細を後世に伝えたいと考えた人々の思いが伝わってくるような気がします。

 

記念碑の脇には、JR品川駅によって2006年に設置された、開業当時のいきさつを伝える解説もあります。日本の鉄道史の重要なエポックを示す記念碑や解説が、ほかならぬ品川駅の鉄道マンによって設けられているのです。

 

「ゴジラが最初に破壊した駅は品川」、そんな、多くの人は知らないであろうエピソードで記念プレートを設置したり、創業記念碑の解説板を独自に設置するなど、品川駅は、駅に対する現場スタッフの愛情と熱意があふれている、と思わせる素敵な駅なのです。

 

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仮開業時の品川~横浜間の運賃は、上等1円50銭、中等1円、下等50銭。当時の米の価格が一升あたり4銭なので、これをベースに概算すると、品川~横浜の下等運賃は米20kgの値段に相当します。

 

現代の米の価格は、低価格米からブランド米まで差がありますが、おおむね10kgあたり3000~6000円くらい。ということは、品川~横浜の鉄道運賃は、最も安い米の価格で家産して、3等車(普通車)で6000円、1等車なら1万8000円ということになります。現在のタクシー並みの金額です。

 

しかし、鉄道開業以前の状況と比べると、利便性は格段に向上しました。

 

東京から横浜へは距離にして約28㎞。「お江戸日本橋七ツ立ち~」と歌われたように、日本橋を七ツ時(日の出の2時間くらい前)に出立して、適度に休憩をとりつつ、横浜に到着するのは昼過ぎころ。ですから、横浜に所要があった場合、日帰りはまず不可能となるのです。

 

鉄道の開業はこの状況を一変させました。1~2泊はあたりまえの横浜が、それが片道30分あまりになったのです。もちろん、日帰りも可能になりました。

 

仮開業は公式開業に向けての試験的な事業の意味合いがあります。当初1日2往復だった運転本数は、乗客数の増加に伴って次第に増え1日8往復になりました。

 

最大で1ヵ月で7万人が利用するという実績に、運賃も値下げされ、正式開業となる新橋駅開業時には、上等1円12銭5厘、中等75銭、下等37銭5厘となりました。

 

その後1874年には上等1円、中等60銭、下等30銭とさらに値下げされ、列車の運行も1日12往復に増発されました。

 

品川駅高輪口のロータリー

品川駅高輪口のロータリー

 

1885年3月1日、日本最初の私鉄である日本鉄道が、品川~赤羽間の「日本鉄道品川線」を開業します。

 

当時、日本鉄道は上野~熊谷間にすでに鉄道を開業させており、さらに高崎までの延伸工事が進められていました。北関東と東京を結ぶ輸送ルートが完成しつつあったのです。

 

その背景には、1877年の西南戦争で疲弊した国家財政を、外貨を稼ぐことによって立て直したい、という明治政府の思惑がありました。

 

群馬県には国家事業の富岡製糸所が建てられており、周辺では絹織物の生産が盛んです。これらの製品を横浜まで輸送し、外国へ輸出する輸送手段として、鉄道が注目されたのです。

 

しかし、上野駅から新橋駅までは、旧江戸城の外堀などを利用した、水運による輸送となっていました。列車から船へ、船から列車へという貨物の積み替えは手間と時間を要します。

 

これを改善すべく、上野~熊谷間の途中駅である赤羽と、新橋~横浜間の途中駅である品川を結んで、鉄道が敷設されたのです。これにより、北関東で生産された生糸や絹は、列車により直接横浜まで輸送されることになりました。

 

品川駅の山手線ホーム

品川駅の山手線ホーム

 

新しく敷設された、品川~赤羽間の「日本鉄道品川線」。このとき設けられた駅は、品川~目黒~渋谷~新宿~目白~板橋~赤羽の各駅。すなわち、この鉄道が、現在の山手線のルーツとなるのです。

 

日本鉄道はその後、品川線に新駅として池袋駅を開業、池袋~田端間に「豊島線」を開業します。そして、品川~池袋~田端間をの名称を「山手線」としました。これは現在のJR東日本にも受け継がれています。

 

一般に「山手線」として環状運転がなされている区間のうち、路線名を「山手線」とするのは品川~田端間のみ。田端~東京間の路線名は「東北本線」。東京~品川間の路線名は「東海道本線」となります。

 

山手線の電車は、形式的には、田端~東京間では東北本線に、東京~品川間では東海道本線に乗り入れ運転をしていることになるのです。

 

山手線の線路脇に立つ0キロポスト

山手線の線路脇に立つ0キロポスト

 

つまり、品川駅は山手線の起点駅。これが「山手線 0km」の意味で、線路の脇には数字の0を表示した標杭があります。

 

山手線の「0キロポスト」と呼ばれるもので、この場所が、厳密な意味での山手線の起点。各駅間の距離などの基準となる場所です。

 

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更新日: / 公開日:2016.08.10