家賃値上げの通知が来た際、「1,000~5,000円アップ」といった比較的少額の提示の場合には、どう対応すべきか迷うものです。
「このくらいなら受け入れられる」「でも、少しでも負担が増えるのは嫌だから拒否したい」など、判断に悩むことが少なくありません。
実は数千円の値上げであっても、必ずしも受け入れる必要はありません。しかし、相場や状況によっては「受け入れた方が結果的に関係を維持できる」ケースもあります。
この記事では、1,000~5,000円程度の値上げの妥当性を判断する目安と、交渉にかかる「手間」と「金額」をてんびんにかけた賢い判断基準について解説します。
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家賃値上げ「1,000~5,000円」は相場として妥当?

家賃値上げを提示された場合、まず確認すべきは「その金額が相場として妥当かどうか」です。
物価上昇や固定資産税の増加などを理由に、貸主が家賃の見直しを行うこと自体は珍しくありません。ただ、それだけを理由にすべての値上げが正当化されるわけではありません。
そこで、ここでは以下の4つの視点から「1,000~5,000円の値上げ」が相場として受け入れられる範囲かどうかを判断する目安を解説します。
- 物価上昇分としての目安(消費者物価指数)
- 周辺相場との比較が最重要
- 金額だけでなく「上昇率(%)」で判断しよう
- 【金額別】よくある値上げ幅と入居者の反応
それぞれ詳しく見ていきましょう。
物価上昇分としての目安(消費者物価指数)
一般的に、1,000~5,000円程度の値上げ額は、物価上昇(インフレ)や固定資産税の増加を理由として、貸主が提示しやすい金額帯です。
判断材料として使われることが多いのが、政府が毎月公表している「消費者物価指数(CPI)」です。
消費者物価指数は、日常生活で購入する商品やサービスの価格変動を示す指標で、近年は年2~3%前後で推移しています。
この上昇率を家賃7万円の場合に当てはめると、以下のような計算になります。
家賃7万円×3%=約2,100円 |
このように家賃7万円の場合では、2,000円前後の値上げは、計算上は物価上昇分の範囲内と考えることができます。
ただし、消費者物価指数はあくまで全体的な経済指標であり、個別物件の家賃を自動的に正当化するものではありません。
貸主が「物価が上がっているから」と説明してきた場合でも、それだけで判断せず、次に解説する「周辺相場」との比較が不可欠です。
周辺相場との比較が最重要
家賃の値上げ額の妥当性を判断するうえで、重要なのが周辺相場との比較です。
たとえ物価が上昇していても、近隣の類似物件が今の家賃より安く募集されているなら、値上げに応じる合理的な理由は弱くなります。
まずは、LIFULL HOME’Sなどの不動産情報ポータルサイトを使い、以下の条件が近い物件を複数ピックアップしてみましょう。
・ 最寄り駅、駅までの距離
・ 築年数
・ 専有面積・間取り
・ 設備内容(エアコン、バス・トイレ別など)
値上げ後の家賃が、これらの条件を満たす周辺物件より明らかに高くなる場合(目安として数千円以上)は、交渉の余地が十分にあります。
一方で、周辺相場自体が上昇しており、値上げ後でも相場並み、もしくは割安であれば、受け入れを検討する判断も現実的です。
金額だけでなく「上昇率(%)」で判断しよう
値上げ額が妥当かどうかは、金額の大小だけでは判断できません。重要なのは、「現在の家賃に対して何%上がるのか」という視点です。
一般的に、消費者物価指数の上昇率や実務上の運用を踏まえると、家賃の1~3%程度の値上げは「相場の範囲内」として扱われることが多いとされています。
たとえば同じ「5,000円の値上げ」でも、現在の家賃によって、以下のように意味合いが異なります。
・ 家賃5万円の場合:5万5,000円となり、10%の値上げ(交渉余地が大きい)
・ 家賃15万円の場合:15万5,000円となり、約3.3%の値上げ(相場なりの可能性あり)
上昇率は「値上げ額÷現在の家賃×100」で簡単に計算可能です。まずはこの数字を出し、感覚ではなく数字ベースで判断することが大切です。
【金額別】よくある値上げ幅と入居者の反応
実際に値上げを提示された入居者がどのように対応しているのか、金額別に傾向を見ていきましょう。
1,000~2,000円(微増)
家賃5万~8万円台の物件では、上昇率が2~3%程度に収まるケースが多く、比較的受け入れられやすいラインです。
年間の負担増は1万2,000~2万4,000円になりますが、交渉にかかる時間や精神的負担を考慮すると「必要経費」と割り切る人も少なくありません。
3,000~5,000円(負担増)
家賃の値上げは、月々の支払いが増えるだけでなく、更新料(新家賃の1ヶ月分など)も増額します。そのためこの金額帯になると、トータルの負担感が大きく感じるようになります。
たとえば3,000円の値上げの場合、家賃の年間負担増3万6,000円に加え、更新料も3,000円増える計算です。
このレベルになると「少額だから仕方ない」と即決するのではなく、相場確認や条件交渉を検討する人が増える傾向にあります。
少額値上げを受け入れるか、交渉するかの判断基準

値上げの妥当性を確認した後は、実際に「受け入れるか、交渉するか」を決める必要があります。この判断を誤ると、無駄な出費を続けたり、逆に貸主との関係を悪化させたりする可能性があります。
ここからは、交渉を検討してもよいケースと受け入れた方が無難なケースを詳しく解説するので、参考にしてみてください。
交渉を検討してもよいケース
家賃値上げに対して、交渉を検討する余地があるのは、主に以下のようなケースです。
・ 値上げ後の家賃が、周辺相場より明らかに高くなる場合
・ 建物や設備に不満・老朽化があるのに、改善がされていない場合
・ 入居してから日が浅いにもかかわらず、値上げを求められた場合
周辺相場を調べた結果、値上げ後の家賃が同条件の物件より高くなる場合、交渉の正当性は高いといえます。
不動産情報ポータルサイトの募集情報など、客観的なデータを提示しながら「同程度の条件で、この家賃帯の物件が複数あります」と伝えることで、貸主が再考する可能性があります。
また、エアコンや給湯器などの設備が古く、日常生活に不便を感じている場合も交渉材料になるでしょう。
「家賃を上げるのであれば、設備面の改善もご検討いただけませんか」といった条件交渉に持ち込むことで、一方的な不利益を避けやすくなります。
さらに、入居から1~2年未満といった短期間で値上げを求められた場合、借主側に抵抗感が生まれるのは自然なことです。
「長く住む前提で契約したため、想定外の値上げでした」と率直に伝え、次回更新までは据え置きを求める交渉も現実的な選択肢です。
受け入れた方が無難なケース
一方で、状況によっては、値上げを受け入れた方が結果的に負担やリスクが小さいケースもあります。
・ 周辺相場全体が上昇しており、提示額が相場どおりの場合
・ 貸主や管理会社との関係が良好で、対応に満足している場合
・ 今後も長期間(5年以上など)住み続ける予定がある場合
エリア全体の家賃相場が上がっている場合、退去して新しい物件を探しても、結局は同等かそれ以上の家賃になることが少なくありません。
引越しには、敷金や礼金、仲介手数料、引越し代など、数十万円単位の初期費用がかかるため、少額の値上げを受け入れた方が経済的に合理的な場合も多いです。
また、「これまで修理対応が早かった」「相談に柔軟に応じてくれた」など、貸主との関係が良好であれば、その関係性自体が一種のメリットといえます。
無理に値上げを拒否した結果、今後の対応が事務的になったり、更新時の条件が厳しくなったりするリスクも考慮すべきでしょう。
長期的に住む予定がある場合は、家賃だけでなく住み続けやすさも含めて判断することが重要です。
少額の値上げで関係を悪化させるより、「今回は受け入れ、次回以降は据え置きを相談する」といった柔軟な姿勢が、結果的に安心につながることもあります。

【シミュレーション】交渉の手間と削減効果の比較
値上げ交渉には、時間と精神的なコストがかかります。
たとえば「月2,000円」の値上げを拒否するために、何度もやり取りをする時間や精神的ストレスが、その値上げ額と見合うかどうかを考えます。
交渉コストと削減額の比較として、以下を確認してみてください。
・ 削減できる金額:月2,000円×24ヶ月=4万8,000円(2年間)
・ 交渉にかかる時間:メールや電話のやり取り、資料作成などで5~10時間程度
・ 精神的ストレス:貸主との対立によるストレス、更新を断られる不安など
時給換算で考えると、10時間で4万8,000円なら時給4,800円の価値があります。ただし、精神的ストレスや関係悪化のリスクを金額に換算することは難しく、人によって判断は分かれるでしょう。
「月2,000円(2年で4万8,000円)を必要経費と割り切って、良好な関係と安心を買う」という考え方も、一つの合理的な判断です。
逆に「年間2万4,000円も余分に払うのは納得できない」と感じるなら、交渉することに価値が生まれます。
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少額値上げに対する「条件付き」交渉テクニック

値上げを完全に拒否するのではなく、「条件付きで受け入れる」という交渉スタイルも有効です。
この方法なら、貸主にとっても「家賃収入が増える」というメリットは残るため、合意に至りやすくなります。
値上げを受け入れる代わりに「設備交換」を頼む
「このまま値上げだけを受け入れるのは納得しにくい」と感じる場合は、設備交換を条件にする方法が効果的です。
たとえば、「2,000円の値上げについては理解しました。その代わり、古くなっているエアコンを交換していただくことは可能でしょうか」といった形で切り出します。
貸主側にとっても、家賃収入が増えることで設備交換の費用を回収しやすくなり、交換費用は経費に計上できるため、現実的な提案と受け取られやすいのがポイントです。
交渉対象として挙げやすい設備には、以下のようなものがあります。
・ エアコン(10年以上使用している場合)
・ 給湯器(故障リスクが高まっている場合)
・ 照明器具(LEDへの交換)
・ 温水洗浄便座(未設置の場合)
・ 網戸や鍵などの消耗部品
交渉の際は「古くて不便」ではなく、「冷えが悪く、夏場に効きが弱い」「作動音が大きく、故障が心配」など、具体的な不具合や生活への影響を伝えると、説得力が高まります。
次回の更新時まで「据え置き」を約束してもらう
もう一つ有効なのが、将来の値上げを防ぐ条件を付ける交渉です。
「今回は値上げを受け入れますが、その代わり、次回の更新時(2年後)までは家賃を据え置いていただけませんか」と提案することで、長期的な家賃上昇リスクを抑えられます。
この条件を付ける場合は、口約束ではなく書面で残すことが重要です。簡単な覚書で構いませんが、以下の内容は明記しておきましょう。
・ 今回の値上げ額と適用開始日
・ 次回更新時(〇年〇月)までは家賃を変更しないこと
・ 双方の署名・捺印、日付
貸主にとっても「今回は確実に増額できる」「2年間は退去リスクが下がる」などのメリットがあるため、合意に至りやすい条件といえます。
「間を取った金額」で着地させる
「3,000円は厳しいですが、1,000円なら応じられます」と、「間を取った金額」での着地を目指すのも現実的な交渉方法です。
貸主側も「ゼロ回答で更新拒否されるよりはマシ」と考え、少額でも増額できれば合意してくれるケースも多いでしょう。
この交渉方法は、特に以下のようなケースで効果的です。
・ 値上げ額が相場よりやや高いが、完全に不当とまではいえない場合
・ 関係性を維持しつつ、賃料増の負担も減らしたい場合
・ 交渉を長引かせたくない場合
交渉時には「周辺相場を調べたところ、この金額が妥当だと感じました」と、根拠を添えることで感情論になりにくくなります。

まとめ
1,000~5,000円の値上げは、相場や物価状況によっては妥当な場合もあります。
一概に拒否するのではなく「設備交換のチャンス」と捉えたり、長期的な関係性を重視したりと、柔軟に対応することをおすすめします。
納得できない場合は、まずは周辺の家賃相場を調べてから、どのような条件であれば据え置いてもらえるかを考え、交渉に臨むといいでしょう。
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