内閣府が出している2023年版「高齢社会白書」によると、65歳以上の高齢者のうち、一人暮らしをする人の割合は2020年時点で女性が22.1%・男性は15.0%に上ります。

加齢により身体能力や認知能力が低下している高齢者の一人暮らしは、ケガや事故によるリスクが高いうえに、犯罪のターゲットにされるケースも多く、注意が必要です。

ここでは、高齢者の一人暮らしにおける注意点と対策、安心して暮らすためにできることなどを解説します。

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高齢になるとケガや事故のリスクが高まりますが、一人暮らしの場合、周囲の人が気づきにくく発見が遅れやすいというリスクも加わります。

 

ここでは、高齢者に起きやすいアクシデントの種類と、一人暮らしの高齢者本人や周囲の人ができる対策を見ていきましょう。

 

高齢者は若い人に比べて転倒・転落のリスクが高く、自宅内にも危険が潜んでいます。消費者庁の資料によると、2021年に発生した65歳以上の不慮の事故で、もっとも死亡者数が多いのが「転倒・転落・墜落」です。

 

特に一人暮らしの場合、すぐに適切な処置を受けられず重篤な状態に陥るリスクもあるため、常日頃から家族や周囲の人が気遣うことも大切です。

 

本人ができる対策としては、カーペットや玄関マット、こたつなど、足が引っ掛かりやすいものに気をつけることです。

 

一般的なスリッパは廊下や階段で滑る原因となるため、できればかかとが入り、底に滑り止めがついたルームシューズを使用したほうがいいでしょう。

 

家族や周囲の人ができる対策としては、定期的に本人とコミュニケーションを取ることが挙げられます。身体機能が低下していないか、服用している薬にふらつきや眠気を催すものがないかなどを確認しておくと安心です。

 

根本的にリスクを減らすには、住宅内で転倒の原因となるような段差・滑りやすい箇所を把握して対策しましょう。危険な箇所が複数ある場合、バリアフリーリフォームを検討してもよいかもしれません。

 

消費者庁の資料によると、65歳以上の不慮の事故で「転倒・転落・墜落」の次に死亡者数が多いのが「窒息」です。中でも、食べ物を喉に詰まらせたことによる窒息が多くなっています。

 

食べ物の誤嚥(ごえん)による窒息を避けるため、お餅など喉に詰まりやすい食品はできるだけ細かく切り、上手に飲み込めるか心配であれば、かみ切りやすいよう柔らかく調理するようにしましょう。

 

「正しい姿勢で食べる」「よくかんで食べる」といった基本を守ることも窒息の予防に効果があります。

 

また、窒息を防ぐ対策として、小さいスプーンを使用して食べるなども効果的です。一度に口に入る食べ物の量が減るため、喉に詰まらせるリスクを減らすことにつながります。

 

健康な人でも気をつけなければならないのが、入浴中の事故です。

 

高齢になると血圧の調節機能が低下するため、浴室で急激な血圧変動が起こり、意識を失った結果、溺死してしまうケースが少なくありません。

 

とりわけ脱衣所と浴室の寒暖差が大きい冬場は血圧変動が起きやすく、「ヒートショック」を招く恐れがあるため、注意が必要です。

 

一人暮らしの高齢者が入浴中の事故を防ぐには、次のような点を意識しましょう。

  • 食後すぐや飲酒後の入浴は避ける(血圧が下がったり、意識がもうろうとしたりするため)
  • 眠気を誘発する可能性のある薬を服用した後の入浴は避ける
  • 事前に脱衣所と浴室をできるだけ暖めておく
  • お湯の温度は41℃以下に設定し、湯船に浸かる時間は10分以内にする(42℃以上のお湯で10分以上入浴すると、体温上昇による意識障がいが起きる危険性があるため)
  • 浴槽から出るときはゆっくりと立ち上がる(急な血流の変化が起き、意識を失うことがあるため)

家族や周囲の人は、入浴時は事故のリスクが高いことや上記の対策が効果的であることを、高齢者本人にしっかりと伝えておきましょう。

 

一人暮らしの高齢者は犯罪のターゲットにされることも多いため、万全の防犯対策を行い、本人だけでなく家族や周囲の人も防犯意識を高める必要があります。

 

近年、高齢者をターゲットにした特殊詐欺が社会問題化しています。

 

特殊詐欺とは、電話をかけるなど被害者と対面することなくコミュニケーションを取ったうえで信頼させ、指定口座に振り込ませるなどの方法によって不特定多数の人から金銭をだまし取る犯罪の総称です。

 

かつて大きな被害を出して有名になった「オレオレ詐欺」など、さまざまな手口があります。代表的な手口は以下のとおりです。

オレオレ詐欺

息子や孫を装った犯人から電話がかかってきて、トラブルがあったように見せかけて金銭を要求する詐欺。

預貯金詐欺

警察官や銀行協会職員などを装った犯人が、キャッシュカードの確認・取り替えが必要だとうそをつき、キャッシュカードや預貯金通帳、暗証番号を聞き出してだまし取る詐欺。

還付金詐欺

自治体や年金事務所の職員などを装った犯人が「税金の還付がある」「一部未払いの年金がある」などと持ちかけ、ATMを操作させて財産をだまし取る詐欺。

 

警察庁によると、2022年の特殊詐欺の認知件数(警察などが発生を認知した件数)は、全国で1万7,570件、合計被害額は370.8億円となっています。

 

認知件数は前年から21.2%上昇、被害額は31.5%の上昇となり、被害額は8年ぶりに前年比で増加に転じました。

 

高齢者を狙った特殊詐欺から身を守るには、まず高齢者自身が「自分は被害者にならないと過信しないこと」が重要です。発生は大都市圏が多いものの、日本全国どの都道府県でも何かしらの特殊詐欺が起きています。

 

誰でもターゲットになり得ることを認識し、理由にかかわらず金銭や重要書類・情報を要求されたときは一人で判断せず、信頼できる人や警察などに相談しましょう。

 

家族や周囲の人が一人暮らしの高齢者に注意喚起し続けることで、詐欺に巻き込まれるのを防げるかもしれません。

 

一人暮らしの高齢者は空き巣や強盗、窃盗のターゲットにもなりやすいため注意しましょう。

 

高齢者は力が弱い人が多いため、住人の不在時に侵入して金品などを盗む空き巣だけでなく、あえて在宅時を狙って盗みをはたらく「居空き(いあき)」に遭うリスクも高まります。

 

在宅時に鍵をかけない家が少なくないことや、「まさか在宅時に盗まないだろう」という気の緩みが生まれやすいことが要因になっているのかもしれません。

 

こうした心理を逆手にとった手口が居空きです。犯人は、「仮に見つかっても逃げ切れる。また、邪魔されないよう抑え込むこともできる」と考えるため、一人暮らしの高齢者は狙われやすいとされています。

 

また、高齢者に危害を加えて無理やり金品を盗む、強盗傷害事件のターゲットにされるリスクもあります。2019年に発生した高齢者を狙った事件のうち、1位の詐欺、2位の殺人に次いで3位が窃盗で、窃盗の被害割合は11.1%でした。

 

窃盗や強盗を防ぐには、防犯カメラの設置や防犯性能の高いドア鍵への交換、窓の防犯性強化などの対策が有効です。マンションや賃貸住宅に住んでいる場合は、管理人や大家さんへの事前確認・承認を取ってから対策しましょう。

 

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住宅内での不慮の事故や犯罪から身を守り、高齢者が安心して一人暮らしをするためには、どのような対策が考えられるのでしょうか。

 

犯罪に巻き込まれるのを防ぎ、事故・事件が発生しても早期発見してもらうには、普段から周囲の人と関わりを持つことが重要です。

 

普段から家族や近所の人と常に声をかけ合っていれば、不測の事態が発生したときにも助け合えるでしょう。

 

近所の人から、「あの人、いつもこの時間に挨拶してくれるのに、今日はいないな。おかしいな」と異変に気づき、アクションを起こしてもらえる可能性が高まります。また、心配事を気軽に相談できる人が近くにいると、一人で抱え込むことも少なくなるでしょう。

 

一人暮らしをするために別の土地に引越す場合は、地域の催しやコミュニティには積極的に参加しましょう。一人暮らしをする高齢者本人だけでなく家族も一緒に参加することで、地域になじみやすくなります。

 

サポートの一環として、各自治体でも一人暮らしの高齢者を対象にしたサービスを展開しています。

 

自治体ごとに細かな内容や名称は異なりますが、たとえば高齢者の相談を受け付ける地域包括支援センターの設置や、何か困ったことが発生したときに知らせられる緊急通報システムの提供などが挙げられます。

 

サービスの種類や受付条件については事前に確認し、一人暮らしをする高齢者本人と共有しておきましょう。

 

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周りの助けが必要になってから対策を考え始めると手遅れになるかもしれません。大切なのは、将来サポートが必要になったときを想定して、元気なうちから準備をしておくことです。

 

将来の準備の例として、以下のようなものが挙げられます。

  • 利用可能なサービスや施設の情報を調べておく
  • どのように生活していきたいか、家族や周囲の人間と話し合っておく
  • 地域活動へ積極的に参加して知り合いを増やす
  • 一人暮らしでも安心して住める家を探しておく

特に、どのように生活していきたいかについては、少しずつでもよいので周りの人と一緒に話し合っておくとよいでしょう。将来の選択肢を把握して共有しておけば、いざというときスムーズに対処できます。

 

高齢者の一人暮らしには、家のなかでの事故発生や犯罪に巻き込まれるリスクがあります。こうしたリスクを軽減し、一人暮らしの高齢者が安心して生活するには、今回紹介した注意点を本人が常日頃から意識することが重要です。

 

また、家族や周囲の人が高齢者の様子を見守り、何か異変があった際にはすぐ対処できるよう、継続的なコミュニケーションを心がけましょう。

 

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