近年、LGBTQ(性的少数者)(※)の人権を守るための取組みは少しずつ進んでいますが、同性カップルが賃貸物件を探すときには現実的にどういった難しさがあるのでしょうか。同性カップルが希望の部屋に入居する際のコツや、仲介会社とのやりとりをスムーズに進めるためのポイントなどを紹介します。
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※LGBTは、L=レズビアン(女性の同性愛者)、G=ゲイ(男性の同性愛者)、B=バイセクシュアル(両性愛者)、T=トランスジェンダー(身体の性別と心で自認する性別に違和感がある人)の頭文字をとったもので、性的少数者(セクシャルマイノリティー)の総称。さらに、LGBTのどれにも属さない人も含めて、性的少数者を総称する言葉として用いられるQ(クィア)を合わせ「LGBTQ」とも呼ばれる。

 

監修:株式会社IRIS

同性カップルの物件探し

 

物件探しにおいて、同性カップルが法律婚をした夫婦や異性カップルとは違った苦労をするケースは残念ながら存在するようです。

 

現在の日本の法律では、男性同士、または女性同士といった同性同士の結婚は認められていません。婚姻届を出し法律上の夫婦となることで、社会保障や税制面での優遇のほか、さまざまな場面において「家族」としての権利や社会的認知を得ることができます。事実婚(内縁関係)であっても、役所に届け出を出すことや客観的事実などによって一定の権利が認められますが、やはり法律婚をしている夫婦に比べると不利な面はあります。

 

こうした社会背景の中で、未婚の同性カップルよりも正式に結婚している夫婦のほうが「信頼性が高い」と考えるオーナーも現実にはいます。賃貸物件を借りる場合、家賃の保証会社や管理会社、大家さんなどによる審査が必要になります。この審査では「家賃をきちんと支払えるか」という点が大きなポイント。その際に収入がいくらあるかだけではなく、同居する相手との関係性なども関わってくることがあります。

 

一般的に、異性カップルでも、同性カップルでも、友人同士のルームシェアなどであっても、結婚している夫婦や兄弟などの「家族」に比べると審査においては不利だと考えられています。夫婦はお互いに協力し、扶助する義務があるため、万一、どちらかが家賃を支払えなくなったときは、パートナーが積極的に協力をすると考えられるからです。また、カップルや友人同士の同居の場合、突然ケンカなどを理由にどちらかが退去してしまい、家賃が支払えなくなる可能性なども不安視されているようです。

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物件選び

 

実際に同性カップルが部屋探しをする場合には、どのような苦労があるのでしょうか。LIFULL HOME’Sでは、2019年にLGBTや高齢者、生活困窮者、日本在住外国人など現在日本においてさまざまなバックグラウンドを理由に住まいの選択肢が限られている方々を中心に、住まい探しの実態についてアンケート調査を行いました。

 

その中で賃貸物件の内見や契約手続きをした際、「年齢」「国籍」「性別(セクシャリティ/ジェンダー)」「経済状況」「家族構成(ひとり親家庭)」などの理由で不便を感じたり、困ったりした経験はありましたかと尋ねたところ、「経験がある」と答えたのは一般の方では16.5%だったのに対し、LGBTの方は24.9%という結果でした。また、契約時などだけではなく、13.5%のLGBTの方が、不動産会社の店頭で性別(セクシャリティ/ジェンダー)を理由に「差別を受けた/不平等さを感じた」と回答しています。

 

性別(セクシャリティ/ジェンダー)を理由に不便を感じたり困ったりした経験の具体例としては、以下のようなコメントがありました。

  • セクシャリティのために、同棲ではなくルームシェアで探さなければいけないのが大変だった
  • パートナーと一緒に住むが、ルームシェアと言わざるを得なかった
  • ゲイのカップルが入居できる物件は人気のない古い物件しかなく、大手が運営している賃貸は会社の規定で入居を認められない物件ばかりだった

同性カップルであることを不動産会社には伝えず、「友人同士のルームシェア」として部屋探しをする場合も少なくないようです。しかし、本来は「同棲」と「ルームシェア」では、生活スタイルが異なり、適した間取りも変わってくるので、希望とマッチする部屋が探しにくくなることがあります。また、同性カップルであることを理由に、物件の選択肢が限られてきてしまうのは大きな問題です。

 

出典:「LIFULL HOME’S「住まい探し」の実態調査

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入居するためのポイント

 

先のアンケートの回答にあったように、同性カップルが部屋を借りる場合には、「友人同士のルームシェア」として部屋探しや申し込みを行うケースがあります。しかし、その場合「本当は2人の関係性や収入の面から考えると1LDKがいいが、ルームシェアを装うために、2LDK以上が希望と伝えなければいけない」といった不都合が出てきます。そうすると結果的に賃料が上がったり、もともと住みたいと思っていたエリアから外れたり、希望の条件を諦め、妥協せざるをえなくなることも。

 

そうした点を踏まえると、可能であれば不動産会社の担当者には同性カップルであることを説明しておくほうが理想に合った部屋を探しやすいといえるでしょう。入居審査や管理会社や大家さんとのやりとりにおいても、間に立って説明してもらうほうがスムーズに進むケースがあります。もちろん、プライベートなことなので、話しにくいという人は多く、難しい問題ではありますが、最近では「LGBTQフレンドリー」を掲げる不動産会社もあるので、そうしたところも頼りつつ、話しやすく信頼できる会社・担当者を探してみることも一つの方法です。

 

また、保証人の問題などもあります。部屋を借りる際に連帯保証人を立てることを求められることがありますが、同性パートナーがいることを家族に言えず、保証人を立てるのが難しいというケースは少なくありません。家族に協力を求められない場合は、連帯保証人が不要な保証会社が利用できる物件を選ぶようにしましょう。また、緊急連絡先や勤務先などにも注意が必要です。伝えられたくない事項がある場合、相手がいる場合は、事前に不動産会社の担当者に相談しておくことで、職場や家族に同性パートナーの存在を知られてしまうといった問題を回避できることがあります。

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同性カップルの物件探し

 

同性カップルが部屋を探す場合は、探しやすいエリアを選択することや、協力的な不動産会社を見つけることも、重要なポイントとなります。

 

たとえば東京都渋谷区は2015年施行の「渋谷区男女平等および多様性を尊重する社会を尊重する条例」に基づき、性的少数者の人権の尊重を推進。同性同士のカップルを社会生活におけるパートナーとして承認し、その関係を証明する「パートナーシップ証明書」を発行しています。こうした取組みは都市部を中心に全国に広がっており、2020年11月時点で60以上の自治体で導入されています。法律上の婚姻関係とは異なりますが、パートナーとしての関係を証明することで、大家さんや管理会社の印象が変わり、部屋選びにおいても有利にはたらく場合もあるようです。

 

さらに、パートナーシップ制度を導入している自治体では、証明書を取得することで、同性カップルとして公営住宅の申し込み受け入れを実施しているところもあります。こうした点から、パートナーシップ制度を導入しているかどうかは、同性カップルが部屋を探しやすいエリアを探すうえでの一つの指標となるでしょう。

 

不動産会社の中にもLGBTQに対して偏見を持たず、積極的にサポートすることを掲げた「LGBTQフレンドリー」な不動産会社も増えてきています。LIFULL HOME’Sにも国籍、年齢、性別などさまざまなバックグラウンドを持つ人たちと、相談に応じてくれる不動産会社をつなぐサービス「FRIENDLY DOOR」があり、その中では全国の「LGBTQフレンドリー」な不動産会社を探すことができます。

 

LGBTQフレンドリーな不動産会社を探す

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物件探し

 

同性カップルの部屋探しには悩みや苦労が伴うこともあります。しかし最近ではLGBTQをはじめさまざまな事情を抱えた人の相談に応じてくれる窓口が少しずつ広がっています。ぜひ幅広く情報を集め、希望する部屋探しに役立ててください。

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