家賃の1〜3ヶ月分が必要となる敷金は、退去時にどれくらい戻ってくるのでしょうか。汚れや損傷があった場合に、貸主と借主、どちらが費用負担するべきかトラブルとなることも多いです。

国土交通省で原状回復についてガイドラインを定めているので、敷金についてきちんと理解して、契約時に確認して損をしないようにしましょう。

敷金をめぐるトラブルは多い…

 

敷金は、借主が部屋を汚したり、損傷させたりしたときに修繕費用として充てるために、貸主が事前に預かるお金です。賃貸物件の多くは契約時に敷金の支払いが必要です。敷金を預かっておくことで、家賃の滞納リスクの担保にもなります。

 

民法では敷金について、「賃料その他の賃貸借契約上の様々な債務を担保する目的で賃借人が貸借人に対して交付する停止条件付きの返済債務を伴う金銭」と定められています。

 

敷金は担保として預かるお金のため、家賃の滞納もなく、原状回復した状態で返還すれば全額戻ってくるというのが基本的な考え方です。

 

しかし、実際には全額戻ってくることは、ほとんどないのが現状です。敷金の返還に関する法的な縛りはないので、貸主がクロスやフローリングの張り替えが必要になったなどを理由に、敷金が全額返還されないという事例も少なくありません。

 

費用負担の基準があいまいなため、退去時に敷金の返還によるトラブルが多いことから、国土交通省は「原状回復の費用負担のあり方」についての一般的な基準をまとめた「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」を1998年に公表し、その後も改訂を重ねています。

 

借主は敷金や原状回復についての正しい知識を身につけておくことで、トラブルなく敷金の精算ができる可能性が高くなるでしょう。

冷静に、ガイドラインを確認しましょう

 

敷金がいくら戻ってくるのか、契約書類で明記していない限り、退去時まで定かではありません。退去時に部屋の汚れや損傷を修繕する必要が出てくることもあります。

 

修繕の費用を貸主と借主どちらが負担するのかで、もしトラブルになったときには、国土交通省が出している最新の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」を参考にしましょう。

現状回復には範囲があります

 

敷金をスムーズに多く返還してもらうためにも、まずは原状回復の意味を理解しておきましょう。

 

ガイドラインでは、「賃借人の居住、使用により発生した建物価値の減少のうち、賃借人の故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用を超えるような使用による損耗・毀損を復旧すること」と定義されています。

 

つまり、借主の故意や過失など通常の生活をしていては起こりえないような損耗・毀損は借主が負担とするということです。

 

原状回復という言葉を誤解し、借りたときの状態に完全に戻すことと思っている人がいますが、通常の暮らしをしていれば壁が汚れたり、キッチンが劣化していったりすることは当たり前です。

 

こうした経年変化や一般的に当たり前と考えられる損耗は家賃に含まれているものとして、原状回復の費用にはあたりません。

必要以上に費用負担させられないように…

 

次に、敷金を返還してもらう上で知っておくべき言葉があります。「経過年数」と「施行単位」です。前項の通り、建物や設備は年々劣化していくことは当然のこと。ガイドラインでは、クロスの価値は6年で1円になるとされています。

 

仮に、6年以上住んだ家を退去するときに、クロスの張り替えが必要になったとしても、クロスの価値は減少しているので、負担割合を減らすことができます。過失による修繕であっても、その時点のクロスの価値に相当する分だけが借主の負担となるのです。

 

また、施行単位も理解しておくと良いでしょう。一部の壁を汚してしまいクロスの修繕となったときに、ガイドラインでは負担分を「平方メートル単位」としています。全面張り替えを貸主が希望したとしてもすべてを負担する必要はないということです。

 

しかし、話し合い次第で、一部だけでは貸主も納得しない場合、一面だけの費用負担で決着した事例もあります。

 

※出典:「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」について 国土交通省

契約書は慎重に確認を

 

それでは、敷金はいくら戻ってくるのでしょうか。借りた部屋を大切に使用する善管注意義務を果たしたとしても、全額戻ってくるケースは少ないでしょう。

 

現状ではまだ慣習としてハウスクリーニング費用を請求する貸主が多いためです。ハウスクリーニング費用は、広さや依頼する会社にもよりますが、敷金の一部が充てられます。

 

ただし、ハウスクリーニング費用は、通常の使用による損耗なので、本来借主負担にしていることが多いようです。そのため物件の契約時に特約として契約書に記載して、借主負担としています。

 

国交省が公表しているガイドラインは、あくまで参考なので内容に沿わなくても違反とはなりません。そのため、一番大切なのは契約時に何を明記するかです。契約書にハウスクリーニング費用負担について明記されていれば、退去時にガイドラインでは違うといっても、契約書が優先されます。

 

つまり、ガイドラインを活用すべきなのは契約締結時です。入居時に細かいチェックリストを用意して、クロスやフローリング、キッチンなどそれぞれの損耗について両者立ち会いのもと確認しておくことが重要です。

 

気になるところがあれば写真に撮りましょう。最終的には敷金の返還は貸主の判断となりますが、できるだけ契約時に細部まで話をしておくことで、トラブルなく、スムーズに敷金精算ができる可能性も高まります。

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