近年、古民家の価値が見直されつつあります。古民家をリノベーションをして住まいにしたり、カフェに再生して注目を集める事例も増えてきました。

今回取材したのは、葉山の真名瀬漁港(しんなせぎょこう)の目の前にある『港の灯り』という宿。旅好きの仲間たちが集まって、「旅をする人と地元の人の交流の場をつくりたい」という思いからはじまった、宿のセルフリノベーション事例です。
クラウドファンディングで資金を調達し、築100年の元漁師の家を再生した1日1組限定の一棟貸し宿の代表に、インタビューをしてきました。
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御用邸があり、別荘地のイメージが強い葉山。街には著名人の別荘も点在していますが、庶民的な通りも多くあり、最近はおしゃれなカフェなどができて開放的な雰囲気になってきました。
海に近い街ならではの、どこかのんびりとした時間が流れていて、葉山暮らしに憧れる人は多いのではないでしょうか。

 

『港の灯り』の目の前は海。波が高くないので、SUPに向いているそうです

『港の灯り』の目の前は海。波が高くないので、SUPに向いているそうです

 

「神奈川県出身の旅好きの仲間たちで、日本の良いところを発信する場所でありつつ、旅人と地元の人が交流する場になるような宿をつくりたいと話していました。縁あって、築100年の元漁師の家を宿にするチャンスがきて、クラウドファンディングで資金を集めました」と、代表の恵 武志さん。

 

クラウドファンディング「CAMPFIRE」で資金集めに挑戦し、目標金額を達成した恵さんは、「漁師の家の再生」をテーマに、あるものを生かすセルフリノベーションで『港の灯り』をつくっていきました。

 

「新しいものだけが良いのではなく、古いものにも価値があると思うから、それらを残していきたいと思っています。たとえば、築100年の家から出てきたものに、湘南らしい新しいデザインを施して新旧融合したものは、とても魅力的だと思います」。

 

お話を聞いた『港の灯り』代表の恵武志さん

お話を聞いた『港の灯り』代表の恵武志さん

リビングルームの上にある屋根裏部屋は、本棚のある秘密の書斎のような部屋。この部屋の窓は、元からあった土壁を剥がして穴を開けて、無双窓(むそうまど)をつくっています。
無双窓とは、内側と外側に連子の引き戸を入れた窓の種類の一種で、閉じると1枚の窓のようにみえるもの。
無双窓から漏れるリビングルームの灯りが、空間に温かさを加えていて、読書に浸るにはぴったりの広さと明るさです。

 

リビングルームの上にある書斎。セルフリノベーションで作られた無双窓(写真右)から漏れる音と灯りが心地いい

リビングルームの上にある書斎。セルフリノベーションで作られた無双窓(写真右)から漏れる音と灯りが心地いい

 

閉めた状態の無双窓

閉めた状態の無双窓

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「シーグラス」とは、海に落ちているガラスの破片のこと。ガラスは波に削られるたびに次第に丸みを帯び、透明な小石のようになっていきます。

 

『港の灯り』の書斎は、このシーグラスをつかって、窓ガラスの割れている部分を補強していました。窓ガラスごと新品に変更する選択もありますが、古い空間に一つ新しいものが入ると、空間全体に違和感が出てきます。そこで、目の前の海でシーグラスを拾って、古い窓ガラスを再生させていました。自然素材を使いつつ、コストダウンもできる良いアイディアです。

 

「シーグラス」をつかって再生した書斎の窓ガラス

「シーグラス」をつかって再生した書斎の窓ガラス

畳を剥がして基礎を補強し、その上に床材を貼っています。床は、昔から日本家屋で使われてきた「柿渋塗料」をDIYで塗装。柿渋は自然由来の塗料で、防虫・防腐効果があり、シックハウス症候群の対策として注目されています。
この色を出すには、何度も重ね塗りが必要で大変だったそうですが、これから多くの人に踏まれて、良い飴色になっていきそうです。

 

自然素材の「柿渋塗装」をしたリビングルームの床。何度も重ね塗りをして、この渋い色合いになりました

自然素材の「柿渋塗装」をしたリビングルームの床。何度も重ね塗りをして、この渋い色合いになりました

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築100年の古民家のお風呂は、バランス釜が置いてあった跡がくっきり残っていたそうです。
壁のカビを落として掃除をしてから、壁にヒノキを貼り、水はねの気になる部分はタイルをDIYで貼っていました。バスタブはそのまま生かしています。

 

壁にヒノキとタイルをDIYで貼ったバスルーム

壁にヒノキとタイルをDIYで貼ったバスルーム

庭の置石は、敷地から出てきた石を並べています。
新品の足場板の表面を焼いて、使い込まれた雰囲気にした木を並べて、庭を歩きやすくしています。この板は、電車の枕木をイメージしたそうです。

 

電車の枕木をイメージした足場板。表面を焼いて雰囲気を出しています

電車の枕木をイメージした足場板。表面を焼いて雰囲気を出しています

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「『港の灯り』の建物には、真名瀬漁港の前にある漁師の家だったというストーリーがあります。そのストーリーを受け継いで宿をやろうと思いました。ストーリーがあるのは古いものだけだし、僕たちはそれを残していきたいと思っています。たとえば、敷地の掃除をしているときに出てきた錨やオールは、宿の象徴として柵やオブジェとしてつかっています」。

 

敷地内から出てきた船の錨。今は、きれいに掃除されてオブジェとして置かれています

敷地内から出てきた船の錨。今は、きれいに掃除されてオブジェとして置かれています

 

『港の灯り』という名前には、海から見て灯台のように光が灯り続ける「ホッとする場所になって欲しい」という意味が込められているそうです。

 

日本の良いものを発信する場所に、古民家+セルフリノベーションを選んだ恵さんと仲間たち。これから、『港の灯り』を舞台に、宿泊者たちとの新しいストーリーがはじまっていきます。

 

ぐるりと縁側に囲まれた和室。障子を通して、静かに人の気配が感じられる広い空間です

ぐるりと縁側に囲まれた和室。障子を通して、静かに人の気配が感じられる広い空間です

 

『港の灯り』
住所:神奈川県葉山町堀内字森戸1067
電話番号:046-874-9245
HP:https://www.facebook.com/minatonoakari/
宿泊予約は電話またはメールにて

 

『ANCHORS CAFE』
営業時間:11~16時
定休日:不定休
『港の灯り』に併設するカフェ。宿泊者以外も利用可能

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更新日: / 公開日:2016.12.12