東京23区の賃貸市場における変化—賃料上昇を受けて消費者ニーズはどう変化しているのか?
LIFULL HOME'Sマーケットレポートによると、2025年1月にLIFULL HOME'Sに掲載された東京23区の賃貸物件(以下、掲載物件)の平均賃料は、シングル向きが10.6万円で前年同月比+11.5%、ファミリー向きが22.3万円で前年同月比+13.1%と、いずれも上昇傾向が続いている。そうしたなかで住み替えようとしたときには「予算を上げて同水準の物件に住む」「予算はそのままに物件の水準を下げる」といった選択を迫られることになるが、実際に消費者はどのような選択をしているのだろうか。
本稿では、LIFULL HOME'Sにおける掲載物件の賃料と専有面積、および消費者がLIFULL HOME'Sを介して不動産会社に問合せた物件(以下、問合せ物件)の賃料と専有面積を調査し、家賃相場の上昇局面における消費者の住み替えニーズの変化について考察する。
<ファミリー向き>掲載物件と問合せ物件の面積ギャップ1位は渋谷区
2024年、東京23区のファミリー向き賃貸物件において、掲載物件の平均専有面積(以下、掲載面積)と問合せ物件の平均専有面積(以下、問合せ面積)のギャップが最も大きかった区は「渋谷区」となった。渋谷区は掲載面積よりも問合せ面積が6.21m2(8.3%)狭かった。ギャップは2022年には4.81m2、2023年には5.07m2、2024年には6.21m2とここ3年では拡大している。以降、ギャップ幅が大きい順に、港区(5.75㎡狭い)、中央区(5.69㎡狭い)と続く。
<シングル向き>掲載物件と問合せ物件の面積ギャップ1位は中央区
シングル向き賃貸物件において、掲載面積と問合せ面積のギャップが最も大きかった区は「中央区」だ。中央区では、掲載面積よりも問合せ面積が4.97m2(14%)狭いという結果になった。2021年には掲載面積と問合せ面積がほぼ同程度だったが、その後掲載面積は拡大しているにもかかわらず、問合せ面積は若干の縮小が見られ、2024年には掲載面積を4.97m2下回っている。以降、面積ギャップが大きい順に、港区(4.87m2狭い)、新宿区(3.56m2狭い)と続く。
「面積水準を下げる」ことで予算内に収めている?
本調査では東京23区における掲載面積と問合せ面積のギャップをランキングにしているが、上位には比較的賃料水準の高いエリアが並んだ。これらのエリアでは面積の広い高級物件が掲載物件の平均面積を引き上げている可能性もある。
しかし、今回最も注目したいのは、直近3年のギャップの推移と賃料の変化だ。東京23区のファミリー向き物件では、2021年には問合せ賃料は16.0万円だったが、2024年には17.0万円へと3年で6.3%上昇、一方で問合せ面積は59.95m2から58.18m2へと2.9%縮小しており、3年間で「予算を上げて、面積を狭く」する傾向が強まっていると思われる。
なお、同期間の東京23区ファミリー向き物件の掲載賃料は16.5万円から21.1万円(27.9%上昇)へと、問合せ賃料の上昇幅(6.3%上昇)を大きく超えて上昇しており、消費者は「予算を上げている」とはいえ、市場賃料の上昇ペースには明らかに追随できていない。消費者にとって「面積水準を下げる」ことが、住居費を予算内に収める手段になっているものと推察される。
他方、今年の春闘では賃上げ率が5.46%(第1回回答集計)で2年連続5%台となるなど、継続的に高水準の賃上げが実現しており、所得増が一過性のものではなく将来にわたって続くものと認識されることで、消費の増加につながる可能性がある。2024年の家計収支おいても「家賃地代」は前年比で実質増加となっているが、こうした状況が続けば、現在の「面積水準を下げる」という消費トレンドにも変化が表れる可能性があるだろう。
調査概要
調査対象:LIFULL HOME'Sに掲載された以下の東京23区内の賃貸物件(マンション、アパート)
期間:2021年2月~2024年12月
シングル向き :ワンルーム、1K、1DK、1LDK、2K
ファミリー向き:2DK、2LDK、3K、3DK、3LDK~
公開日:
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