上昇が続く都心不動産価格

現在、東京都心を中心に不動産価格が上昇を続けている。2023年11月末日に公表された国土交通省の「不動産価格指数(令和5年8月・令和5年第2四半期分)」を見ても、2010年以降、不動産価格は右肩上がりに推移しており、特にマンションの価格が高騰していることがわかる。

不動産価格は日経平均株価と相関性があるとされており、2012年に発足した第二次安倍内閣でのアベノミクスの効果により、日経平均株価の上昇を追いかけるように不動産価格も上昇してきた。新型コロナウイルスの感染拡大により、日経平均株価と不動産価格は一時的に大きく暴落したが、金融緩和や財政出動の効果で再び上昇。
2023年11月20日には日経平均株価が一時、1990年3月以来33年8ヶ月ぶりの高値となる3万3,853円に達し、バブル経済崩壊後の高値を上回った 一方、不動産価格は、不動産経済研究所によると、2023年4~9月の東京23区の新築マンション平均価格が1990年度以降で初めて1億円を突破した。

不動産価格指数(住宅)(令和5年8月分・季節調整値) ※2010年平均=100  (出典:国土交通省)不動産価格指数(住宅)(令和5年8月分・季節調整値) ※2010年平均=100 (出典:国土交通省)

マイホームは一生に一度の買い物ではなくなりつつある中、“資産形成に適した街”はどこなのか?

LIFULL HOME'S 住み替え経験のある500人に聞いた「住み替えに関する意識調査」LIFULL HOME'S 住み替え経験のある500人に聞いた「住み替えに関する意識調査」

不動産価格が上昇しているということは、購入価格が高くなるのはもちろん、売却価格も高くなりやすい。最近の売却事情はどのようになっているのだろうか。
当社の過去調査(※1)では、住み替えを行った人が売却した物件の築年数は「築10年以上20年未満」(29.4%)が最も多く、次いで「築3年以上10年未満」(21.8%)となった。かつては、「マイホームは一生に一度の買い物」などと言われていたが、ライフステージや社会状況の変化によって柔軟に判断し、自宅の売却・新居の購入を行う人も増えていると考えられる。
今後も住み替えをしたいと考える人なら、「なるべく値下がりしない場所に家を買いたい」と思うのではないだろうか。そこで、資産価値が高いと言われる東京23区の「10年前の新築マンション」と「現在の築10年中古マンション」の平均価格をLIFULL HOME'Sで掲載された物件データを基に算出し、その増減率でランキングを作成した。

※1:https://lifull.com/news/27784/

行政区篇: 23区すべてで上昇。中でも都心から南西エリアがより上昇率の高い結果に

<東京23区平均>
【10年前新築マンション60m2価格】4,558万円
【築10年中古マンション60m2価格】6,794万円
【価格変動率】146.8%


本来、築年数が経過すると共に物件価格も落ちるもの。しかしながら、直近10年はマンション価格の上昇が続いていたために23区すべてが価格変動率100%を超え、23区平均では146.8%となった。つまり、購入価格より売却価格のほうが高くなったということだ。
一方で、1位の「目黒区」は倍以上の221.2%、最下位(23位)の「大田区」は102.1%となり、区によって上昇率には差異が見られた。「目黒区」「品川区」といった城南エリア、「千代田区」「港区」「渋谷区」「新宿区」「文京区」「豊島区」といった交通利便性の高い都心およびその周辺ほど価格の上昇率が高い。コロナ禍でテレワークが定着し、都心の価値が相対的に薄まった感があるがコロナ前と比較してもその優位性が依然高いことが分かる。

【東京23区:行政区篇】10年前の新築マンション価格変動率ランキング【東京23区:行政区篇】10年前の新築マンション価格変動率ランキング
【東京23区:行政区篇】10年前の新築マンション価格変動率ランキング【東京23区:行政区篇】10年前の新築マンション価格変動率ランキング

<番外篇>東京都下:「多摩市」「武蔵野市」は130%超え。「国分寺市」は唯一下落


東京都下においても、調査対象5市のうち「国分寺市」を除く4市で100%超えとなった。中でも「多摩市」は139.3%となり、23区の「北区」や「中央区」を上回る価格変動率となった。もともと分譲時の価格が都心よりも安価であることが主な要因だが、コロナ禍によるリモートワークの定着や都心の物件価格高騰による都下人気もうかがえる。

【東京23区:行政区篇】10年前の新築マンション価格変動率ランキング【番外篇:東京都下】10年前の新築マンション価格変動率ランキング

駅篇:1位は「目黒」。2位・3位の「根津」「中目黒」は中古でも億ションに

続いて駅ごとで集計しランキング化したところ、1位は「目黒」、2位以降は「根津」「中目黒」が続いた。TOP10内に60m2築10年中古マンション平均価格が1億円を超える駅が4駅入り、駅別ランキングにおいても都心価値の優位性が浮き彫りとなった。
駅単位でも都心・副都心・城南エリアが上位を埋め尽くす中、唯一城北エリアの「田端」が9位にランクイン。「田端」も都心の利便性が享受できるエリアで、もともとマンションが多くないエリアでもあることから、利便性に基づく人気の高まりが価格および資産性を大きく引き上げている。
また、もともとの人気の高さに加え、2023年3月に開業した新横浜線によってより交通利便性の上がった東急東横線/目黒線の駅も3駅(「目黒」「中目黒」「都立大学」)がTOP10圏内に入った。

【東京23区:駅篇】10年前の新築マンション価格変動率ランキング【東京23区:駅篇】10年前の新築マンション価格変動率ランキング
【東京23区:駅篇】10年前の新築マンション価格変動率ランキング【東京23区:駅篇】10年前の新築マンション価格変動率ランキング

LIFULL HOME'S総研チーフアナリスト 中山登志朗 考察

LIFULL HOME'S総研チーフアナリスト 中山登志朗氏LIFULL HOME'S総研チーフアナリスト 中山登志朗氏

今回東京都においてLIFULL HOME’Sに掲載された分譲マンションを対象として、10年前に新築分譲された物件が現在中古として市場流通する際、どのくらいの価格水準になっているのか、データを分析した。
その結果、東京都内では10年前に分譲された新築マンションは、その後の市況の変化(住宅ローン金利の更なる低下や円安による資材価格の上昇、断熱性の高い新築住宅の供給など)によって中古流通時の価格が上昇し続け、ほとんどの地域で新築当時の価格を上回る水準で流通していることが分かった。
もともと、東京都内の物件は事業集積地に近く広域(都心か郊外か)・狭域(駅近か否か)両面での交通利便性に優れ、この10年間で大規模タワーマンションの供給(総戸数500戸超)もコンスタントに継続したため、住宅ローンの超低金利を追い風としてマンション需要が拡大した。それに応じて価格も上昇し続けたことで、中古市場において“売りやすい”とされる築10年前後のマンションの価格も連動して上昇し続けたことが主な要因である。
東京23区で10年前から2.21倍と最も価格上昇率が大きかった目黒区は城南に位置し、上記の通り交通利便性と生活利便性が確保された準都心エリアである。2位以下の上位も8位の豊島区を除き、いずれも都心および城南・城西に位置する行政区ばかりで、その利便性が高く評価された結果と言える。豊島区も城北で最も都心に近い利便性があり、住宅地としても人気が高まっている。
対照的に下位は、城北・城東に位置する行政区が中心となるため、やはり長期保有を前提として資産形成を検討する場合には、東京都内では都心から南西方面にかけてのエリアがより有利であることが明らかになった。ただし、この10年間では23位の大田区でも102.1%、60平米換算価格で約100万円の価格上昇を記録しており、資産形成という意味では都内どこで購入しても成功であったと言える。ちなみに東京23区平均の価格変動率は146.8%で、10年間で約1.5倍に価格が上昇している計算になる。
また、より詳細に駅別で価格上昇率を確認しても行政区別の傾向と同じで、都心から城南・城西にかけての駅名が上位にランキングしている。9位にランクされた「田端」は北区に所在しているが、南側で文京区に隣接していて位置としては準都心エリアである。その割に10年前の新築分譲価格が60平米換算価格で3,830万円と4,000万円に満たない金額で分譲されていた、つまりそれだけ10年前の分譲価格が“お得”だったという見方ができる。

調査概要
<新築マンション価格>
集計対象:2011年~2013年に分譲された当時の新築マンション
集計地域:東京23区
除外条件:登録件数10件以内、専有面積30m2未満、価格3億円以上
<中古マンション価格>
集計条件:2021年~2023年(1~10月)に流通した”築10年”の中古マンション
集計地域:東京23区
除外条件:登録件数10件以内、専有面積30m2未満、価格3億円以上

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