テレワークの普及で地方移住が進む?
内閣府「第2回 新型コロナウイルス感染症の影響下における生活意識・行動の変化に関する調査」によれば、2020年12月の東京都23区のテレワーク実施率は42.8%。昨年、緊急事態宣言が発出された後の5月の実施率48.4%と比較して減少してしまってはいるものの、全国の21.5%や地方圏の14.0%と比較すると東京のテレワーク実施率は高いといえる。
テレワークをするにあたり、気になるのが自宅での仕事環境の快適さだ。広い部屋に引越しをしたい、恒常的にテレワークが許可されるなら勤務先から遠くても許容できるかもしれない…と、住まい選びの条件や選択肢に変化があった人もいるのではないだろうか。
コロナ禍におけるテレワークの普及で、注目を集める地方移住。地方自治体では、テレワークを前提としたお試し移住のPRに力を入れているところも少なくない。認定NPO法人ふるさと回帰支援センターが2021年3月5日に発表した「2020年移住希望地域ランキング」から、最新の移住希望の動向を見ていこう。
コロナ禍で相談・問合せ数は減少。オンラインセミナー開催への移行が顕著に
ふるさと回帰支援センターへの相談・問合せ数は、2018年4万1,518件、2019年4万9,401件と増加傾向にあったが、2020年は新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受け3万8,320件(前年比約22%減少)となった。緊急事態宣言の発出による、ふるさと回帰支援センターの一時休館、新型コロナウイルスの影響による移住相談会・セミナーなどの開催中止が減少の要因となった。
移住相談会・セミナーなどの開催数も同様に前年の545回から36%減少し349回にとどまったほか、参加者数も前年の3万4,613人から約43%減少し1万9,893人となった。緊急事態宣言が解除された6月以降は、イベントの約86%がオンラインセミナーと対面型を併用したオンライン・ハイブリッド型となり、急激にオンラインでの開催に移行が進んだようだ。
「移住希望地ランキング2020」1位は静岡県、2位山梨県、3位長野県
気になる移住希望地ランキングを見ていこう。2020年は、前述したオンライン形式でのセミナー開催が増えたことを受け、「窓口相談」「セミナー参加者」と、それぞれで算出されている。
「窓口相談」での移住希望地ランキング1位は、20歳代以下~60歳代までの幅広い世代から支持を集めた静岡県となった。2位は40歳代~60歳代の人が移住希望地2位と高く支持している山梨県、3位は長野県となった。3位以下を見ていくと、宮城県が5位と、昨年の17位から大幅に上昇。9位の神奈川県は、昨年は20位以下だったが大きくランクアップし、群馬県は15位から10位に上昇。茨城県も昨年の20位以下から12位と同様に順位を上げている。この神奈川県や群馬県・茨城県の順位上昇については、「引越しに近い感覚での移住希望が増え、東京の郊外の概念がさらに拡張していったものと考えられる」(認定NPO法人ふるさと回帰支援センター プレスリリースより)とのことだ。これまでの職住近接の、勤務地から〇〇分以内という立地重視の住まい選びに変化の兆しがあるのかもしれない。
「セミナー参加者」の移住希望地ランキングは、和歌山県が1位、2位は広島県、3位は佐賀県という結果となった。移住や仕事だけでなくさまざまなテーマでのイベントを開催し、参加者を増やしたことが要因としてあるようだ。なお、1位の和歌山県は移住・定住ポータルサイト「WAKAYAMA LIFE」で移住者の起業事例を多く紹介している。
東京圏在住者で地方移住に関心がある人は31.5%
前述した内閣府「第2回 新型コロナウイルス感染症の影響下における生活意識・行動の変化に関する調査」によれば、東京圏在住で地方移住に関心がある人の地方移住への関心理由は、多い順に「人口密度が低く自然豊かな環境に魅力を感じたため」が28.8%、「テレワークによって地方でも同様に働けると感じたため」24.1%、「ライフスタイルを都市部での仕事重視から、地方での生活重視に変えたいため」17.9%であった。
東京圏在住者の地方移住への関心については、2020年12月時点で「強い関心がある」4.2%、「関心がある」8.1%、「やや関心がある」19.2%。これらを合算すると移住に関心がある人は31.5%となるが、やはり地方移住にあたっての懸念として「仕事や収入」が46.2%と最も多く挙がっている。
「テレワークによって地方でも同様に働ける」人が増えることで、仕事や収入の懸念が払拭され、移住へのステップを進められる人が増えていきそうではあるが、これは企業の今後のテレワークの方針次第といえそうだ。新型コロナウイルスの影響により、生活や働き方に変化が生まれ1年以上が経過したが、今後、地方移住は増えていくのだろうか。今後も動向を見守りたい。
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